型技術協会が主催する「型技術ワークショップ2025 in にいがた」が2025 年11 月27 日、28 日の2日間で開催された。1 日目は新潟市中央区にある「朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター」にて金型加工や成形技術、積層造形、デジタル技術に関する論文発表のほか、地元企業・団体などから講節を招いた講演が行われ、297 名が会場に足を運んだ。2 日目は新潟県内のモノづくり企業を巡る全4 コースの工場見学会が行われた。
型技術ワークショップ2025 in にいがたが開催された朱鷺メッセ
工場IoT システムの内製化を実践
1 日目は実行委員長を務めた三条市立大学の川﨑一正教授が開催の挨拶を行った。新潟県には精密加工や金属プレス加工などモノづくりに不可欠な基盤となる高度な技術やオンリーワン技術を有する企業が多い地域であることに触れ、そのうえで、「このワークショップを新しい型技術のスタートの場として、新たなアイデアやイノベーションを生み出すきっかけにしてほしい」と述べた。また型技術協会会長の高谷裕浩教授(大阪大学)も挨拶を行った。
オープニング講演では、ブルボン先端研究所先端工学技術研究室の大西慶室長が「工場IoT の内製化とその後の展開」と題して講演を行った。
同社は自社開発した製造設備で構成される菓子製造ラインで工場IoT の導入を進めるにあたり、主に機能面やコスト面の理由から市販のソフトウェアを用いるのではなく、社内でIoT システムを内製化することを決断。大西氏が独学で学んだプログラム言語のPython の知識や、小型マイコンボードのRaspberry Pi などの活用によって現場の収集データを可視化する「IoT 集計ツール」や、菓子生地の測定結果をIoT データとして保存する「秤IoT」、収集データによる製造設備の自動制御など、実際に現場で活用される工場IoT の事例について紹介した。
オープニング講演では他業界の取組みから金型製作技術に活きる可能性があるポイントを探った
地場産業と最新金型・精密加工技術に関する話題を提供
2 つの特別講演では、新潟県醸造試験場の青木俊夫場長が「新潟の日本酒」、米谷製作所(新潟県柏崎市)の米谷強取締役相談役が「自動車のつくり方の変化」と題してそれぞれ講演を行った。青木場長は、新潟で日本酒づくりが広がった背景や酒造技術の伝承に向けた取組みなどについて話した。米谷強相談役は、この10 年間の国内外の自動車産業の変遷をたどりつつ、その中で自動車産業が国際政治の影響を強く受けたことについて触れるとともに、中国などを中心に開発が進むギガキャストの取組みがあくまで生産者側の論理で語られ、ユーザーが置き去りにされている現状へ提言を行った。
特別セッションで「にいがたから世界へ、型技術の最前線」をメインテーマに、共栄エンジニアリング(新潟県阿賀野市)営業課の伊藤孝夫シニアエキスパートが「ミクロンの世界を制する金型技術~微細はつらいよ~」、とモノコミュニティ(浜松市中央区)の荒井善之テクニカルコンサルタントが「データ連携により本領を発揮する3D 設計、DX を実現するための環境構築に向けて」、新潟県工業技術総合研究所の山田佳奈主任研究員が「CAE と機械学習によるプレス金型設計の効率化にむけた取り組み」と題して講演。高精度加工や効率化にむけた視点を提供した。