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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2025.11.17

第19回 ジェネレーティブデザインを活用した設計はじめの一歩

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。

はじめに

 ジェネレーティブデザインは、近年多くの3 次元CADベンダーが提供し始めている新たな設計機能/設計手法である。3 次元CADの種類によってジェネレーティブデザインの定義や機能は多少異なるが、ユーザーが入力した条件などを基にコンピュータが合致する形状を計算し、最適な形状案を設計者に提供してくれるものである。 

 ジェネレーティブデザインで入力する条件は、設計上の制約、空間条件、荷重、拘束、材料、製造方法などがある。入力した条件を基に最適だと考えられる形状をコンピュータが提案してくれる。「CAD」は、「Computer Aided Design」を略したものであり、日本語に直訳すると「設計を支援するコンピュータ」となる。ジェネレーティブデザインは、まさにコンピュータで設計を支援してくれる機能だといえる。 

 ジェネレーティブデザインの登場により、3 次元CADは単なるツールではなく、設計者のパートナーにもなり得る。計算リソースや処理時間、精度など、さらなる進化や改善の余地を残した部分もあるが、新たな形状の検討やアイデアを立案する際に、設計者の助けになることは間違いない。今回は、ジェネレーティブデザインの概念やメリット、操作感、今後の可能性について紹介する。

ジェネレーティブデザインの作業の流れ

 ジェネレーティブデザインの機能が提供されている3次元CADが登場してから、しばらく経過しているが、まだ触ったことのない設計者の方も多くいるだろう。「百聞は一見にしかず」である。筆者が保有するオートデスクの「Fusion 360」のジェネレーティブデザイン機能を使って、実際の作業の流れを紹介する。 

 Fusion 360 のジェネレーティブデザインでは、設計に求められる必要最低限の形状を用意し、荷重や拘束、目的、製造方法、材料などの設計仕様を入力すると、その条件を満たした多数の設計案が自動生成される。今回は「椅子」を題材に、ジェネレーティブデザインの作業の流れを説明していく(図1)。
図1 オートデスク「Fusion 360」ジェネレーティブデザイン操作画面例

図1 オートデスク「Fusion 360」ジェネレーティブデザイン操作画面例

1. デザインスペース(図2)

 はじめに椅子の機能として最低限必要な形状(保持ジオメトリ)と、形状を生成させない領域(障害物ジオメトリ)などのデザインスペースを設定する。 

 保持ジオメトリとして、椅子の脚、座面、背もたれ、肘掛け部分の3 次元モデルを用意し設定する。地面と人が座るスペースを障害物ジオメトリとして設定する。そのほか、今回は設定しないが形状を生成する開始形状を設定することも可能である。また、対称の設定を行うことも可能である。
図2 椅子のデザインスペースを設定している例

図2 椅子のデザインスペースを設定している例

2.荷重と拘束(図3)

 次に、荷重と拘束を定義する。座面と背もたれ、肘掛けに荷重(力)を定義し、脚に固定拘束、さらに今回は重力も定義する。荷重と拘束の定義は一般的なCAE の構造解析の設定と似ている。椅子に想定される荷重のタイプと位置、方向を設定する。Fusion 360 では、さまざまな方向からの荷重を設定できる。ジェネレーティブデザインの場合、反力をイメージして設定し計算させることで良い結果が生成される場合もある。基本的な考え方として、拘束している箇所と荷重を加えている箇所がつながって形状が生成されるのをイメージすると良い。
図3 椅子に荷重と拘束を設定している例

図3 椅子に荷重と拘束を設定している例

3.デザイン基準(図4)

 結果を満たす必要がある最適化の目標や制限などのデザイン基準を指定する。今回は、安全率の目標値を設定した。ほかにも、質量ターゲットや変位を入力することもできる。次に製造条件を設定する。「制限なし」、「積層造形(3Dプリンタ)」、「フライス加工」、「2 軸切削」、「ダイカスト加工」などが設定できる。製造条件をあらかじめ指定しておくことで、製造上無理の少ない形を計算して提案してくれる。積層造形の設定では、積層方向や最小肉厚やオーバーハングの角度などを設定できる。フライス加工では、工具の方向、最小直径、首下長さなどが設定できる。
図4 安全率と製造方法を設定している例

図4 安全率と製造方法を設定している例

4.マテリアル(図5)

 続いて、プラスチックやアルミ、ステンレスなど、使用するマテリアル(材料)を設定する。材料によってヤング率やポアソン比などの物性値が違うので、生成される形状が変わってくる。設定したマテリアルと製造方法の組合せが生成されるアウトプットの総数になる。
図5 材料を設定している例

図5 材料を設定している例

5.生成

 ジェネレーティブデザインの計算(生成)を開始する前に、「プレビューア」機能を使って、出来上がる領域を確認する(図6)。障害物ジオメトリの設定に間違いないか、椅子に座る部分や地面に形状ができていないかを確認し、問題がなければ計算を開始する。ここで補足説明だが、Fusion360 の場合、計算や生成された形状のエクスポートをするには、クラウドクレジットまたは拡張機能を購入する必要がある。教育機関ライセンスを申請して使用している場合には無料で使用可能である。
図6 プレビューア機能による領域確認の様子

図6 プレビューア機能による領域確認の様子

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