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機械技術

2026.09.09

信頼を守る「最後の砦」ドイツ製CNC5 軸工具研削盤の活用―信和精工

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 切削工具メーカーの信和精工(大阪府東大阪市)は超硬合金やダイヤモンド工具のオーダーメイド品が中心で、コーティングと焼入れ以外の工程はすべて社内で一貫生産が可能な体制を有する。新品の製作だけでなく、自社工具の再研磨も多く引き受けている。「こういう加工が可能となる工具が欲しい」、「現在使っている工具よりもっと長寿命のものを」と言ったユーザーニーズに高い設計力で対応。加工シミュレーションを駆使した「根拠ある改善提案」も多く行う。ユーザーの課題を解決する切削工具の製造現場で活用しているのがドイツ製CNC5 軸研削盤だ。

航空機業界からの信頼も厚いオーダーメイド工具メーカー

 同社の創業は1965 年。上茂信夫現会長が地元である鹿児島から上京し、就職した大阪市内のメーカーにて工具の開発を任せられたことをきっかけにノウハウを蓄積し、創業した。
「しばらくはセンターレスブレードの研磨をこなし、少しずつ今のオーダーメイド工具の設計製作に移っていったと聞いています。よく聞く『大手工具メーカーからの独立』というわけではないので、大手色のない珍しい工具屋なのかもしれません」と上茂信吾社長は自社の生い立ちを説明する。独自色の強い社風だからこその柔軟な設計が評価され、幅広い業界で使用される工具(図1)の製作を担当。毎月1,000 種以上の工具を出荷している。特に航空機業界で同社は信頼が厚く、いくつかの機種のエンジン回りの切削に使われる工具のシェアは信和精工製が100%を占める。つまり、同社が安定して工具を供給できなければこれらの大型飛行機の製造も止まってしまうのだ。
図1  幅広い業界からの支持を受けるオーダーメイドの工具(写真提供:信和精工)

図1  幅広い業界からの支持を受けるオーダーメイドの工具(写真提供:信和精工)

 同社は1989 年より鹿児島県薩摩川内市に川内工場を有しており、これがBCP 対策としても評価されている。同工場では何度かの増床を経て現在では恒温室を設けた第三工場まで稼働する。設計力・加工力だけに依存せず、それらを最大限に発揮できる環境設備にも力を入れている。

 そんな同社の保有設備面での大きな特徴に欧州製加工機の積極的な活用がある。1998 年には国内でいち早くドイツ・WALTER(ワルター)製のCNC 工具研削盤を導入。その後も日本製加工機とともにROLLOMATIC(ロロマティック)、ANCA(アンカ)などの海外製の加工機を多く導入してきた。これは当社の業務スタイルには絶対必要と判断したから」と上茂社長は強調する。

「当社と同業他社の大きな違いは『加工機それぞれのソフトウェアを100%使いこなす』ところ。パソコンのエクセル1 つとっても10%しか機能を知らない人と、100%の機能を知っている人ではできることの幅や深度がまったく違う。これと同じです。やはり欧州製の加工機が搭載するソフトウェアは頭1 つ分以上抜けた自由度があり、市場のCAD/CAM ソフトウェアに遜色のない、スムーズな設計と加工プログラムの作成ができる。活用しきることで他社が敬遠する形状や精度の工具も当社では製作できています」(上茂社長)。

最後の砦

 そして、数あるラインナップの中でも上茂社長が「この1 台がなければ事業が成り立たない」と太鼓判を押すのがドイツ・Schütte(シュッテ)製CNC5 軸工具研削盤335Linear(以下、335L)だ。以前から海外の展示会で注目していた機種で、ゴーショー(東京都豊島区)のブースで国内取扱いがあることを知ったことを機に、2010 年に305Linear(以下、305L)を導入。その後、同シリーズの325Linear(以下、325L、図2)を相次いで導入し、最新機である335L 導入に至る。
図2 325Linear

図2 325Linear

 335L は独自の軸構成と広いワークエリアでさまざまな方向からの研削が可能。またX、Y、Z軸にリニアモータを採用し、高精度な位置決めができる。しかし、機械構成よりもやはり上茂社長が注目するのはシュッテ独自のプログラムだ。

 305L と325L、335L に搭載される「SIGSpro」は、上茂社長いわく、ほかの欧州製加工機のプログラムより「さらに頭1 つ分抜けている」という。

「たとえば『ここに溝を入れて』という指示は当然、他社の研削盤のソフトウェアでもできる。しかし、SIGSpro はそこからさらにその溝に刃を付けるといったことをシームレスにそのままプログラム上で指示を出し、加工ができる。この小回りというか使いやすさはほかにはない。今までは砥石を入れる角度の調整や指示が難しく、場合によっては2 台、3 台と機械を変える必要があった加工などを1 台で高精度に完遂できる」(上茂社長)。

 使い勝手の良さを評価する一方で、上茂社長は課題も指摘する。「高機能だが輸入機であるがゆえに、修理が必要になった場合は、為替の影響などにより費用がかさむ場合がある」と海外製特有の運用の難しさを説明する。

「『導入し、活用するためにはユーザーも相応に研削加工や工具研削盤について理解しておく必要がある』ということをユーザーとして伝えたい。また優秀なオペレーターの確保と育成のための労力も必要です。シュッテの研削盤は万能に使うというよりは、どの機械にもできない加工を任せる1 台。当社にとって、まさに『最後の砦』。稼ぐための機械というよりは信和精工の信頼を守るための1 台です」と上茂社長はシュッテ製工具研削盤の運用のポイントを説明する。

今、必要な設備を入れる

 確固たる独自の選別基準をもって加工機の導入を進めている同社だが、設備更新の時期に差しかかっている。「いかに自社に最適なスペックをもつ機種を選別し、導入していくかが当社に限らず工具メーカーの課題なのではないか」と上茂社長は指摘する。

「研削盤などの加工機の進化は円熟期にあると思います。今までのようにただ新しい機械を入れれば生産性が上がった時代は終わり、自社がどのように稼ぎ、そのためにはどのような機械をどんな割合で更新・導入していくか。ここに慎重な判断をして、次の時代の現場をつくる必要がある」(上茂社長)。

 設備への深い理解と、それを使いこなす技術力。この2 つが、信和精工の競争力の源泉になっている。

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