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機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」

2026.06.17

第9回 量産移管に向けて信頼性評価で大切なポイント

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技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児

ふせ ゆうじ:代表 1989 年4 月、旭硝子(現・AGC)入社、パソコン用ハードディスク向けガラス基板の加工技術開発、営業などに従事した後、液晶用のガラスを扱う事業部に異動となり、液晶用ガラスの梱包容器/梱包材料の設計開発を17 年以上担当。途中、1 年半ほど知財部兼務となり、特許戦略構築、出願推進活動も経験。2023 年4 月、同社を早期退職。現在は中小企業の技術支援や組織改革支援、セミナー講師として活動中。(一社)製造業総合支援 副代表。資格:上級心理カウンセラー[(一社)日本能力開発推進協会]。

はじめに

 図1 に示すように、量産検証が終了すると、設計開発の手を離れ量産工程に進むことになる。量産工程に進むにあたっては、作業標準書やQC工程表から、商品によっては顧客との間の仕様書や保守契約などさまざまなドキュメントの整備が必要になる。実際に量産時に必要なドキュメントは品質保証部や製造部などが取りまとめることが多い。しかし、まったくの新商品などは設計開発部隊が中心になって他部門と共同で決めていく必要がある。特に品質管理項目に関しては、設計開発部隊では量産移管に向けて信頼性評価を行い、その結果を確実に品質管理基準に反映させることが大切になる。
図1 一般的な設計開発のフロー

図1 一般的な設計開発のフロー

信頼性設計

1. 信頼性設計と品質管理との関係

 筆者が長年担当していた液晶用薄板ガラスの梱包容器の信頼性設計と評価、およびその結果を品質管理へと反映させていくイメージを図2 に示す。ガラスの梱包容器といっても、輸送するガラスは2 t を軽く超える重量物である。一方、それを運ぶ梱包容器(パレット)は300~400 kg 程度の金属からなるものである。輸送時にはそれを何段か重ねて輸送する形になり、輸送中に容器が倒壊するようなことがあれば大惨事である。よって、信頼性では強度評価がメインとなる。強調試験で故障モードのデータを積み上げ、リスク評価を行い、製品仕様や品質管理に反映させていくのである。
図2 ガラスの梱包容器での信頼性設計と品質管理の関係図

図2 ガラスの梱包容器での信頼性設計と品質管理の関係図

2 .設計開発のレベル、内容に応じた信頼性評価 

 まず、設計開発のレベルに応じてリスク評価をどうするか考える必要がある。設計変更で、しかも本来の機能に影響しなければ図面変更で済ませられるものから、いわゆる新商品で信頼性評価が欠かせないものまでレベルはいろいろである。実際には過去の評価結果をどこまで活用できるかを考え、どのレベルで実施するのかを決めることになる。設計変更であっても、レベルに応じてFMEA(故障モード影響解析)のみにするなど、人も時間もない中で信頼性評価を進めるにあたっては、信頼性評価をどこまで実施するかが非常に重要になる。

3.基本設計/基礎開発での信頼性設計

 基本設計/基礎開発の段階では、第4回で紹介したようにFTA(故障の木解析)によるリスク評価が有効である。FMEAは仕様が明確でない中で想定を重ねていくため、時間がかかる割には効果が薄い。強度評価はシミュレーションが基本になる。最大応力を調べ、クラックが入った場合にどの程度強度が下がるのかなどのシミュレーションを行う。

4.量産検証での信頼性評価

 (1)強調試験 
 量産検証では実際に強調試験で強度評価を行う。落下試験や水平衝撃などの衝撃試験や振動試験などJIS で決められているので、それに準じた評価をするのが望ましい。しかし、JIS 規格は2 t 以上の重量物を運搬する容器(パレット)を想定した規定になっていないため、実輸送での加速度データなどから、強調試験条件を自社で設定して評価していくことになる。具体的に言えば、輸送中にかかる加速度データなどからフォークリフトを使った自由落下評価を想定回数分行うなどである。 

 ランダム振動試験も2 t 以上の重量物を評価できる装置がないため、実際に工場内の道路に小さな板を並べ、トラックで走ってもらったり、港のガントリークレーンを借りて、実際にコンテナを船に積み込む際の疑似強調試験を行ったりすることもある。 

 強調試験で得られる最大の効果は、実際に容器のダメージがどのように出るのかを確認できることであると考えている。FMEAで故障モードを想定し、リスク評価をしていくが、その際のベースとなるデータが得られる。筆者がつくっていたものは単純な構造体であったが、いろいろな機能を持った機械設計においても、同じような考え方ができると考えている。

 (2)FMEA 評価 
 量産検証の場合、やはりFMEA評価は必要である。実際に試作を通して確認できることはごく一部である。試作で問題なしとなった場合でも、量産に移行した後で不具合が発生することはよくある。FMEAも人が想定して評価するため、完全とは言えないが、やるのとやらないのでは大違いである。管理項目の考え方も整理されるため、そういった点でも非常に有効である。 

 しかし、FMEAは想定次第で結果はいかようにでも変わってくる。故障モードなど強調試験の評価結果から適切に見積もって反映させることも大切である。また、複数の部署のメンバーで協議しながら想定範囲を少しでも広くとることが大切になる。 

 そのため、FMEAをしっかり実施しようと思うとスケジュール調整だけでも大変になる。また、網羅的にFMEAを行おうとすると範囲が広く、十分に議論するとなると時間がかかるのが常である。 

 十分協議するのが時間的に難しくても、筆者は、対象を絞ってでもしっかり協議することが大切だと考えている。具体的には、基本設計􀃶基礎開発でピックアップした重大クレーム案件に対してFTAやロジックツリーの展開で部品レベルまで展開した内容について、改めて部品レベルの潜在的故障モードや潜在的故障の影響、発生頻度、検出可能性など、しっかり協議を行うのである。そのイメージを図3に示す。FMEAの結果をQC工程表や量産運営に必要なドキュメントに確実に反映することも無論大切である。
図3 FTA/ロジックツリーとFMEAの組合せ

図3 FTA/ロジックツリーとFMEAの組合せ

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