icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

機械設計

2024.10.07

少数精鋭体制で顧客の期待を上回る高付加価値製品の提供を目指す―アタゴシステム

  • facebook
  • twitter
  • LINE

 アタゴシステム(長野県岡谷市、0266-23-9601)は、長野県内の大手メーカーを主要顧客として、専用機・省力化機器の設計・製作を行っている。近年は産業用ロボットや協働ロボットを使用した設備に注力し、さまざまな自動化案件を手がけている。社員数は12人と少数精鋭だが、部品やユニットの標準化を推し進めるなど設計や組立ての効率化に重点を置きながら、難易度が増す顧客要求に応えている。

商社から専用機設計・製作へ事業シフト

 同社は1988年に篠崎知明会長が工作機械・工場設備機器販売の商社として創業した。2003年に篠崎会長の娘婿で、現社長の佐久間茂雄氏(写真1)が入社すると、顧客の要望を受け、徐々に専用機・省力化機器の設計・製作へと事業をシフトしていく。佐久間社長は同社に入社する前は技術者としてモータの製造設備の設計に10 年間携わっていた。その経験を活かして、小型機器の設計から受注していったのである。2007年には専用機工場を開設して製作まで手がけられるようになり、2010年に現在の岡谷市内の工場(写真2)に移転している。今では専用機は同社の利益の約6割を占める事業となっている。
写真1 佐久間茂雄社長

写真1 佐久間茂雄社長

写真2 工場外観(写真提供:アタゴシステム)

写真2 工場外観(写真提供:アタゴシステム)

 工作機械・工場設備機器の販売は今も継続しており、同社の利益の約1割を占めている。「顧客から相談を受けた際には、要望に合わせて市販の工作機械と専用機のどちらを導入した方がよいのか、ベストな提案を行える」と佐久間社長は話す。また、「商社部門を持っていることで、自社の専用機に組み込む空気圧機器などの部品も問屋やメーカーから直接仕入れられ、他社と比べて安く入手できる」といったメリットがあるという。

 専用機と並んで同社が力を注いでいるのが、利益の約3割に至るまで成長している受託製造だ。製造品は環境調査機器。自社開発設備やカスタマイズした工作機械を用いて半自動で製造している。製造のほか、伝票発行や梱包・発送までを従業員2.5 人の体制で行っているため、「生産量の増加を見越して、現状、人が介在する工程を協働ロボットに置き換えて自動化するシステムを開発し、近いうちに立ち上げる予定」だという。

ロボットを使った自動化設備に注力

 専用機・省力化機器では、これまで搬送や加工、測定、検査、印字、組立て、梱包など、顧客の自動化要求に応える多種多様な機器を設計・製作してきた実績がある。その過程では、ロボットやサーボモータ、画像処理、高精度回転スピンドル、測定など多くの要素技術を培ってきた。変わった案件では、不定形物である粘度の異なる土砂を分級して、分級した土砂を指定重量パレットに排出し、多関節ロボットがふるいやパレットを自動交換するという装置を納入したこともある。

 ロボットを使った自動化設備は同社が得意とし、案件も増加している。2019年にはロボットを使用した複数の自社パッケージ製品も開発した。その1 つに可搬質量7 kg の多関節ロボットを天吊り配置し、走行軸を追加した複数装置向け搬送システム「ALS-10A」がある。安価に自動化ラインを構築したい、既存設備にロボットを取り入れたいといったニーズに応えるシステムだ。先述の自社開発の環境調査機器製造設備にも使用している(写真3)。「もともとは経験の浅い若手設計者でも取り扱いやすいように、ある程度完成したものを用意し、そこに機能を追加していくことをイメージした」(佐久間社長)。実際はコンベヤや検査機などの追加により大がかりな設備になるケースがほとんどだが、引き合いは多いという。
写真3 5 台の装置と連結したALS-10A(写真提供:アタゴシステム)

写真3 5 台の装置と連結したALS-10A(写真提供:アタゴシステム)

標準化を徹底して効率を高め、難易度の高い案件にも対応

「当社は少人数体制のため、専用機の営業範囲は車で片道1 時間の範囲とし、設計面では標準化を徹底している」と佐久間社長。空気圧機器や継手、センサなどの購入部品は、特定のメーカーの特定の型番を標準部品として登録している。使う部品が決まっていれば設計時に探す手間を省くことができるほか、標準部品として在庫しておけば、納入した設備が壊れたときの部品交換もすぐに行える利点がある。


 搬送などのユニットも標準化している。それらユニットを組み合わせると6~7 割は設備を構成できるようにし、設計効率を高めている。制御担当者も組立担当者も経験済みのユニットであれば、業務効率が上がり、ミスを減らすこともできる。設計から製作まで全体的なリードタイムの短縮につながっているのだ。「構想段階から、過去の実績をいかに流用してレイアウトできるかを考えている」と佐久間社長は語る。

 一方で、近年では設備に求められる機能が高まっている。例えば、多品種少量品の生産が進む中で、生産品種を変えるとき、生産情報をサーバーから2 次元コードで読み取って、機械が自動で段取り替えをしたり、生産品の測定データをサーバーに送ったりするシステムの構築である。ここでは、段取りレス、社内ネットワークへの接続、トレーサビリティへの対応がキーワードになる。

 ほかにも、マシニングセンタ(MC)にワークを供給して加工し、ワークを測定して、測定した平均値が狙い寸法に対してどれだけ差があるかを算出。そのデータをMCにフィードバックして切込み量を変化させ、一定の精度を保つというシステムが挙げられる(図1)。これまでPLC同士で接続していたものが、PLCとNCやPLCとパソコンを接続させるなど、制御面での対応が必要になっている。
図1  MCにワークを供給し、寸法検査後に補正値のフィードバックを行う装置(画像提供:アタゴシステム)

図1  MCにワークを供給し、寸法検査後に補正値のフィードバックを行う装置(画像提供:アタゴシステム)

 佐久間社長は「大変なことではあるが、人材不足で新規の技術者採用が難しい中、既存のメンバーで新しい技術の習得とリードタイムの短縮を両立させ、付加価値を高めていきたい」と今後の取組みを語る。

RELATED