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工場管理 連載「リーダーに捧ぐZ世代の新人育成バイブル」

2025.05.16

第12回 教育の最後は、作業を理解したのかを見極めること

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ジェムコ日本経営 古谷賢一

ふるたに けんいち:本部長コンサルタント、MBA。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、地に足がついた活動をモットーに現場に密着。きめ細かい実践指導は国内外の顧客から高い評価を得ている。“工場力強化の達人”とも呼ばれている。おもな著書は『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)。
https://www.jemco.co.jp
 「Z 世代」の新入社員に対する教育では、作業上の注意点やポイントが確実に記載された適切な作業標準書の作成と、適切な教育方法が必要だ。この段階では、「教える側の考え」を押しつけるのではなく、「教わる側の立場」で考えることが、教育がうまくいくためのカギとなる。そして最後にもう1 つ、作業を本当に理解し修得したのかを見極めることも忘れてはならない。

 教育を実施した結果、新入社員が作業に必要な適切な知識を持ったのか、良品を生産するために適切な技量を身につけたのかを確認してから実際の生産活動に従事してもらうことになる。これが教育訓練における知識や技量の見極めだ。

 作業者に対する教育で注意しなければならないのは、教わる側の人が「わかったつもり」になってはいけないということだ。ていねいに教えて、教える側の人がやって見せて、実際に教わる側の人にさせてみて、といった教育の基本的な手順を進めても、見よう見真似で作業ができるようになっている場合もあるからだ。作業上の注意点などを正しく理解していなくても、なんとなく手順を間違えなければ、作業はできてしまうのだ。

作業を修得したのか「見極める」

 確実な作業のためには、教育の対象となった新入社員が、教育の結果、本当に必要なことを理解し、適切な作業ができるようになったのか見極めることが必要だ。

 作業を修得したかどうかの見極めには、大きく2 つの手法がある。1 つは確認テストを行うこと、そして、もう1 つは実際に作業をさせてみることだ。確認テストには2 パターンあり、外観検査基準などの知識を問うための筆記テストと、作業が正しくできるのかを確認するための実技テストに分かれる。

 確認テストは、おもに製品の品質を左右するような、検査工程や重要工程に従事する作業が対象になる。明確な判断基準をもった確認テストに合格することで、作業に従事してもよいと「作業認定」を与える。

 確認テストを行わない場合は、実際に作業をさせてみて、その結果が適切だと判断できれば「作業認定」を与える。現実には多くの作業が、この方法で見極めを行っている。この見極めの方法は簡便であるが、一方で注意すべきことがある。見よう見真似でそれらしい作業ができるようになったのか、作業上の注意点やポイントを適切に理解して作業ができるようになったのか、作業を見ても区別がつかないからだ。

理解をしたかどうかを説明させる

 もしも、作業上の注意点やポイントを正しく理解しないまま、見よう見真似で作業ができるようになったことで作業認定を与えてしまうと、実際の作業では品質不良などのトラブルを発生させてしまう可能性がある。

 適切な作業ができているかどうか、実際に作業をさせて良品ができれば合格にする場合、教育を受けた新入社員が黙々と作業をしている様子を横で見ても、本当に作業上の注意点やポイントを理解したうえで作業をしているのか、ただ作業の動作が適切なだけなのか区別がつかないので、見よう見真似で作業をしていたとしても、それを見抜くことが難しい(図1)。
図1 黙々と作業をしている様子を見ても…

図1 黙々と作業をしている様子を見ても…

 そのため、適切な作業ができているかどうか、実際に作業標準書に示された作業の手順や作業上の注意点やポイントを、作業をしながら口頭で説明をさせることをお勧めする。もちろん、作業標準書の内容を一字一句丸暗記することを求めるわけではない。ただ作業をしながら言葉に出して説明をさせることで、必要なことを理解して作業をしているのか、理解しないで作業をしているのかを見極めることができるのだ(図2)。
図2 教育内容を正しく理解したのか見極める

図2 教育内容を正しく理解したのか見極める

定期的に知識や技量を確認する

 作業教育を行い、適切な知識と技量を身につけたとしても、それが数カ月後から数年後でも、確実に維持されていなければならない。そこで、定期的に知識や技量を確認することも必要だ。

 新入社員に対する教育だけではなく、昨今ではベテラン作業者に対しても、定期的に知識や技量を確認することをルール化している企業も多い。最初に教えたときは正しい作業を行うことができても、数カ月、あるいは数年といったように時間が経過すると、記憶があいまいになってしまうことや、作業の方法などが変わってしまうことがあるからだ。作業を継続していると、記憶が変質してしまうことは人間であれば誰でも起こり得る。

 ベテラン作業者でも時間の経過とともに作業のやり方が自己流に変わってしまったり、クレームが続くと良否判断の基準が必要以上に厳しくなったり、作業が忙しくなると良否判断の基準が無意識に緩くなったりする。

 作業の品質を一定に保つためにも、新入社員はもちろん、すべての作業者に対して、このような定期的な力量の確認をするべきだ。一定の頻度で、最初に教育したときと同様に、作業の手順、作業上の注意点やポイントなど、適切な知識や技量を保持し続けているかを見極めるのだ。たとえば、年に1 回といった形で、作業の見極めを定期的に行い、その人が正しい知識と技量を保持し続けているかを確認するのだ。

次回までの振り返り

 新入社員に教育をして、作業手順や作業上の注意点やポイントを確実に修得したのか、知識と技量を見極めるときに、「口頭で説明をしながら、作業をしてもらう」ことに取り組んでほしい。間違ったことを覚えていたり、理解してほしい注意点などが抜けたりしている場合は、再度の教育を行い、確実に作業を修得できるようにしよう。また、この見極めの過程で教育内容に改善が必要であれば、そちらもあわせて考えることが必要だ。
今月の検討課題
・ 実際に新入社員に教育を行い、最後に本当に教育内容を理解して作業ができるようになったのかを見極める。
・ 見極めでは、口頭で説明しながら、作業をしてもらい、その内容を確認する。

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