機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」
2026.01.09
第21回 3Dプリンタ活用に欠かせない3次元データ作成のポイント
いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記
おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。
はじめに
3Dプリンタを選定して導入はしたものの、造形するための3 次元データをうまくつくることができずに、3Dプリンタをうまく使いこなせず、使わなくなってしまうことがある。今回は3Dプリンタで造形するために必要な3 次元データを作成する際の注意すべき基本的なポイントについて解説していく。
3次元データのファイル形式
3Dプリンタで形状を造形するには、3 次元データが必要である。これは通常の紙を印刷するプリンタが文章データや画像ファイルを必要とするのと同じである。3次元データを作成するには、3次元CADのほか、3DCG、3Dスキャナなどを使用する(図1)。
図1 3 次元データを作成する方法には、主に3 次元CAD、3DCG、3Dスキャナがある
今回は、主に寸法を定義しながら設計を行う3次元CADを用いた3次元データ作成について取り上げる。設計データが存在せず、現物しかないという場合には、3Dスキャナで現物をスキャンし、3 次元データを作成することも可能である。また、3DCGツールを用いてコンピュータ画面上で粘土細工をつくるような感覚でフィギュアなどの有機的な形状(3 次元データ)をつくり上げることもできる。
3 次元データといってもいくつかの種類がある。代表的なものとして、ワイヤフレーム(線)、サーフェス(面)、ソリッド(塊)、ポリゴン(メッシュ)の4種類がある。
一般的に3次元CADで作成するのは、ワイヤフレーム、サーフェス、ソリッドの3 種類であるが、3Dプリンタで造形するには、「STL」というポリゴンデータに変換する必要がある。STL以外のファイル形式には、AMFやPLY などがあるが、今回はSTLについて詳しく説明する。
STLとは、もともとは3Dシステムズが開発したファイルフォーマットで、“Standard TriangulatedLanguage”の略称である。基本的には曲線はなく、直線で構成された三角形の小さな面の集まりで立体を定義するポリゴンデータの一種である。
一般的な3 次元CADには、STLファイル形式に変換出力する機能が搭載されている。ただし、ここで注意すべきポイントとして、“STL は直線で構成された三角形の小さな面の集まりである”ということである。つまり、3 次元CADで作成した形状を小さな面の集まりに分割するわけだが、この分割の設定を粗くしすぎると、円だった形状が多角形で出力されたり、微細な形状が表現されなかったりするなど、元の3 次元データと大きく乖かい離りした形状の造形物ができてしまう可能性がある。特に、造形品質や精度を重視する場合は注意が必要である。
3 次元CADからSTLファイルを出力する際は、オプション設定などを確認し、できるだけメッシュの解像度を高くして出力した方がよい。ただし、解像度が高すぎると、場合によってはデータ量が大きくなり、3Dプリンタで読み込めなかったり、転送や読み込みに時間がかかったりすることもあるので注意が必要である。
一般的な3次元CADの中には、メッシュの解像度を高/中/低の3 段階から選べるものや、パラメータを手動入力できるものなどがある(図2)。なお、前者であれば、最初は「高」で出力して様子を見て、不都合があるようならば「中」⇒「低」と下げていくとよい。
図2 「Fusion 360」でSTL出力している様子
3Dプリンタで使うSTLは“閉じたポリゴン”である必要があり、線だけの情報や厚みのない面だけの情報では3Dプリントができない。中身の詰まった(体積情報を持っている)ソリッドデータをSTLに変換出力する必要がある。3Dプリンタの中には読み込んだファイルのエラーを確認できる機種もあるが、そのまま造形してしまうと元の3 次元データと違う形状ができてしまう場合があるので注意してほしい。
ほかにもSTLファイルのエラーには、三角面の間に隙間が空いてしまっていたり、厚みがなかったり、面が反転していたり、面が重なっていたりなどがある。これらのエラーは3次元CAD上で修正できる場合もあれば、STLファイルを修復する専用ソフトが必要になることもある。
前述したように、3Dプリンタで読み込む3次元データにはSTL以外のファイル形式もある。ご自身で3Dプリンタを使用される場合や外部に造形を依頼する際は、トラブル回避のためにファイル形式をきちんと確認してから進めてほしい。