機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」
2026.06.17
第9回 量産移管に向けて信頼性評価で大切なポイント
技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児
品質管理への適応
上記のプロセスを経て確立した管理基準は、すべてFMEAやFTAも含むシミュレーションや強調試験にすぎない。実際に市場のデータ(実績)と照合し、シミュレーションの結果を改めて確認することが大切である。既存品の改良版などであれば、すでに市場に出ている既存品の実績を使えばよいが、まったくの新商品であれば、ある程度、市場に商品が出回ったところで改めて確認する必要がある。
したがって、図2 に示したように、信頼性評価に関しては量産後も市場の実績と突き合わせ、信頼性評価の精度を上げることが大切になる。
1.故障率のバスタブ曲線1)
参考文献1)によると、運転開始後しばらくの間は事故や故障が多い。これは設計、製造、据付などの作業要素の中で潜在していた不完全な部分が使用、運転によって顕在化するからである。この過程で発生する故障を初期故障という。
安定期に入ると故障は比較的少なく、初期に検出できなかったもの、あるいは偶発的要因によるものが主体で、故障率は時間的にほぼ一定になる。この間の偶発的に発生する故障を偶発故障という。
時間の経過に伴い、機械的素子や部品においては、摩耗、変形が起こり、電気的素子においては絶縁性の劣化、パラメータ値の変化などにより性能の劣化が始まる。この過程で発生する故障を摩耗故障という。いわゆる寿命によるものである。摩耗による故障率は時間の経過とともに増大する。
故障率を縦軸にとり、時間を横軸にとると風呂の形に似ているためバスタブ曲線と呼ばれる(図4 参照)。
2.摩耗故障期に向けての品質管理の完成
初期故障の原因は顧客での使われ方、試用環境の調査不足が原因であることが経験上ほとんどである。したがって、対策として使われ方や環境要因が変えられなければ、何らかの追加策を講じる必要がある。
しかし、摩耗故障は商品そのものの劣化であるので、それが出現するまでの時間を有効に使い、管理基準の完成度を上げていくことが大切である。そのうえで、ガラスの梱包容器のように、顧客と工場を何回も往復するような製品は、工場での品質管理をしっかり行う必要がある。
設計審査(クロージング)で大切なこと
最終的に設計開発の手を離れ、量産移管する際には、決裁者参加のもと、設計審査会議が開催される。通常、100%目標通りに設計開発が終了することはない。例えば管理項目の精度を上げるなど、課題が残るのが通例である。全体会議で残課題を整理したうえで、クロージングを行うことが大切である。
設計検証を延長するか、そもそも開発を中断するか、量産移管に移行するのか、決済者に判断を仰ぐ会議であるが、当然、決裁者には事前に説明しておくことが大切になる。量産移管に移った場合には残課題および担当を明確にすることが大切である。残課題が明確でないと、そのままの流れで開発が担当することになり、いつまでも抜けられない事態に陥りかねない。前述の品質管理のように、設計開発が量産後も担当した方がよいものもあるが、品質保証や製造とも協議しながら進めるのが望ましい。
また、製造や品質保証で完成度を上げていった方がよい案件は、設計開発は手を引き、次の設計開発業務に臨むべきである。
まとめ
・強調試験は過負荷を加えた場合、製品のダメージがどのように出てくるのか直接確認できることが効果として大きい。その結果をFMEAのリスク評価に反映させることが大切である。
・FMEAは管理項目の考え方を整理するうえでも非常に有効である。ただし、リスクを想定していくため、その精度により結果が変わってくる。想定している範囲内でしかリスクは洗い出せないため、複数の部署、複数の目で想定範囲を広くとることが必要不可欠である。
・FMEAは時間がかかるのは事実。現実問題として、複数の部署で全部品を網羅的に検証する時間がとれなければ、FTAで想定した重大クレームの発生工程、発生部品に絞ってFMEAを改めて実施することを推奨する。
・FMEAも強調試験もシミュレーションにすぎない。実際の市場データと照合する作業が必要である。既存品の改良程度であれば、既存品の結果を用いればよいが、まったくの新規品であれば、やはり、量産移行後の市場実績と照合する必要がある。
・商品の故障は、初期故障は顧客での使われ方や使用環境の調査不足が原因であることがほとんどであり、何らかの追加対策が必要になる。信頼性評価は、商品そのものの性能の維持管理のためであり、時間が経過した後に発生する摩耗故障期に向けて完成させることが大切になる。
・設計審査(クロージング)では残課題を明確にすることが大切である。
次回は設計開発を効率良く進めるためにリーダーが果たすべき役割について考えていきたい。
参照文献
1 )久米均:設計開発の品質マネジメント、日科技連出版社(1999)、pp.103-104