タイ初の高専として2019年に開校したKOSEN-KMITL。タイ政府と日本政府の支援で設立されたエンジニア育成機関で、日本の高専と同様のカリキュラムのもと学生が学ぶ。ただインターンシップは日本とやや異なり、産学連携と課題解決型学習(PBL)の色合いが濃い。卒業研究とも連動した実践的なプログラムが特徴だ。現地の様子を訪ねた。
(※肩書きなどは取材時の情報)
(日刊工業新聞社コンテンツ企画部 篠瀬祥子)
実装型PBL人材育成を展開
バンコクの玄関口・スワンナプーム国際空港からほど近く。KOSEN-KMITLの2025年にできたばかりの校舎は明るいカラーリングが印象的で、新設校らしい活気に満ちている。メカトロニクス、コンピューター工学に加え、電気電子工学科が加わり3学科体制となった。学生は全員が寮生活を送り、授業料などすべてタイ政府奨学金で賄われている。
厳しい選抜を通過したタイ人学生たちは、英語で専門科目の授業を学びつつ、日本語も習得する。タイ産業を次の段階へ引き上げる高度エンジニアとして、また海外企業の投資を呼び込む存在として、期待が大きい。
新校舎が2025年にオープン (KOSEN-KMITL)
インターンシップはセメスターブレイクと呼ばれる学期の合間である10月に1カ月間実施され、全員が参加する。事前に企業から現場課題に沿った大まかな技術テーマが提示され、学生は自らの関心に応じて応募する。25年度は58社が受け入れを表明し、40社でマッチング。その多くが日系企業であり、将来の中核人材としてKOSEN出身者への期待が高まっている。
特徴的なのは、1カ月の実習で終わらない点だ。学生は企業課題を踏まえ自分の研究テーマをこの期間に見付け、その後の卒業研究へとつなげていく。企業・学生・指導教員の三者でPBLを進める構図で、日本の1週間や2週間といった短期型インターンとは一線を画す。
取材時に話を聞いた女子学生は、インターン先の日系企業をそのまま就職先に選んだ。「継続的にサポートを得られたことが大きかった」と振り返る。現場との関係性が、そのまま進路選択に結びついている。
メカトロニクス学科の赤塚元軌先生は「学生はインターンシップで企業現場での必要なスキルを理解し、その後の学びに前向きになる」と効果を語る。タイでは欠員ベースの採用が多く、実務スキルが重視される点も背景にある。
同学科では、タイでのファクトリー・オートメーション分野の需要を踏まえ、CADやPLC(プログラマブル・コントローラー)の実践教育に力を入れる。課題を素早く理解し成果を出す学生への企業評価は高い。
3学科の学生が学ぶ校舎内部(KOSEN-KMITL)
新たなパートナー企業探し
一方で、KOSENの存在や同校の認知はまだ発展途上にもあり、受け入れ企業の開拓は重要なテーマだ。企業開拓を担う成清勝博先生は「受け入れ企業の窓口からはじまって学生が就業する現場のタイ人スタッフへの理解と丁寧な調整には、努力が求められる」と明かす。
電気電子工学科でも4年生が誕生している。PBL型のインターンシップをともに進める新たなパートナー企業の発掘と開拓が積極的に進められている。
左からメカトロニクス学科の赤塚元軌先生、インターンシップ関連を担当する成清勝博先生、関根光一先生(肩書きは取材当時の情報)