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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2026.01.16

第21回 若手技術者がグローバルに活躍するのに英語教育は第一優先か

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FRP Consultant 吉田 州一郎

よしだ しゅういちろう:代表取締役社長。東京工業大学工学部卒業後、Fraunhofer Instituteでのインターンを経て、同大大学院修士課程修了。繊維強化プラスチック関連の技術指導や支援を企業に行いながら専門性鍛錬を行う一方、技術者に特化した育成事業を法人向けに展開。自らの10 年以上にわたる研究開発と量産ライン立上げ、国内外企業連携によるプロジェクト推進の経験を踏まえ、繊維、機械、化学などの企業の研究開発現場での技術者育成の指導、支援に尽力。福井大学非常勤講師。
若手技術者戦力化のワンポイント
「若手技術者をグローバルに活躍させたい」場合、「相手企業で主に用いられる言語を基本とした最低限の技術専門用語/文法の習得と、相手企業を技術提案でけん引することを見据えた、技術業務の実践経験を積ませる」

はじめに

 技術系の仕事であっても、海外の企業や研究機関、組織や個人と仕事をすることは今や珍しくなく、さらには日系企業においても外国籍の技術者も増えるなど、若手技術者に対しグローバルに活躍してほしいというニーズは今まで以上に高まりつつある。日系企業であっても海外企業の資本が入る、海外企業でも日本に法人を設立し、場合によっては研究開発機関を日本に立ち上げるなど、ますます海外企業は近い存在になってきたといえよう。このような流れを受け、若手技術者のうちからグローバルな働き方に対応できる育成を行いたいという、企業からの要望は当然のものとなっている。 

 前述の時代環境を踏まえ、多くの企業ではグローバル化に備え、“英語教育”に力を入れているようである。例えば経団連のHPでは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という指標を引き合いに、英語教育の改善とその方向性について専門家の意見を紹介している1)。しかしながら、企業における若手技術者育成を念頭にグローバル化を見据えた場合、本当に英語教育が第一優先かについて疑問を感じている読者の方もいるのではないだろうか。 

 今回は、若手技術者がグローバルに活躍するために必要な教育を考えたい。

若手技術者戦力化のワンポイント 

 「若手技術者をグローバルに活躍させたい」とリーダーや管理職が感じた場合、「英語にこだわらず、相手企業で主に使われる言語での技術専門用語と基本文法の習得を基本に、相手企業に対する具体的な技術提案でけん引できるよう、グローバル技術言語力の鍛錬に加え、目前の技術業務について当事者意識を持って真摯に取り組むことを徹底させる」ことを通じ、国籍の異なる相手企業と技術議論を通じた信頼関係構築の基礎固めを行う。

技術者が理解しておきたいグローバル化の意味 

 改めてグローバル化という単語について考えたい。筆者は“国に対する区別意識が薄くなる”ことが、この単語の意味だと考えている。グローバル化という単語は、各技術者が業務を推進する環境として、国の違いという意識が低下する環境変化を示すものであり、語学はその状況を促進させる一要因である一方で、技術者にとっては異なる観点も持てるのではないだろうか。 

 技術者にとっては、技術がすべての基本にある。よって、技術者がグローバル化の流れをうまく活用するには、感情論ではなく技術論、特に普遍的スキルの一つである“グローバル技術言語力”2)を活用し、技術的な討議を行いながら協業、そしてともに前進するという考え方が肝要だ。語学習得だけでなく、ここで述べた技術者ならではの観点を持つことが、技術者がグローバル化の意味を理解することに直結する(図1)。
図1  技術者にとってのグローバル化は語学だけでなく、数学を活用した技術理論を土台とした技術討議を通じた協業に対する理解が肝要

図1  技術者にとってのグローバル化は語学だけでなく、数学を活用した技術理論を土台とした技術討議を通じた協業に対する理解が肝要

海外を目指すことが目的になってはいけない 

 グローバル化の話を進める際、留意すべき点に触れておきたい。それが“海外を目指すことの目的化”である。マスメディアで報道されている昨今の海外首脳の発言に限らず、筆者自身の前職での海外での研究開発/量産立上げ経験、ならびに同様の顧問先での業務支援経験でも痛感しているのが、程度の差はあれ“保護主義”が基本にあるという紛れもない事実だ。 

 各国は大なり小なり自国民、そして自国企業など、自国のものを保護する。日本も例外ではない。よって、海外は日本国内では考慮の必要がないリスクまで考えることが求められる。小売業のように物を売ってお金を得るというやりとりだけであれば、与信リスクや品質問題に関するリスクはあるものの、売れれば基本的には手を離れるだろう。しかし、技術者、特に研究開発のようにお互いの知恵や知見を出しながら、新しいものを生み出していくとなると、その主なやりとりは技術要素になる。このため、知財権による争いや、その共同研究開発の費用折半に関するもめ事など、法務関係の経験の浅い若手や中堅の技術者であれば、始める前から避けたくなるような範囲にも目を配らなくてはならないのだ。これが保護主義のもと、海外企業と仕事をすることなのだ。 

 一方でメリットもある。例えば業界によって該当する技術が得意な企業があるとしよう。同等の企業が日本にない、または日本だと小回りが利かない大企業しかないという状況であれば、海外における当該技術を有する企業と組むのは妥当な判断だろう。 

 このようにグローバル化につながる海外進出は、それ自体が目的なのではなく、リスクとメリットをてんびんにかけて後者が大きい場合、必要に応じて推進するものだ。

グローバル化に向け若手技術者に必要な育成ポイントは2つ 

 ここまで述べてきたことを前提として、グローバル化に向けた若手技術者の育成を考えたい。ポイントは大きく分けて2点ある(表1)。
表1  グローバル化に向けた若手技術者育成のポイント

表1  グローバル化に向けた若手技術者育成のポイント

 一つ目は“技術専門用語の日本語以外での単語表現と文法の習得”だ。技術専門用語は、読む、話す、書くのどれを行うにしても技術議論の必須部品であるため、理屈抜きで覚える必要がある。文法も同様に、どのようなやりとりをするかによらず不可欠な知識だ。どのような言語も、文法というルールに基づいて用いられているからだ。 

 二つ目は、目前の技術業務の実践経験の蓄積だ。これは日本国外の技術者とやりとりする際、“技術的な判断とその合理性を示せる技術的背景の提示”が重要になることによる。そして当該提示に含められるべき最重要の要素が、「具体的な技術提案」である。抽象的な表現は論外だが、参考書の情報、べき論や理想論を基本とした技術提案は、グローバルという土台で技術業務をするにあたって無価値といっても過言ではない。現実を直視し、実現可能性のある具体的な技術提案こそ価値がある。このような具体的な技術提案を可能にするのは、日々の技術業務に対して真摯に取り組んだという実践経験しかない。実践経験に裏付けられた具体的な技術提案は、相手企業からの信頼獲得のきっかけとなる。 

 以上のように、グローバル化に向けた若手技術者育成を考えた場合、技術専門用語の日本語以外での単語表現、ならびに文法の習得と目前の技術業務の実践経験の蓄積を基本にすることを、リーダーや管理職、ならびに人材育成担当者は理解しておきたい。次にグローバル化の一例として、“自社にない技術を有する海外企業と共同研究開発を行う”という想定で、それぞれの点についてもう少し深掘りする。
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