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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2025.11.17

第19回 ジェネレーティブデザインを活用した設計はじめの一歩

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

6.検討(図7)

 計算が終了すると、複数の設計案が表示される。今回、筆者の設定では、112 個の設計案がコンピュータから提案された。安全率や質量、応力などを比較する。比較する際にはグラフで見比べたり、形状を並べて表示したりしながら検討することが可能である。採用する設計案を決めたらエクスポートを行う。エクスポートには、メッシュデータとソリッドデータの2 つの選択肢がある。そのまま3Dプリントなどを行う場合にはメッシュデータ。CAD機能を使用して形状を追加修正していく場合には、ソリッドデータを選択する。

 ソリッドデータでエクスポートした場合、生成された形状がフォームモデルとなっているため、フォームモードで編集が可能である。フォームモードで曲面を修正して、ソリッド機能で形状を追加したり除去したりのハイブリッドモデリングでの修正が可能である。形状の修正が終わったら、さらに、シミュレーション機能を使用して、構造解析や熱流体解析などを実行し、詳細な設計検討、加工性や組立性の検討などを進めていく。 
図7 ジェネレーティブデザインで生成された椅子の検討画面の例

図7 ジェネレーティブデザインで生成された椅子の検討画面の例

 以上が、Fusion 360 のジェネレーティブデザイン機能の作業の流れになる。ジェネレーティブデザイン機能について、イメージすることができただろうか。設計として必要な形状を複数用意し、その間を条件に合わせてつなげてくれた。ジェネレーティブデザインは、今回のように“空間をつなげていく”ということができる。また、開始形状を指定して“塊から不要な部分を削っていく”という検討も可能である。 

 Fusion 360 のジェネレーティブデザイン機能は、複数の設計案を出力できるのが特徴である。その一方で、Fusion 360 には「シェイプ最適化」と呼ばれるシミュレーション機能もあり、ジェネレーティブデザインのように複数の設計案を提示してくれるわけではないが、入力された条件を基に、コンピュータが該当形状を最適化してくれる機能もある(図8)。いわゆる「トポロジー最適化」という機能である。
図8 Fusion 360 の「シェイプ最適化」を実行した例

図8 Fusion 360 の「シェイプ最適化」を実行した例

ジェネレーティブデザインを使用するメリット

 ジェネレーティブデザインは、設計者が要求する製品性能を達成しながら、劇的な軽量化を実現できる。材料使用量を削減できるため、コスト削減にも貢献し、廃棄する際のゴミの量も低減可能となり、環境に配慮した設計が可能である。さらに、軽量化によるエネルギー効率の向上も期待できる。自動車や航空機などの開発において、ジェネレーティブデザインを適用した部品がよく採用されているのは、このような理由があるからである。
 
 ジェネレーティブデザインを使用することで、複数部品が組み合わされた構成部品(ユニット)を1 つの部品に統合することも可能である。使用する材料の量を減らすだけでなく、組立作業を減らすことにより、製造プロセス全体を簡略化できる。さらに、部品の統合により、在庫管理やサプライチェーンの合理化にもつながる。 

 ジェネレーティブデザインは、さまざまな製造プロセスを検討するうえで役立ち、最近では3Dプリンタでの製造と組み合わせた活用の検討が盛んに行われている。3Dプリンティング技術の特性を最大限に引き出すためには、「DfAM(Designfor Additive Manufacturing)」と呼ばれる設計の考え方に関するノウハウも不可欠である。例えば、3Dプリンタを使用することで、必要な部分のみを残してほかはラティス構造にするなど、内部の構造をより軽くするような複雑な形状の設計が可能となり、設計の自由度も確保できる。

設計者として必要になること

 ジェネレーティブデザインは、単に設計者が思い付かないような革新的な形状や設計案を導き出せるだけでなく、製品や部品の軽量化、ユニットの統合、異なる材料や製造方法などの検討を行う機会を得ることができ、設計においてさまざまなメリットを見いだせる。製造コストを含めた収益性やエネルギー効率の目標も達成できるのである。 

 一方で、ジェネレーティブデザインが提案してくれる形状が必ずしもデザイン性や使いやすさに優れているとは限らない。軽量化や耐久性の要件は満たしていても、デザインとしての魅力や使い勝手が不十分な結果が得られる可能性もあり得る。設計者はジェネレーティブデザインから生成された形状を、正しく比較検討できる能力が必要となる。 

 ジェネレーティブデザインは、さまざまな形状を設計者に提案してくれるが、最後に決定するのは人間である。コンピュータからの提案に基づいて、設計者は自分なりの設計案を考え、これまでにない新たな構造を検討するなど、その先の創造的な作業につなげていくことが重要となる。 

 ジェネレーティブデザインが形状案を考えてくれている間に、設計者は、市場調査や機能設計などにより時間をかけ、より良い製品を設計するための重要度の高い業務に時間を割くことができる。設計段階で、その製品の性能やコストの大部分が決まる。決定するうえで、ジェネレーティブデザインは非常に有効なツールになり得るのである。これからの設計者は、今まで以上に環境に配慮しながら、革新的なモノづくりに挑戦していかなければならない。これを機に、ジェネレーティブデザインを活用した設計に取り組んでみてはいかがだろうか。
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