プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」
2026.10.20
さこん まさお:代表。1948 年福井県生まれ。大学卒業後、1973 年に中小製造業に就職。経営コンサルタント会社に転職後は標準原価による指導を経験。その後、知人とともに設立したコンサル会社を経て、2016 年に㈱経営学校を設立。
整理整頓は仕事を速くするための取組みです。“感じる”だけでは十分とは言えません。計測しながら進めることが適切です。
今回は数を使って測定しながら、整理整頓をしていくことを説明します。整理整頓に取り組むことを改善とも言います。
理系頭
あなたは、「理系頭」とか「文系頭」とかいう言葉を聞いたことがありますか。
理系頭と文系頭とは反対の意味であるかのように言われることがありますが、そもそも文系頭なるものはありません。ただし、理系頭は確かに存在します。理系頭とは、常識的・日常的な考え方ではなく、筋道を立てて考える考え方(クセ)を言います。多くの人は会社ではすこし理系頭になり、日常生活では常識的な考え方をします。
理系頭は手順(プロセスとも言います)を定め、それに沿って整理整頓を進めることを指します。以下で具体的なやり方を学びましょう。
第1 に、対象とする仕事を選びます。あなたの会社には多くの仕事があります。その中の一つを選びます。
第2 に、選んだ仕事にかかる時間を計ります。開始時刻と終了時刻を計ります。それを何回か繰り返して平均値を出します。この平均値をA としましょう。
第3 に改善します。手作業を機械・器具にする、ムダな動作をなくす、並行して作業する、などに変えます。
第4 に、改善後の開始時刻と終了時刻を計ります。これも何回か繰り返して平均値を出します。この平均値をB としましょう。
第5 に、次の式で計算します。この計算の結果を「効果」と言います。
(改善前に要した時間-改善後の時間)÷改善前に要した時間× 100=(A - B)÷ A × 100=効果
なお、パーセンテージで知りたいため、上述の計算では100 をかけました。第1 から第5 までの手順を踏んで行いましたが、このように行うことによって、同じ手順で行えば同じ(厳密には「ほぼ」同じ)結果を得ることができます。
計測する
数を使って整理整頓するために計測します。
あなたは体温計で体の熱を測ったことはありますか。あなたの体の元気なときの温度を事前に知っておきます。一般的には36.5℃程度です(これを平熱とします)。体がだるいと感じたら、体温計を脇の下にはさんで体温を測ります。平熱と比較します。基本的に平熱はほとんど変化しないので、平熱より大幅に高い場合、体の中で異常が起きていることがわかります。そこで休憩などをします。
ここで出てくるのは、「何を」、「誰が」、「何で(何によって)」、「どのようにして」です。整理整頓も同じです。対比して表1 に示します。
効果を表す
整理整頓は仕事を速くするための活動ですから、改善前と改善後の比較を行うのがよいです。「かなり」とか「ずいぶん」などの言葉で表現しがちですが、比較するには数が便利です。
数を使ってもう一度、先ほどの式を説明します。ここでは例として、倉庫から材料を探し出し、フォークリフトに載せるまでのプロセス(この作業をピッキングと言います)に要する時間を考えます。
仮定:
改善前 2.2 分/ 回
改 善 材料種類ごとに置き場を決めた
改善後 1.3 分/ 回
計算:
(改善前に要した時間-改善後の時間)÷改善前に要した時間× 100
=(2.2 分/ 回 - 1.3 分/ 回) ÷ 2.2 分/ 回× 100
= 0.9 ÷ 2.2 × 100
≒ 40%
この改善によって効果が40%上がったと言います。すなわち、「材料ごとに置き場を決める」という整理整頓によってピッキング作業は40%速くなりました。
計算式の注意
最後に実践において生じる2 つの疑問を説明しておきます。
1.計算の基準
効果は、改善前に要した時間A で割るのでしょうか、それとも改善後の時間B で割るのでしょうか。すなわち、下記(1)と(2)にどのような違いがあるでしょうか。
(1)(A - B)÷ A × 100
(2)(A - B)÷ B × 100
上記(1)は改善前に要した時間を基準にして効果を考え、上記(2)は改善後を基準にして効果を考えています。
どちらかが正しい、どちらかが間違いと決めつけることはできません。しかし、整理整頓の改善を継続する場合、すなわち、第1 期、第2 期、第3 期と継続する場合、第1 期の改善の前を基準にすると連続性が生じ、比較しやすくなります。
2.数値の大小
作業時間のように改善によって数値が減少する場合は問題になりませんが、例えば歩留まりや品質など、改善によって数値が上昇する場合はどうしたらいいでしょうか。すなわち、下記(3)と(4)はどう考えたらいいでしょうか。
仮定:
従来、 投入100kg のうち65kg の良品ができていた改善によって、投入100kg のうち80kg の良品ができた
(3)(65kg - 80kg)÷ 65kg × 100 = - 15 ÷ 65 × 100 ≒- 23%
(4)(80kg - 65kg)÷ 65kg × 100 = 15kg ÷ 65kg × 100 = 23%
効果はプラスのイメージがあります。したがってよい方に変化したのであれば、上記(4)が適切です。