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工場管理 連載「失策学・実践編 エラーと不正を防止する組織づくり」

2026.10.27

第3回 セグリゲーションはどのような現場で活躍しているのか② 事例:ブックオフの従業員による架空買取事件

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米国公認会計士/公認内部監査人 打田昌行

うちだ まさゆき 日立製作所傘下の監査支援部門に所属し、国内に加え海外30ケ国以上で内部統制を構築する仕事に12年間従事。 対象企業は100社以上に及ぶ。現職では制度導入の社内研修企画やコンプライアンス教育を実施。著書:『 令和時代の内部統制とリスクコントロール』翔泳社他

会社をより良くデザインする

 いかに注意を払おうが、ヒューマンエラーは起きる。疲労、睡眠不足、緊張感など人の誤りを誘う要因はいくらでもある。人間工学の専門家は、ヒューマンエラーをゼロにすることは絶対不可能と断言する。さらに守るべきルールと知りながら、それを破る不正行為すら起きる。こうした事態に備えるのが、セグリゲーションである。業務を分担させ、ヒューマンエラーだけでなく、不正防止のために複数人で互いにけん制を働かせる、あえて単独人で仕事を完結させない、これがセグリゲーションで、組織をより良くデザインするガバナンスの隠し味の1 つである。そして、このセグリゲーションが正しく働くためには、大切な条件があることも忘れてはいけない。

循環型社会を先取したビジネスの綻び

 2024 年10 月、書籍やアパレルのリユースビジネスで成長したブックオフグループホールディングスの社長は、リユース商品の架空買取、不適切な在庫の計上が起きたことを理由にマスコミを通じて陳謝した。29 件の不正行為が国内26 店舗、1 拠点にわたって発生、影響額は8,300 万円あまりに及んだ。

セグリゲーションで視る

 ブックオフ社は各店舗で、書籍、音楽ソフト、家具、家電、アパレルやブランド品など、顧客のリユース商品を買い取り、販売するビジネスを広く展開する。そこで起きた不正行為の代表例をセグリゲーションの視点で分析する。

①架空の商品買取

 アパレル部門主任は遊興費や借入金の返済のため、顧客からの買取商品が存在しないにもかかわらず架空の取引を買取システムに登録、レジまたは金庫から買取相当額を持ち出した。

②商品査定の水増しによる差額横領

 実際の商品数、買取金額よりも水増し登録をして、顧客に渡した金額との差額を横領した疑い。アパレル部門の責任者は、1 回数十万円単位の差分をレジから抜き取り、オンラインカジノで費消した。顧客とはSNS であらかじめ買取価額を決め、査定、買取、精算を1 人で行って領収書はその都度破棄した。約3 年間の犯行で、原資不明の個人口座への入金額は3 千万円に及ぶ。

③棚卸や廃棄の偽装

 架空の登録で生まれた在庫は、実在庫数を論理在庫数に整合させる不正操作によって隠ぺいされた。棚卸や廃棄に責任を持つ者は部門の責任者にほかならず、システムにアクセスして単独で容易に不正操作を行えた。

 セグリゲーションに基づき、商品の査定者と顧客に代金を支払う精算者を厳格に分担するというルールを誠実に守れば、けん制効果により正しい商品査定と適切な精算ができたに違いない。システムで分担をチェックする機能が働いたが、査定者は強い権限を背景に、精算に使うシステム上のコードをほかのスタッフから借用し、あたかも査定と精算が分担されたかのように装い、システムチェックをすり抜けた。分担が形骸化した要因は、システムの不備に加え、部門の長など特定の個人に権限が集中したことであり、棚卸や廃棄の偽装が防げなかった原因も同じところにある。

失策を繰り返さないための実践編

 こうした失策を実務に活かすため、セグリゲーションの視点から多くの会社が実践できることは数多い。

⑴ セグリゲーションがよく働くためには条件がある

 失策事例でセグリゲーションが形骸化した原因は、実のところシステムの不備や責任者への権限の集中だけではない。ルールをきちんと遵守する意識が不足していたことも見過ごしてはならない。大切なコンプライアンスに対する意識を欠いては、いかにルールや仕組みを設計し、セグリゲーションを積み上げても、砂上の楼閣に過ぎないことを深く肝に銘じておく必要がある。仕組みを使いこなすのは、あくまで人なのだから。

⑵調達と検収のセグリゲーション

 リユース商品の査定は、モノづくりの会社でいえば原材料などの調達に、査定後の精算は納品時の検収と支払にそれぞれ相当する。リユース商品の査定と買取による精算が分離されるように、原材料などの調達担当者と検収者も必ず分担すべきである。互いのけん制が効き、数量、品質や規格に誤りのない納品を実現し、取引先と癒着して納品に関わる不正な行為に及ぶことも防止できる。

⑶査定のセグリゲーション

 失策事例では、あらかじめリユース商品の買取価額を1 人で決めていたが、原材料などを調達する際には、担当者が1 人で意思決定をしてはいけない。複数人による査定をすれば、安価で良質な原材料などが調達でき、コストの圧縮や特定の取引先との癒着の機会も排除できる。

⑷調達、検収と支払、3 者のセグリゲーション

 さらに調達、検収と代金の支払業務も分担する。さもないと、発注より少ない数量や規格の異なる納品に気づかず支払を行い、架空の納品による不正な支払を見過ごすことになりかねない。

⑸棚卸偽装を避ける3 者のセグリゲーション

 棚卸は、2 人1 組で一方が記録、他方がカウントするのが原則である。互いのチェックとけん制で、記録エラーやカウント誤りを予防する。失策事例のように部門の責任者が1 人で数えて記録したのでは、エラーや不正操作を予防できない。さらに棚卸に差異があれば、原因分析をして、棚卸に利害のない経理部門などが棚卸データを補正すべきである。

⑹返品や廃棄の適切な処理

 正確な廃棄の記録を残し、偽装による棚卸の横流しや横領を防止するため、棚卸の廃棄をする者と廃棄記録を会計システムなどに登録する担当者は分離すべき。さらに廃棄対象物を撮影し、処分業者から廃棄証明を入手することが大切になる。

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