新事業創出を目指す中小メーカーにとって、どのようにその糸口を見つけるかは悩ましい問題だろう。ヒントとなり得るのが金属部品製造を手がける協和合金(横浜市金沢区)の取組みだ。主力製品の需要減少を見越し、M&A でグループ化した企業や提携先企業と連携しながら新たな事業の柱づくりを模索する。課題である人手不足についても、グループ内のノウハウを活かしながら現場の自動化・効率化を進めつつある。
――現在の主力製品は?
髙島
マニュアル車のトランスミッション(変速機)に使われるシンクロナイザーリング(シンクロメッシュ機構)を主に製造しています。これは1 個ないし数個の部品で構成されており、銅合金製や鉄製の部品です。当社は温間鍛造およびプレス加工による成形やバリ取り、切削によるねじ切り、研削による表面仕上げなど、シンクロナイザーリングの製造に必要なほぼすべての工程を社内で行っており、金型も内製しています。
また、顧客の図面通りにつくる製品だけでなく、独自商品「レバーシンクロ」も開発・製造しています。これは5 速のマニュアル車に使われるシンクロナイザーで、部品点数を減少させたことによるコストダウン効果とリバースシフト時の操作性向上を兼ね備えたシンクロシステムとして、多くの完成車メーカーさまにご採用いただきました。
主力製品のシンクロナイザー。セットになったリングの中央(中間コーン)は鉄、内側および外側のリングは銅合金、リングを外側から囲むシフトフォークはアルミ合金製
独自商品「レバーシンクロ」は部品点数が少なくメンテナンス性に優れるのが特徴(写真右から2番目、3番目が当該部品)
――生産設備はどのようなものがありますか。
髙島
国内の生産は本社工場(横浜市金沢区)と福浦工場(同)で行っており、一貫生産に対応できる幅広い設備を備えています。温間鍛造用には200~500t のプレス機械を10台、一般のプレス機械は5台、切削用のCNC 旋盤や複合機を含めて60台以上、マシニングセンタ(MC)は5軸機を含めて15台を保有しています。旋盤とMCは加工形状や要求精度で使い分けています。ほかに仕上げ用の各種研削盤、金型加工用の形彫り放電加工機やワイヤ放電加工機などがあります。トランスミッション部品は厳しい寸法精度が求められ、顧客からの指定も多様なため、それらの品質要求に応える目的で内製率を高めてきました。
――メーカーとしての強みを教えてください。
髙島
特定の系列に属するのではなく完全に独立した立場のため、すべての完成車メーカーと取引が可能です。特定企業の思惑に左右されない点は強みだと思います。加えて、高い内製率による品質管理体制の強みが顧客から評価されています。品質マネジメントシステムに関連する国際規格ISO9001 やIATF 16949 も取得済みです。さらに、2000 年代~ 10 年代にかけて積極的に海外展開を進めてきた結果、海外に工場をもつ日系メーカーの地産地消の要望に応えられる体制を構築しました。
そして何よりこれらを実現してきた社員たちが一番の強みです。現在、製造拠点があるのは中国、インド、インドネシアの3 カ国で、日本と同等の設備を使いシンクロナイザーリングを製造しています。中国およびインドは現地のパートナーと組んで立ち上げており、パートナー主導で日系以外の新規顧客開拓にも取り組んでいます。
他企業と組み外観検査システムを開発
――この数年でM&A により2 社をグループ化しました。狙いは?
髙島
グループ内連携による新事業の創出を目指しています。既存事業であるシンクロナイザー製造は近い将来、間違いなくシュリンク(縮小)するでしょう。シンクロナイザーリングはオートマ車にもEV にもほとんど使われないからです。私は前職で銀行に勤めていて、当社にとってM&Aが新規事業に有効であると考えていましたし、社内にM&A 業務の経験者がいたので、ほかの企業と手を組むことで新事業につなげていければと思いました。
また、減るとは言え、シンクロナイザーリングは一定数が残り、これからもつくり続ける必要があります。品質を維持しながらお客さまの要求に応えるために現場の自動化や工場DX・IoT は避けて通れないと考えています。これを実現するための知見やノウハウをもつ企業をM&A すれば、その点でも効果を期待できます。
――グループ化した2 社はどんな会社ですか。
髙島
2023 年にM&A したノア(茨城県牛久市)は画像処理技術に強みがあり、製造業向けの外観検査システムや畜産業向けの体重測定システムなどの開発を手がけています。24 年にグループ化したNeotecJapan(川崎市宮前区)は電子機器の受託開発からスタートした企業で、現在は開発力を活かして顧客の“やりたいこと”を総合的に実現しています。
後者は工場をもたないファブレスですが、協力工場と連携することで商品の開発から量産まで請け負うことが可能です。自動車がメインの協和合金に対し、ノアもNeotecJapan も非常に幅広い業界と接点があるので、3 社が連携することで新事業創出の可能性が広がると考えています。
――現場の自動化でも2 社と連携を?
髙島
はい、手始めとして目視で行っていた全数検査の自動化に取り組んでいます。全数検査は一部製品で求められていますが、人手がかかる割に価格に反映しづらく、検査レベルを落とさずどう効率化するかが課題でした。そこで、2 年ほど前から外観検査システムの開発に取り組み福浦工場に導入、運用をスタートしています。現在はレバーシンクロのプレス部品のみですが、今後対象を広げていく予定です。
また、当社と同じような検査工程の課題をかかえる中小メーカーが多いだろうとの想定のもと、本システムの外販も始めました。外観検査システムは一般的に非常に高価ですから、価格を抑えて導入しやすくすることで、当社のような100 人前後やより小規模な企業の人手不足解消に貢献できるのではないかと考えています。2026 年1 月にはこうしたグループ企業との連携業務を主に担う新部署「未来イノベーション推進室」を協和合金内に立ち上げました。外観検査システムの外販も同部署で行っています。
切削加工の自動化やデータ連携も視野
――自動化についての今後の方針は?
髙島
福浦工場の自動化に注力します。これまで生産数量の多い乗用車向けのシンクロナイザーを本社工場、数量の少ないトラック向けを福浦工場で製造してきた関係で、本社工場に比べて福浦工場の自動化が遅れていました。ところが、近年はトラック向けの需要が増加し、加えて人手の確保も難しくなっています。そこで、切削や研削加工でのワーク脱着の自動化にまずは取り組む考えです。
また、現場では検査結果の記録や日報などをいまだ手書きしているため、正確性やデータ活用に課題があります。現場に散らばるデータの収集や見える化を早急に進めて改善活動に役立てられるようにしたい。この点はNeotecJapan の得意分野なので連携して進めていければと思います。
――昨今はIoT に取り組む企業も増えています。
髙島
当社でも3~4年前から始めました。自作の機器を各加工機に取り付け、稼働時間や停止時間、生産数などの情報をサーバに自動収集しています。また、当社の作業者は1人で6台、7台と多台もちをしているのですが、狭いスペースに背の高い加工機が並んでいるため三色灯が見えづらい。そこで、現場の各所に稼働状況を表示できるモニタを設置し、どの加工機でチョコ停が発生しているかを一目で把握できるようにしました。この見える化を機に社員の意識が変わり、「こうすれば便利だよね」と改善テーマを自主的に探す機運も高まりつつあります。
天井に設置したモニタで加工機の稼働状況を把握。三色灯が見えない場所でも、チョコ停の有無が一目でわかる
――今年1 月の展示会では、レーザ改質技術をアピールしていました。
髙島
シンクロナイザーリング製造の大部分は社内で行っていますが、熱処理はすべて外注しており、外注加工コストが長年の課題でした。そこで、以前から部品のレーザ改質処理を依頼していた大阪府の富士高周波工業(堺市堺区)と2024 年に業務提携し、レーザ改質処理の内製化を進めています。独Laserline 社のダイオードレーザ発振器とファナックのロボットを組み合わせたシステムも導入し、1 月に開催された「オートモーティブワールド2026」で技術を披露しました。
――この技術は金型にも適用を?
髙島
はい。当社で使用する温間鍛造金型の寿命は短いもので数百ショット。これをレーザ改質[焼入れやクラッディング(肉盛り)]で長寿命化できないかと検討中です。レーザで局部に改質処理すれば、通常の熱処理工法で発生する金型のひずみや内部応力を大幅に抑えられます。また、パートナーである富士高周波工業と話し合いながら、社内利用だけではなく、新規のビジネス創出にもつなげられないかと模索しているところです。
独Laserline社のダイオードレーザ発振器とファナックのロボットを組み合わせたレーザ焼入れのためのシステム
破損しやすい箇所のみレーザ改質処理した鍛造金型(写真右、型材:SKD61)。金型全体を焼入れしないのでひずみ取りの作業が不要で、かつ金型内部応力の抑制につながる
――グループ化した2 社をはじめ外部の知見やノウハウをうまく活用している印象です。
髙島
まだまだ道半ばです。異業種ということもあり、お互いの理解を深めるのに時間を要しています。ですが、徐々にグループ連携での案件獲得に至ったケースも増えてきているため、相互理解が進んできている証だと感じています。今後も国内グループ3 社の知見・ノウハウを結集して、新規ビジネスの創出や社内の業務改善に向けてまい進していきたいと思います。
最終製品の販売で社会に貢献
――前職は銀行員だったそうですが、入社のきっかけは?
髙島
当社は数家族が出資して立ち上げた会社で、4代目までは髙島家とは別の出資家族の方が経営を担っていました。髙島家が事業に関わり始めたのは5代目社長を務めた私の父(現・会長)の代からで、私で6代目になります。入社に関しては、あまり深く考えていなかったというのが正直なところですが、父には「ゆくゆくは」という思いがあったようです。
大学卒業後、取引先の銀行で7年余り働き、2018 年に父から入社を打診され翌年入社。そこから新事業創出を担当してきました。入社した当初は銀行との違いばかりが目に付き、いろいろと指摘しては嫌がられていました(笑)。
――今後の目標は?
髙島
これまでは、完成車メーカーの意向に沿って取り組んでいればビジネスが回っていました。半面、われわれの力だけで業績をコントロールするのが難しかったのも事実です。今後はグループの力を活かしながら独自事業を立ち上げ、われわれ自身が最終製品を販売することで世の中に貢献する形にもっていきたい。それが働く社員の誇りやより良い生活基盤の構築につながると考えています。
たかしま しんご:1990年3月9日生まれ、36歳。成蹊大学経済学部卒。銀行勤務を経て2019 年、協和合金入社。22年、取締役。24年、社長就任。学生時代はラグビーに熱中。現在も健康維持のための筋トレは欠かさない。