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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2026.01.09

第21回 3Dプリンタ活用に欠かせない3次元データ作成のポイント

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

3Dプリンタの性能や特徴に合わせた設計

 ここまで、3Dプリンタで造形する際、考慮すべき基本的な設計の考え方について解説してきたが、3Dプリンタを試作用途で使用する場合に忘れてはならないのが、“設計しているモノが最終的にどんな加工方法で製造されるのか”である。3Dプリンタによる造形がゴールであれば問題ないが、例えば、最終製品として金型を用いて射出成形する、あるいは切削加工で削り出すといったような場合、設計する3 次元データは、その最終的な加工方法でつくれる形状でなければならない。3Dプリントするために、形状を分割したり、勾配を付けたりすることは必要な作業だが、最終的な加工方法を意識した設計を忘れないようにしてほしい。

 3Dプリンタは何でもパーフェクトにできる万能の機器ではない。どの機種の3Dプリンタにも得意な形状、不得意な形状がある。設計者は、「DfAM(Design for Additive Manufacturing/付加製造のための設計)」と呼ばれる3Dプリンタの性能に合わせた適正な設計力が求められる。製品に取り付けるための部品を3Dプリンタで製造した際、期待通りの強度や精度が出せずに満足できないことがあるかもしれない。切削加工やプレス加工、射出成形といった従来工法でつくる形状とまったく同じカタチのままでは、3Dプリンタを最大限に活用した設計とはいえず、その効果も限定的なものになってしまう。

 3Dプリンタの特徴である積層造形による重力の影響や表面/内部の状態などを理解し、適正な形状を考えるDfAMのスキルを身に付ける必要がある。最近では、適正に3Dプリントできるかシミュレーションできるソフトウェアもある。トポロジー最適化やジェネレーティブデザインなど、コンピュータが最適な形状を提案してくれる技術やラティス構造の3 次元モデルを作成するソフトウェアも日々進化している。

 DfAMのスキルを身に付けるためには、実際にいろいろなパターンを自分で試してみることが何よりも重要である。Web で検索しても、あまり情報は得られないかもしれないが、海外のWebサイトや3Dプリンタメーカーに相談することでヒントが得られるかもしれない。「3Dプリンタだけでつくる」という発想を変えて、後処理(2次加工)として切削加工を施して高精度なモノをつくるなど、技術を組み合わせて実現の方法を模索してみるのもよいだろう。3Dプリンタで樹脂形状を作製し、金属の部品を圧入や接着して使用する例もある。

 3Dプリンタでつくる部品の品質、コスト、時間だけを、従来工法と比較するとメリットを感じられない場合があるかもしれない。しかし、設計から製造、組立て、保守管理といったプロセス全体として考えた場合には、従来よりも大きなメリットが得られる可能性がある。単純に出来上がった部品だけで判断するのではなく、評価する視点を適切に持ち、3Dプリンタの活用効果を見定めるべきである。

3Dプリンタを活用できる人材を育成するコツ

 3Dプリンタを1 人に1 台与えるのは極端な例だが、より良い製品を生み出し、品質向上、コスト削減、納期短縮を実現し、次につながるイノベーションを創出できる、そんな製品開発の現場を目指すのであれば、好きなタイミングで3Dプリンタを使用できる環境を構築すべきである。トライ&エラーを何度も繰り返すことで設計力は向上する。特に、新人や若手の設計者にとって、3Dプリンタは失敗を経験して成長できる有効な教育ツールになり得る。決して初めから、高価な3Dプリンタである必要はない。安価な3Dプリンタから導入して活用していくというアプローチでもよい。

 受託造形サービスの利用は非常に有効だが、サービスに依存しすぎてしまうと社内に3Dプリンタの活用ノウハウがたまらない。自社で安価なものでもよいので3Dプリンタを保有し、いろいろとトライできる環境を整えることをオススメする。安価な3Dプリンタの場合、精度や品質は落ちるが、材料費も安く、使い方によっては、デザイン検証だけでなく、組立性やはめ合いなどの設計検証にも活用できる。積層方向やサポート材の付け方による影響など、3Dプリンタの基本概念を十分に学ぶことが可能である。

 ぜひ、設計者のために“遊び場”をつくってあげてほしい。そこから創造的な発想が生まれ、新たなイノベーションにもつながるかもしれない。少しの余裕が、設計者を次のステージへと成長させていくことだろう。
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