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2026.05.15

<視察リポート>タイ高専インターンシップ タイ産業を引き上げる高度エンジニア育成への挑戦(後編)

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 タイ初の高専として2019年に開校したKOSEN-KMITL。タイ政府と日本政府の支援で設立されたエンジニア育成機関だ。同校のインターンシップは日本の高専とやや異なり、産学連携と課題解決型学習(PBL)の色合いが濃い。学生の卒業研究とも連動した長期プログラムを受け入れているのは、現地に根づいてさまざまなものづくりを手がけている多くの日系企業たちだ。インターンシップ生受け入れから採用までを一連で行い、将来の中核エンジニアとして育てようとしている企業側の声を聞いた。
(※肩書きなどは取材時の情報)
(日刊工業新聞社コンテンツ企画部 篠瀬祥子)

AIや自動化、学生が手応えを感じるテーマ設定

 Fujikura Electronic Componentsは、パソコンや監視カメラ、ドローンなど向けの電子ワイヤや、ハードディスク用アクチュエーター、電子機器や自動車など向けのメンブレンスイッチ、データセンター用熱ソリューションなど各種電子部品を製造しており、ナワナコンとランプーンの2拠点で、計4500人が働いている。金型製造や関連治具、専用機開発まで手がけるなど、技術領域は広範囲にわたる。

 同社ではタイ高専のインターンシップを、2024年から2回、実施してきた。学生受け入れを担ったのはモノづくりのデジタル変革(DX)を担うイノベーティブマニュファクチャリング・ユニットだ。学生の感心が高い自動化やAI(人工知能)活用など最新テーマを積極的に掲げた。同ユニットゼネラルマネージャーのパリヤ氏は「教員陣と相談し、学生が有意義な成果を上げられるものを考えた」と学生が手応えを実感できるテーマを心がけたという。

 また継続的に学校でのイベントに参加するなどして、教員陣とのネットワークが深まる中、学校でのPBLの講座プログラム実施に発展した。ロボットアームを使った材料のピックアップや、AIビジョンによる検査認識方法などをテーマとし、学生が研究発表を行った。

 こうした取り組みを積み重ねている中で、今年は3名の入社が決まった。同社の芹澤孝治社長は、自らが沼津高専から長岡技科大へと進んだ経歴もあり、高度エンジニア輩出の可能性を秘めるKOSENの存在に期待を寄せる。同社へ入社した学生には、「大卒や修士号取得の機会を提供し、キャリアパスを明確にしていく。中核エンジニアとして活躍していってほしい」と力を強める。
Fujikura Electronic Componentsの社屋

Fujikura Electronic Componentsの社屋

左から2番目が芹澤社長(肩書きは取材当時の情報)

左から2番目が芹澤社長(肩書きは取材当時の情報)

高専とWin-Win関係を築く

 SIAM KUBOTA Corporationは、トラクターやコンバインなどの農業機械、ディーゼルエンジンなどをタイの2拠点で現地生産し、東南アジア諸国連合(ASEAN)周辺国などにも輸出し高いシェアを獲得している。KOSEN―KMTILとの交流が2023年からスタートし、幹部メンバーが学校を訪問し教育プログラムなどの視察会を実施した後、24年にカリキュラムの改変協力などを含んだ覚書(MOU)の締結へとつながった。インターン受け入れもこの流れで実施している。

 インターンが課題で取り組むテーマは、塗装工程での異常検出のためのAI活用、梱包工程の検査システム、輸出用物流システムの生産性向上など各部署の現場からあがってきたビジネス上の技術課題が掲げられた。学生の興味や将来取り組みたいテーマとマッチングし、卒業研究まで続けてもらい、学生からの相談にも随時のる体制を整えている。

 同社アマタ工場人事課長のSongwut Pasandhanatorn氏は「KOSENインターンシップ受け入れは、お互いにWIN-WINではないか」と語る。高専生がリアルな課題解決の経験を積める場になるのと同時に、企業側にとっても、実践的なカリキュラムが充実し訓練されている高専生からの高い提案力は学びが多いという。また「高専生は責任感が強い学生が多く、より真剣に取り組んでくれている」と評価する。
アマタ工場人事課長のSongwut Pasandhanatorn氏(右)

アマタ工場人事課長のSongwut Pasandhanatorn氏(右)

 24年に1人入社したほか、今年は2人採用が確定している。今後は、モノづくりの現場と管理部門のかけはしになれる人材としてKOSEN出身者の活躍が期待されており、研修制度のこれまで以上の充実などをはかっていく。
アマタ工場人事課長のSongwut Pasandhanatorn氏(右)
ナワナコン工場敷地内には、クボタのロゴ入りユニフォームなどを売るブティックショップ(上)や、コーヒーチェーン「CafeAmazon」(下)が入る

ナワナコン工場敷地内には、クボタのロゴ入りユニフォームなどを売るブティックショップ(上)や、コーヒーチェーン「CafeAmazon」(下)が入る

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