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工場管理 連載「闘う!カイゼン戦士」

2024.11.01

5Sを活かした改善提案で、柔軟なモノづくりを推進―東陽化成

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 化粧品のOEM(相手先ブランドによる生産)を主力に展開する東陽化成(東京都世田谷区)は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾〈しつけ〉)と改善提案を柱に業務改善を推進している。多品種少量生産で毎月150種類以上のアイテムを手掛ける現場では半自動化装置を使い人手に頼る部分も多く、生産効率と品質の向上が常に課題となっている。月1回の委員会活動では各部署から提出された改善提案をもとに議論を進め、評価しながら全社的な取組みをフォローする。さらに最近では5S 活動と組み合わせ、他部署との相互点検を通じた改善活動にも着手、第三者の視点から新たな改善課題を見つけ出すことにも結びつけている。

多品種小ロットできめ細かい対応

 東陽化成は1967 年に東京世田谷区で創業。以来、化粧品のOEM 専業として600 社を超える顧客に商品を提供してきた。商品企画から製造、包装、箱詰めまでを一貫して手掛け、最小1,000 ロットからの注文に応じるきめ細かなサービスが持ち味だ。多品種・多剤形を強みとし、液状、クリーム状、練り状、粉状を1 つの工場で扱える。とくに他社での扱いが少ない粉体の設備を持ち、液体と粉体を混ぜ合わせるリキッドファンデーションなどの商品を1 社で対応でき、短納期を実現しているのも大きな特徴である。
化粧品製造ライン。自動化と人手を組み合わせ最適なモノづくりに取り組む

化粧品製造ライン。自動化と人手を組み合わせ最適なモノづくりに取り組む

 製造拠点である成田工場(千葉県成田市)は1988年に洗顔パウダーやパウダープレス品などの好調を背景に東京工場に次ぐ第2 工場として建設した。当初は洗顔パウダーやパウダープレス品(ファンデーション、アイシャドウ、チーク)をメインに製造し、91 年頃からは幅を広げスキンケアの生産も行うようになり、現在はスキンケアの生産が主力となっている。

 2018 年には東京工場を閉鎖し、成田工場に集約。商品開発と営業を本社、生産を成田工場の2 体制で事業を運営している。同社の強みである多品種少量生産は半自動の多種多様な設備を駆使した独自のライン生産で進めるため、効率化を進めるために改善活動が活かされている。
多品種小量生産に対応するため多様な装置を用意

多品種小量生産に対応するため多様な装置を用意

 同社が改善活動を本格的に始めるきっかけとなったのが20 数年前に受けた改善コンサルの指導だった。課長クラスが参加し、各課の課題に対する改善策を考えていく取組みの中で、5S の基本を学んでいった。「コンサルタントはTPS(トヨタ生産方式)などの指導を行っている方でしたが、当社の現状に合わせて指導してもらいそこで教わった5Sが定着し、今に至っています」と生産担当の塚本恭一常務は振り返る。

 各課の委員で構成する5S 委員会を発足、日常の整理・整頓・清掃といった基本的な活動を継続。最近では日々の活動に加え、月1 回は「5S の日」を設け、30 分かけて目の届きにくいエアコンの上や窓枠の清掃、工場周辺の草むしりといった普段あまりできない場所の清掃や整理整頓に取り組む。「5S を始めて各部署で整理整頓についてのルールができてきました。たとえば段ボールを床に直に置かず、敷物の上に置いて清潔に保存したり、決まった場所にものを戻したりといったルールが定着して見た目もきれいになっていきました。それを全社的に展開することで従業員の意識も変わってきたと思います」(同)と5S の成果を実感する。

改善提案活動を再開

 次に着手したのが改善提案活動だった。「実は改善提案制度は一度中断していたのですが、07 年ごろに従業員の発案で提案内容を評価する表彰制度を採り入れて再開し、そこから本格的に取り組み始めました」(同)

 改善提案委員会を再び立ち上げ、改善効果金額に合わせて金一封を与える報奨金制度を導入。これを機に従業員のモチベーションが上がり、提案数は一気に増加した。人事評価の個人目標に改善提案の件数を登録する従業員などもいて全社的に盛り上がっていった。「生産現場だけでなく、管理部門でも取組みが強まり、パソコンが普及し始めた時期だったのでExcel を使った自動計算を提案し、数百万円の改善効果を引き出した例もありました」(同)と際だった成果も出始めていた。
業務改善提案申請書の一例。最高の社長賞は社長が判断し、報奨金の上限はない(画像提供:東陽化成)

業務改善提案申請書の一例。最高の社長賞は社長が判断し、報奨金の上限はない(画像提供:東陽化成)

 しかし、数年続くと熱気は徐々に冷めていった。改善の題材を見つけ出すのが難しくなっていき、改善効果が薄いとインセンティブもそれほど期待できないことなどが要因となっていた。現場を統括する増田幸夫成田工場工場長は「実際、画期的な改善効果を出せるアイデアは少なくなってきました。ただ、現場では日々、工程改善や設備改善に取り組み、提案書の提出は少なくなってきたものの、改善への熱意は衰えてはいません」と従業員のモチベーションは依然高いと評価する。

 そうした中、1 つの取組みとして発足したのが、5S 改善提案委員会である。それまで5S 委員会と改善提案委員会は別の組織として活動していた。しかし、各部署から負担が大きいという声や長年5S 活動を支えてきたベテラン社員の退職といったことを機に、21 年11 月に改組し、統合した。本社、工場を合わせた7 部署から計7 人の委員と前委員長のオブザーバー、顧問で構成。月1 回委員会を開催する体制へと変更し、再出発した。
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