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工場管理 連載「闘う!カイゼン戦士」

2026.03.25

作業を楽に、楽しく改善に取り組む―コベルコ建機 五日市工場

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 油圧ショベル、クレーンを主力にグローバル展開するコベルコ建機(東京都品川区)。Made ByKOBELCO(世界共通品質)を合い言葉に国内外で改善活動を積極的に推進し、QCD(品質・コスト・納期)の絶え間ないブラッシュアップによる顧客満足度の向上に取り組んでいる。主力生産拠点である広島事業所五日市工場では、現場の担当者1人ひとりが生産性と安全性、作業負担の軽減を考え、班単位でのチームワークと改善部署による支援によって課題を1つひとつクリアしていく風土が根づき始めてきた。世界的な需要動向の変化や新製品、モデルチェンジに柔軟に対応する設備力、現場力が同社の力の源泉となっている。

グループ全社のマザー工場

 コベルコ建機は神戸製鋼所の建設機械部門、油谷重工、神鋼コベルコ建機が統合し、1999 年に設立、今年25 周年を迎えた。神戸製鋼は1930 年に国産建機第1 号となる電気ショベル50K を開発、油谷重工も63 年に国産初のホイール式油圧ショベルTY45 を投入するなど建機メーカーとしての歴史は古く、モノづくりの伝統が脈々と受け継がれている。

 イエロー系が多い建設機械の中で、独自のブルーグリーンが印象的な同社製品群。油圧ショベルは7.5 ~ 30t クラスを中心に最大220t までを手がけ、クレーンは大型・中小型、基礎・土木工事専用機まで揃える。ハイブリッドショベルなど低燃費・低騒音の製品を得意とし、油圧ショベルをベースにした多彩な環境リサイクル機械も同社の大きな特徴である。

 生産拠点は国内3 事業所4 工場(岐阜、兵庫、広島)、海外3 カ国3 工場(中国、タイ、インド)が稼働し、グローバルな最適生産を展開する。

 広島事業所は油圧ショベルを手がける五日市工場と油圧ショベルの先端部分のアタッチメントや足回りなどの部品を生産する沼田工場を有するコベルコ建機の主力生産拠点。特に五日市工場は同社グループの「マザー工場」であり、製缶・加工・塗装・組立までの一貫生産体制を構築。AGV(無人搬送車)による部材の自動搬送や溶接ロボットの導入など人と自動化設備を組み合わせ、多品種変量への柔軟な生産を実現している。

リーマンショックが転機に

 同社のモノづくりの土台となっているのがグループ全社で取り組むからくり改善、改善活動、QCサークル活動である。五日市工場では「5G 活動」というネーミングで、安全・品質・作業性・経費削減・効率アップなどの改善活動を進めている。5Gとは現場、現実、現物、原理、原則の頭文字であり、5G活動は「原理原則に従い、机上ではなく、実際に現物を観察して現実を認識したうえで、問題の解決を図る」を意味している。また第5 世代通信速度(5G)にちなみ、改善活動がスピード感を持った取組みとなるようにという意味も込められている。

 月1 回の改善報告はグループの各工場に持ち回りで出かけたり、リモートで情報を共有したりする。改善活動を支援するものづくり推進部は「幹部らと現場の意見交換もでき、励みにもなっています」(松永進ものづくり推進部シニアマネージャー)とモチベーションアップにもつながっていると説明する。

 同工場が改善活動に力を入れるきっかけとなったのが2008 年のリーマンショックだった。「当時は旧・祇園工場でしたが、受注が激減する中、次の増産に向けて準備をしておかなければいけないと取り組み始めたのが始まりでした」と釣井和幸五日市製造室室長は振り返る。それまでも班単位での改善活動はあったが、他部署も交えて大々的に展開していった。からくり改善に着手していったのもこの頃からだった。

 他部署や他工場との改善報告会のほか、「からくり改善くふう展」(日本プラントメンテナンス協会)や「第一線監督者の集い」(日本能率協会)など外部主催の大会にも参加。さらにそこで知り合った異業種企業との工場見学などの交流を通じて改善活動に対する意識、改善レベルも高まっていった。

 12 年には五日市工場が新設され祇園工場を閉鎖し、移転した。「旧工場はモノづくりだけを目的にした工場でしたが、五日市工場はお客様方に『見せる』ことも意識した製造拠点」(同)でもあり、5S の成果も求められた。建機市場も好転し、新製品の投入やモデルチェンジが相次ぐ中、さらに生産性向上を掲げて改善活動を推進していった。

 ただ、工場の稼働率が上がり、日常的な仕事に忙殺され始めると改善にかける時間が取りにくい状況もでてきた。そうした中、ドーザーブレード(排土板)の取付に天井クレーンを使っており、落下などの危険性に気づいた。担当していた組立3班では全員で改善に着手し、台車による組付に切り替えた。
ドーザーブレード取付台車(台車本体 )

ドーザーブレード取付台車(台車本体 )

ドーザーブレード取付台車(取付時)

ドーザーブレード取付台車(取付時)

 当時、班長だった大方将史氏(現・五日市製造室班長)は、「その頃、仕事が忙しく改善活動は活発ではありませんでしたが、班の全員が協力し、3~ 4 カ月かけてクレーンレス台車を完成しました。この取組みを機に現場のやる気が変わりました」と改善を自分ごととしてとらえ始める変化点となったと指摘する。 

メンバーとの会話が改善のモチベーションを引き出す

 20 年に班長を引き継いだ川本強氏(現・ものづくり推進部生産技術組立・塗装グループ)は、班のやる気をさらに引き出すことに試行錯誤を重ねた。

 川本氏自身、もともと改善活動に熱心で改善提案数も群を抜いて多く、それらの成果から班長を任された背景があった。「改善活動が好きなのは改善によって自分の作業が楽になり、ミスが減るなど成果につながるからです。そのことを皆さんに知ってもらいたく、コミュニケーションを図ることから始めました」とメンバーとの対話が第一歩となった。

 当時は残業も多く、メンバーと会話する時間もとりにくい状況だったが、1 人ひとりと話していくとそれぞれ困りごとを抱えていることがわかってきた。一緒になって改善していくことで仕事が楽になり、成果が出ることを実感してもらえるようになってきた。1 ケタ前後だった改善提案も徐々に増えていった。
多方向への扇風機の設置。作業を楽にする改善の1つ

多方向への扇風機の設置。作業を楽にする改善の1つ

 さらに大きく変わったのは現場に改善ボードを設置してからだ。スパナやドリルなどの工具をかけられる板で、そこで班のメンバーが空き時間に改善についての意見交換や実際に作業することが増えていった。それによって設置した22 年以降、それまで10 数件だった改善提案件数が100 件以上提出されるようになった。

 「改善提案も最初は『こんなことをしてほしい』といったレベルから最近は『この寸法で、この形で』などより具体的になり、改善提案自体が進化しています。それによって自分自身の作業が楽になり、改善自体を楽しむことが皆さんに理解されてきたと思います」(同)。その結果が提案件数に現れているという。
改善ボード。このスペースで日々の改善活動が行われる

改善ボード。このスペースで日々の改善活動が行われる

若手が実習生と一緒につくった改善棚

若手が実習生と一緒につくった改善棚

個人の才能を活かし、成功体験を積み重ねる

 川本氏の後任となった瀧本圭佑五日市製造室班長も「私もコミュニケーション能力には自信があるので、会話をしながら各人のいいところを引き出していきたいと思っています。たとえば元バンドマンだった若手は創造力が豊かで改善にもそれが活かされています。個人の才能を活かして成功体験を積み重ねていける雰囲気を大切にしていきます」と改善の機運を高めるための環境づくりに力を入れている。

 3 班に対する上長からの評価も高まっている。「メイン組立3 班のメンバーは明るく、誰とも話しやすい雰囲気が外から見ても伝わってきます。歴代の班長がコミュニケーションを大切にした結果であり、成功体験がモチベーションとなっているのだと思います」(仲渡公策五日市製造室職長)

 今後の改善活動について釣井室長は「他部署や他社の取組みから学び各人の改善に対する意識や力量は格段に上がってます。まだ人によって濃淡はありますが、自発的に能力を発揮できる環境はつくってこられたと自負しています。改善好きのメンバーを見つけて引き出していくことも課題です。さらに欲をいえば、各人が目の前の仕事だけでなく、班全体、ライン全体といった広い目で改善に取り組めるようになってもらいたいですね」。
メイン組立ライン。1台16分のタクトで生産している

メイン組立ライン。1台16分のタクトで生産している

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