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機械設計 連載「若手技術者戦力化のワンポイント」

2026.09.24

第31回 理系学生時代のインターン経験は若手技術者に必要か?

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FRP Consultant 吉田 州一郎

研究室生活で理系学生が心がけたいこと 

 これは本記事の主な読者であるリーダーや管理職、または人材育成担当者にとっては参考までの情報だが、理系学生が技術者の普遍的スキルを高めるにあたり、研究室生活で心がけるべき姿勢について触れておきたい。 

 概要をまとめると表2 のようになる。まず大学3 年までのように、勉強するといったことは研究室生活ではあまり重要ではないことを理解すべきだろう。実験や試験ができる環境にもかかわらず、勉強という閉鎖的なことに時間を使うのはあまりにももったいない。同じ理由で文献調査もそれほど重要ではない。文献調査方法や学術論文の読み方を理解することは必要だが、調べるということに時間を使っても、前出の普遍的スキル向上にあまり効果がない。指導教官や研究室のメンバーとの討議はもちろん重要だが、理系学生でよくある“文献の情報だけで議論する”といったことを避けることが肝要だ。あくまで、自身の手足を動かして得られた結果について、討議をするという癖を理系学生にはつけてほしい。もちろん、これらについて理論構築が最重要の理学系の学生はこの限りではなく、工学系の学生を想定してのことである。
表2  理系学生が不偏的スキルを高めるにあたり、 研究室生活で心がけるべきことの重要性とその ポイント(主に工学系の場合)

表2  理系学生が不偏的スキルを高めるにあたり、 研究室生活で心がけるべきことの重要性とその ポイント(主に工学系の場合)

 最も重要なのは実際に手足を使っての実験や試験だろう。情報系であればプログラムをつくり、それを走らせるというのも同じだ。頭でっかちにならず、実際に検証してみようという実行動を起こせる癖がつけば、学術業界はもちろん、産業界でもその力を発揮できるようになるだろう。

企業に属する技術者は”組織的な活動”と”技術と無関係な仕事”から逃れられない 

 ここまで述べてきた大学(院)の研究室生活とは異なり、一度企業に属してしまうと環境は一変する。企業というのは資本主義の世界の中で維持発展するため、売上げと利益の目標を達成しながら組織で活動することが求められる。これは個をつぶす考えだという論調も見られるが、ずば抜けた感性を有する技術者を除き、「個の考えを押し通して企業に貢献できるような成果を出すことは至難の業」だろう。個の考えを強く主張できる傑物のような技術者は極めてまれである。企業組織にとってあまり意味のない個の考えにこだわりを持つよりも、周りとも連携しながら、技術報告書や技術評価計画書といった書類も活用し、常に周りを巻き込みながら技術業務を進めるのが、技術者の基本姿勢でなければならない。 

 企業組織の運営には、理系学生が将来技術者として勤務を始めたときに“無意味な雑用”と感じるような、技術と無関係な仕事も多い。ただし、このような業務を避ける、いわゆる“主観的な業務選定”は技術者本人の成長を遅らせる。企業に所属した後は、研究室生活をいったん忘れ、組織として求められることにまい進することが肝要だ。 

 ここまでの話により、研究室と企業組織は大きく異なることを認識できたと思う。ここから、インターンの話に入る。

インターン参加の目的についての再考 

 改めてインターン参加の目的について考えてみたい。インターンを受け入れる企業側の目的は冒頭でも触れた通り、採用可否判断の一助にしたいといったところだろう。ここではあえて“理系学生の目線”から考えてみたい。筆者の考える理系学生にとってのインターン参加の意義は、大きく分けて二点あると考えている。 

 一点目は“民間企業で働きたい理系学生の求める経験の獲得”だ。既述の通り、研究室生活と企業での生活は大きく異なる。仮に理系学生が学術業界よりも、産業界で働きたいと考えた場合に生じるであろう疑問が、「民間企業での日常とはどういうものなのか」ということだろう。このような疑問の答えを見つけるためには、実際に体験することが望ましい。そう考えれば、理系学生がインターンに参加したいと考える動機になるだろう。 

 もう一点が“学術業界に進むか否か悩む学生が、進路決定判断の参考にする”ことだ。前出の例に比べて、民間企業への就職に迷いがある状態とも言える。学術業界は個人プレーが許されるという、技術者にとって望ましい側面もある一方、安定した研究予算獲得のためには、常に高いレベルで学会発表や学術論文の執筆を続けることが求められ、民間企業の正社員よりも厳しい要求にさらされることが多い。長期的な目線で見た場合、自分は産業界と学術界のどちらに進むべきか迷うこともあるだろう。その場合、民間企業の雰囲気を知るという意味で、インターン参加の意義は十分ある。 

 前述の目的を理系学生が有しているのであれば、筆者もその後押しをしたい。その理由は、「インターン参加が理系学生の“能動的な判断”によるもの」だからだ。しかし、実際にはそうではないケースも多いのではないだろうか。

インターン参加は強制されるものであってはいけない 

 では昨今のインターン参加の実情はどうだろうか。本記事の冒頭でも述べた通り、いまやインターン参加は“就職活動の一部”となってしまっている。すなわち、「民間企業への就職の可能性のある理系学生にとって、インターン参加は“半強制的なもの”」という表現もできるのではないだろうか。理系学生は本人が望むか望まないかは別として、インターンに参加することが就職に有利であるという認識から、“参加しなければ”という流れに巻き込まれている。このことが近年のインターンに関して、筆者が否定的な考えを持っている理由でもある。インターン参加の期間は、貴重な研究室生活の時間を“奪っている”。 

 既述の通り、研究室生活は理系学生が将来技術者として身につけるべき普遍的スキルを醸成する“貴重な環境”である。それを企業都合で奪うということは、技術者育成の観点からも本末転倒だ。企業は、理系学生には研究室生活に没頭することを強く推奨すべきで、必要以上に理系学生の時間を奪ってはいけない。

 

自身のインターン経験と技術者としてのスキルとの関係 

 ここまで理系学生にとってのインターンと技術者育成について、それぞれのポイントや関係性を述べてきたが、最後に筆者自身の経験を述べさせてもらいたい。 

 最初に述べておきたいのは、筆者はもともとインターン賛成派であることだ。ただし、それは強制されるものではなく、理系学生自身が望めばという前提がついている。筆者自身も“自らの希望に基づき”、学生時代に8カ月のインターンを経験している。より具体的には欧州における4 カ月の現地語の語学研修と、8 カ月の現地インターンという計12カ月のプログラムだった。大学を卒業し、入学が決まっていた大学院を休学して実行に移した。 

 当時の筆者は学術界に残るのか、産業界に進むのか最後まで悩んでいた。そのため、インターンでは何かしらの結果を出し、自分に企業で勤務する適性があるかを明らかにしたいという、危機感にも似た感情をもって参加した。インターンに参加した直後からさまざまな提案をし、受け入れ先の上司に挑戦をしたいと直談判し続けた。しかしながら提案はことごとく却下され、結果を出すどころか、それにつながるような仕事さえ与えられなかった。それに対して疑問をぶつけたところ、当時の上司に言われたのは、「提案をすることは重要だ。しかしそれ以上に重要なのは、言われたことをやってもらうことだ」ということだった。当時の筆者は強い失望を覚えたと同時に、自分の無力さを痛感した。 

 このときの経験が後に企業に勤務する技術者として活きたのは、「自分に何が求められているか、相手の意見を先に聞き、それを理解する」という“俯瞰的に”自らを見つめる視点を得たことだった。これは、技術者の普遍的スキルの一つとなる“論理的思考力”の原点だ。 

 これは一般的なインターンと異なり、研究室からいったん離れ、長期にわたって企業組織に入るという特殊な経験だったかもしれない。しかし、自らの進路を学術界にするか、産業界にするかを本気で悩み、その解決の糸口になるかもしれないと感じたインターンに挑戦したことで、今につながるスキルのきっかけを得られたのは有意義だった。 

 ここで述べたのはあくまで20 年以上前の元理系学生の思考の例にすぎない。だが、理系学生時代のインターンが若手技術者に必要か否かという企業都合の考えを押し付ける前に、当事者である将来の若手技術者になる理系学生の気持ちや考えの理解が必要ではないかと感じたため、個人的な経験を取り上げた。

まとめ 

 題目にあった理系学生時代のインターン経験が若手技術者に必要か、という問いかけに対する万能解はない。それを理系学生が望むのであれば必要であり、そうでないならば無理強いしてはいけないというのが、今回読者に伝えたい点である。加えて、昨今のインターンを就職活動の一部に盛り込むという企業都合とも言われかねない考えの強要は、結果的に理系学生が研究室生活で体感すべき貴重な経験を奪うことにもなりかねない。 

 技術者として企業で活躍することを本気で願うのであれば、理系学生には研究室での研究活動に没頭してもらうことを最優先に考えるべきだろう。これを現段階での、理系学生時代のインターン経験は若手技術者に必要かという問いかけへの筆者の答えとしたい。
参考文献
1 )共同通信社“大学3年夏の就活開始もインターン情報活用で合意 産学、要請受け政府容認”、WEB労政時報(2022)https://www.rosei.jp/readers/article/82862、( 参照2026-01-08)
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