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プレス技術 連載「キラリ光る!塑性加工分野のモノづくり力」

2026.09.04

第23回 試作板金の精度を上げるハイブリッド金型─豊里金属工業

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プレス・鍛造加工で独自・個性的な技術を駆使してモノづくりに挑む企業、各種研究・開発団体をレポートする。(『プレス技術』編集部)
 試作板金加工メーカーの豊里金属工業(大阪市東淀川区)は、家電や自動車、建築金物など各種金属製の試作品を製作する(写真1)。そのため絞り、曲げ、ブランクなどの塑性加工と各種機械加工および金型製作、溶接など幅広い技術を手がける。また、試作品の材質は鉄、アルミニウム、ステンレス、銅、チタン、インコネル、各種ばね材と多種類で、板厚も0.025~16mmと広範囲なニーズに対応する。
写真1 各種の試作板金(上:浄水システムフレーム 下:冷却チラー筐体)(写真提供:豊里金属工業)

写真1 各種の試作板金(上:浄水システムフレーム 下:冷却チラー筐体)(写真提供:豊里金属工業)

「試作品を製作するための各種の技術と多種類の材料を常時ストックしていることから、正確・迅速でコストを抑えた試作品を提供できます」そう自社の強みを話す岩水建二社長によれば、同社は試作品づくりの中でも簡易金型を用いた絞り加工を得意にすると言う。

レーザ、切削、ワイヤ放電の各加工技術を駆使する

 同社は試作板金加工に必要な機械としてレーザ加工機、油圧プレス機、マシニングセンタ(MC)、ブレーキプレス機、ワイヤ放電加工機、旋盤、フライス盤など各種汎用機などを揃える。1966 年の創業以来、簡易金型には切断した鋼板を積み重ねる「積層金型」を用いてきた。鋼板の切断に当初は汎用機、今ではレーザ加工機を用いる。そして2016 年にMC を導入して積層金型づくりを進化させている。

 というのも、単純な直線形状の金型であればレーザ加工機で十分だが、3 次元曲線のような複雑形状の試作品が求められるようになるとその金型づくりのため切削加工が必要になった。当初は切削加工を協力メーカーに発注していたが、2016年からはMC を導入して内製に切り替えた。

「3 次元形状の金型部品を社外に発注する際、その形状や意図を説明し理解してもらうために時間と労力がかかりました」

 金型に組み込む一部の部品が3 次元形状だと、それを協力メーカーに短時間で精度良く切削してもらうのがなかなか難しい。一方、自社で切削すれば自ら意図したとおりの形状に精度良く加工できる。そのためMC を導入し、鋼板の積層金型に切削加工の部品を組み込む金型づくりを完成させ、ハイブリッドな積層金型へと進化させた(図1)。
図1 ハイブリッド簡易金型(画像提供:豊里金属工業)

図1 ハイブリッド簡易金型(画像提供:豊里金属工業)

 さらに2019 年にはワイヤ放電加工機を導入して高硬度材の金型部品をつくり始めた。

「ちょうどこの頃からハイテン材(高張力鋼板)を用いた試作品の需要が増え始めました」

 ハイテン材を試作加工するには金型も硬度の高い材料で製作する必要がある。ただ、それまで高硬度の金型部品もレーザ加工機で焼入れ材を切断して製作していたため、金型としての寿命が短く、破損するたびに同じ金型部品を再製作しなければならなかった。そこで高硬度材を高精度に加工できるワイヤ放電加工機を導入し、金型の寿命向上につなげた。

 このレーザ加工、切削加工、ワイヤ放電加工の3 つの工法を駆使して、どんな形状でも高精度に試作品を製作できるハイブリッド簡易金型を完成させた。

量産に近い試作品づくりがモットー

 同社では試作品の設計図を入手するとすぐに簡易金型づくりの工法を想起する。全体的に直線形状の浅い絞り製品ならレーザ加工、自由曲線のような3 次元形状を含む絞り製品なら切削加工、テーパ形状のように複雑な曲線や深い絞りの製品ならワイヤ放電加工というように製品の形状や仕様に応じてそれぞれの工法を駆使し、積層による簡易金型もしくは機械加工やワイヤ放電加工も用いたハイブリッド簡易金型を製作する。

「それによって高精度で量産品に近い試作品を製作できます」

 受注する試作品は形状はもとより各種の機能も試験・評価される。例えば、建築金物の試作品なら耐震性能や強度などの試験に合格できる性能の試作品が必要になる。さらに各種性能試験をクリアしたら即、量産に移行できるような試作品が望ましい。

「製品設計者の意図を正確に反映できる試作品にしなければなりません。例えば、CAE 解析などから製品設計者が割り出した強度をもつ試作品にしなければ、試作の段階で設計の意図が崩れてしまうからです」

 だからこそ量産レベルの試作品づくりをモットーとする。それとは逆に、極限に近い寸法公差でつくりあげた、いわば「奇跡の試作品」のようなものをつくったとしても、試作技術者の能力の誇示にはなるがそれでは意味がないと考える。究極の試作品は必要ない。量産に直結できるような試作品づくりを短期間でできることこそ何より重要と考えるからだ。


 現在、同社は5mm角の端末部品から2m角のテレビのバックパネルと寸法や絞り形状で多種多様な試作品を製作する。どの産業でも新製品を開発しつづける限り試作品の需要は続く。進化型ハイブリッド簡易金型という独自技術とその多彩な工法をもつ同社の今後の試作品づくりに注目したい。

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