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工場管理 連載「闘う!カイゼン戦士」

2026.05.22

身の丈IoTで進めるスマート工場 現場力が導く本物のDX―ロザイ工業 赤穂工場

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 工業炉、燃焼機器、耐火物という熱設備の3大要素を一貫して手掛ける全国唯一のメーカー、ロザイ工業(大阪市西区)。赤穂工場では、溶解炉や焼却炉の内張りに用いる耐火れんがをはじめ、各種耐火物やセラミックス製品を製造・販売している。かつては粉じんに覆われた重作業型工場だったが、5S活動を皮切りに、省エネ・安全・SDGsの視点を融合させた「7SDGs」活動へと発展。さらに工場のスマート化を目指してIoT導入を段階的に進め、エネルギーや稼働状況の見える化、省エネ、効率化、生産性向上を実現した。地道な改善活動を土台に、わずか10 年で構造改革を成し遂げ、収益を大幅に高めるなど、文字どおりのDX化を着実に進めている。

汎用製品から高付加価値製品へ 事業転換の挑戦

 ロザイ工業は工業炉・燃焼機器・耐火物という熱設備の3 大要素を自社で扱い、設計から製作・施工・メンテナンスまで一貫対応できる体制を強みとする。1947 年に大阪で創業。大阪本社、中島工場(大阪市)、九州工場(北九州市)で炉・燃焼機器を、赤穂工場で耐火物を製造している。

 赤穂工場は1956 年設立。鉄鋼・非鉄・ガラス・セメントなどの製造工程で1500℃以上の高温溶解や焼成を要する工業炉内部に使用する耐火物を製造している。かつては鉄鋼向けが8 割を占めていたが、粗鋼生産量の低下や中国製安価鋼材などの影響により需要が減少。鉄鋼向けへの依存リスクを避けるため、複雑形状で成形が難しいが利益率の高い高付加価値製品へと舵を切った。

「鉄鋼用の汎用れんがから、ガラス製造用やセラミックコンデンサ焼成炉向けなど高度な製品へシフトしたことで、鉄鋼用は3 割に減り、生産量も3 分の1 になりましたが、その分利幅の大きい高付加価値製品の受注が増え、売上は伸びています」と小林洋介取締役は語る。

 鉄鋼用の安価な長方体れんがを製造していた従来ラインでは、異形・大型れんがなどへの対応が難しく、生産ラインの高度化に向けた現場改善やIoT 導入が不可欠だった。

“灰色の世界”からの出発 5S から7SDGs 活動への展開

「右を向いても左を見ても“灰色の世界”でした」(小林取締役)。作業現場は耐火れんがの製造過程で発生する大量の粉じんに一面覆われていたという。そこで2014 年に中部産業連盟の指導の下、5S 活動を開始した。なかなか進まない様子に経営層はやきもきし、三浦秀人工場長も指揮をとろうとしたが、「工場長は手を出さないで。現場自身がその気にならなければだめ」とコンサルタントから指摘された。最初は戸惑いもあったが、小さな改善を重ねるうちに、5 年ほどで整理・整頓・清掃が徹底され、原料や備品の不足など日常的なトラブルもほぼ解消された。20 年に「安全(Safety)」「省エネ」を加えた「7S」活動へ、現在ではSDGs視点を組み込んだ「7SDGs」活動へと活動テーマを広げている。
「7SDGs」活動掲示板。推進計画表の作成、点検表の実施はISO品質マニュアルにも明記

「7SDGs」活動掲示板。推進計画表の作成、点検表の実施はISO品質マニュアルにも明記

 職場単位で12 グループに分け、月初に推進計画の作成と活動の点検を実施。月2 回各2 時間の「7SDGs タイム」では自主性に任せて改善を進め、年1 回の「7SDGs 推進活動発表会」で成果を共有する。金型やマーキング用ゴム印の定位置化、ボルトやナットの在庫管理、金枠保管棚の落下防止対策といった数々の改善を積み重ねた結果、「粉塵が減った」「作業効率が上がった」と従業員も実感。トップダウンから現場主導へ転換したことで自主性と管理能力も向上した。外部評価としても、20年に3S 活動推進協会主催「大阪3S サミット」で最優秀賞を受賞。各所の事例発表会でも発表の機会を得ている。

 また、残業削減や有給取得率87%、男性を含む育休取得率100%を達成するなど働き方改革にも大きく貢献し、ワークライフバランスやSDGs 推進の認証企業としても正式に認定された。
ボルト・ナットのDIY収納ケース。上部棚には金枠の落下防止対策として安全ガードを設置

ボルト・ナットのDIY収納ケース。上部棚には金枠の落下防止対策として安全ガードを設置

IoT導入によるエネルギー効率最適化とDX推進

 5S 活動の成果を目にした小林取締役は「アナログの代表格ともいえる赤穂工場をスマート工場にしたい」と考えた。しかし中小企業であるがゆえに、IoT への大規模投資は難しい。そこで、ものづくり補助金などを活用しながら、スモールスタートで段階的にIoT 導入を進めていった。

 その第一歩は、耐火物製造の要であるトンネルキルン炉のエネルギー可視化だ。1300 ~ 1650℃で24 時間365 日稼働する連続式炉では、異なる製品を焼くための段取り替えや温度制御、エネルギー効率の最適化が課題であった。

 本社工業炉事業部の協力の下、全長92m の炉の各所にセンサを差し込み、炉圧・排気温度・酸素濃度・ファン電力などを手作業で計測。そのデータ分析の結果、約20%の省エネを実現した。16 年には、熱処理プロセスやエネルギーを可視化する「R-TAP」を構築。常時監視が可能となり、1 分単位で自動計測するなど計測・分析が効率化されるとともに、ビッグデータ解析によってさらに10%超の省エネを達成した。三浦工場長は「単なるデータ収集で終わらせず、分析して改善に活かすことが重要です」と、工業炉設計の豊富な技術と知見を持つ同社ならではの成果だという。

 次に生産情報入力の効率化に着手した。高付加価値製品への転換による品質要求の高まりに伴い、現場から回収される作業日報や工程帳票などの手書き帳票は1 日120 枚以上にのぼり、事務担当者は半日かけて入力していた。

 膨大な帳票作業を解消すべく、18 年に生産管理システム「MAIDO」を自社開発した。原料混練量・成形数・焼成数・検収数などをタブレット端末から直接入力できるようになり、手書き帳票や再入力は不要に。作業効率は大幅に向上し、班長や作業者は生産工程計画など本来業務に時間を割けるようになった。現場の反応を懸念していたものの、操作性や効率のよさが受入れられ、また自ら直接入力することで責任意識も高まった。20 年間データ入力を担当してきた女性社員が課長に昇進し工程管理を任されるなど、DX 化がキャリア形成にも寄与した。

自動プレス機の稼働可視化 稼働率向上と潜在課題の解消

 れんがを成形する自動プレス機の稼働率も課題の1 つ。設備の老朽化を指摘する声もあったが、限られた成形能力の中で生産量を増やすには、稼働率の向上が欠かせなかった。「100%に見える稼働率ですが、実際の連続稼働は65%程度。まだ生産余力があり、段取り替えなどによる停止時間をいかに減らすかが課題でした」(三浦工場長)
原料を混練した材料で耐火れんがを成形する自動プレス機

原料を混練した材料で耐火れんがを成形する自動プレス機

 そこで19 年に稼働監視システム「R-AIM」を導入。自動プレス機にパトライトを設置し、配合切れなど種々の稼働状況を5 色の組合せで表示すると同時に、信号を送信して「アンドンモニター」にリアルタイムで稼働時間や稼働率などの情報を映し出した。稼働状況が可視化され、型替えやパレット交換のタイミングに即座に対応できるようになり、停止時間が短縮。現場全員が稼働率や異常時間を把握できることで、「機械を止めない」という意識も浸透していった。
原料を混練した材料で耐火れんがを成形する自動プレス機
パトライト(上)とアンドンモニター(下)で型替え中・配合待ち・パレット上がりなどの状況を示す「R-AIM」

パトライト(上)とアンドンモニター(下)で型替え中・配合待ち・パレット上がりなどの状況を示す「R-AIM」

 R-AIM による詳細なデータ収集・分析をもとに、児島聖製造課係長を中心とした改善活動も展開。稼働率低下の主因がチョコ停であることを特定し、週次ミーティングでデータや映像をもとに停止要因を検証、改善テーマを設定した。寸法センサやロボット動作、コンベア速度など従来見えなかった課題を洗い出し、チョコ停要因の65%を占めていた寸法エラーを解消。さらにサイクルタイムオーバーの調整や型替え作業の短縮にも成功した。歩留りや原料ロスといった新たな課題も明確になった。「稼働率を上げるための導入でしたが、現場の小集団活動の中で得た気づきが、潜在的な課題を解決してくれました」(小林取締役)

 その後も、22 年に新産業創造研究機構(NIRO)の支援を受けて「kintone」を導入。本社経営企画室と連携し、月1 回のDX 研究会で作成アプリの有効性検証や新たなDX 施策について意見交換を重ねている。翌23 年には、AI 画像認識とロボットを活用した耐火れんがの自動選別システム「AQUSEL」を導入し、外観検査の精度向上と過重労働の軽減を実現するなどDX 化の勢いは止まらない。
パレタイジング/ハンドリングロボットやAIカメラで構成される自動選別検査ライン「AQUSEL」

パレタイジング/ハンドリングロボットやAIカメラで構成される自動選別検査ライン「AQUSEL」

 IoT やAI を活用して次々と成果を上げ、わずか10 年あまりでスマート工場モデルを築き上げた赤穂工場。7SDGs など地道な改善活動で培われた現場の主体性と改善意欲こそが、持続的なスマート化とDX 化を支えている。

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