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プレス技術 連載「モノづくり革新の旗手たち」

2025.07.25

プレス加工メーカー3 社を束ね金型技術のさらなる強化を推進 高付加価値経営に挑む―新栄ホールディングス

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㈱新栄ホールディングス 代表取締役
中村 新一氏

金型事業化の失敗から学ぶ

『プレス技術』編集部

貴社の特徴を教えてください。

中村

当ホールディングスは、「新栄工業」(千葉県)「アポロ工業」(埼玉県)「飯能精密工業」(埼玉県)という三つのプレス加工メーカーからなる企業体です。もともとは1979 年に私の父親(中村甲三氏)が千葉市に新栄工業を創業したところから始まり、その後、私が父親の跡を継ぎ、2020年と2023 年にはM&A で2 社を買収、ホールディングス体制として新たな経営をスタートしました。2019 年からここまで4 年ほどで事業規模は3 倍まで成長させることができました。

M&A に取り組んだきっかけは。

金型を内製したいと思ったのがきっかけです。知り合いの金型屋さんで仕事をしながら金型のイロハを学んだ後、さっそく金型部門を立ち上げました。ところが、いざ部門を立ち上げても自社で使う金型だけでは採算が合わず、かと言って売り型しようにも販路がありません。結果、せっかく育てた技術者も同業他社に引き抜かれるなどし、維持できなくなりました。そうした経緯もあり、自社単独による金型の事業化は断念し、M&A による技術の獲得を模索するようになりました。

アポロ工業、飯能精密工業を買収した理由は。

両社とも優れた技術を持っている会社だからです。アポロ工業はEV 部品加工向けのドライプレス加工の技術を持っていました。一方、飯能精密工業は精密プレスに加えて、医療機器など精密組立てや精密部品を扱う環境づくりに長けています。新栄工業と併せて、三者三様の特長や文化があり、特定の業種に依存しない企業体を作れることも魅力でした。
新たに作製した新栄工業⇔飯能精密工業の通い箱

新たに作製した新栄工業⇔飯能精密工業の通い箱

資金調達はどうされましたか。

自己資金では買えないので、メインバンクに融資していただきました。M&A 資金のような戦略的な資金の場合、銀行は経営者をよく見て、この経営者に貸してよいか否かを判断します。飯能精密工業を買うときも想定PL(損益計算書)を10 パターンぐらい作って、それぞれ綿密にシミュレーションしてプレゼンしました。「これがこうなったら、この借入を返す。この場合はここで返せる」といった具合です。こうした取組みの姿勢が私自身の与信につながったのだと思います。

中小製造業でM&Aで大切なことは。

何のためのM&A なのか丁寧に説明しながら進めることです。買う側・買われる側ともに自分たちのためだと理解すれば離職率も上がりません。株主のために利益を出せと言っても「それじゃ俺たちは何のために働くんだ?」となり、モチベーションが下がります。賃金制度にしても目標管理をして、それに対する進捗度合いをスコアにして見える化することが大切です。スコアに基づいた賃金が自動的に反映される公明正大な仕組みにします。人事考課や賃金、教育訓練、目標管理などは新栄工業で作ったパッケージがあるので、これをホールディングス全体に適用しています。

3 社それぞれの今の状況は。

アポロ工業と飯能精密工業が絶好調な反面、新栄工業の利益が出ていません。これがM&Aの苦しいところですが買った側が痛むからです。買われる側は事前にこういう改革をしたら稼げる会社になるとわかっているから買われる。一方、改革のためのリソースは買った側から持ち出すので、買った側はどんどん痩せていきます。とはいえ、グループ内外注でアポロ工業や飯能精密工業から仕事が入り始めたところなので、今後、徐々に平準化していきます。
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