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展示会

2025.07.16

<展示会レポート>プラスチック・ゴムの新展示会「台湾国際プラスチック・ゴム原料と複合材料応用展」 台湾・台南で初開催(後編) 

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 グリーン産業化を推し進める台湾では、プラスチック使用削減に向け、アジアの中で最も先進的な規制実施が計画されている。2030年には使い捨てプラスチックの全面的な製造販売、輸入の禁止に向け、段階的なアプローチが進んでいる。こうした中で、台南市で初開催された「台湾プラスチック・ゴム・複合材料と加工技術展(PMT)」では、サステナブルな材料開発技術や、デジタルソリューションによる見える化技術、サプライチェーンの連携策など、積極的な提案が目立った。(日刊工業新聞社 篠瀬祥子)

電動式射出成形機 精密かつ省エネ加工を可能に

 会場内で全電動式の射出成形機を展示していたのが、地元の台南市を拠点とする大手の富強鑫精密工業(FCS)。台湾で上場する唯一の射出成形機専用メーカーだ。全電動タイプ「CT‐e」シリーズ(写真1)は、グローバルでトレンドとなっている電動式の仕様。「6年前の発売以来、欧州や東南アジアなどグローバルで評価されている機種」(高銘陽エリアマネージャー)で、油圧式に比べ大幅な省エネ効果が期待できる。サーボモータコントロールと制御システムを組み合わせた統合システムを特徴とし、電子部品や医療機器、食品や化粧品包装関連などの加工現場で採用されている。21.5インチのタッチスクリーンで、稼働状況や使用電力量などが見やすく工夫されていた。
写真1 全電動タイプの「CT-e」シリーズを紹介

写真1 全電動タイプの「CT-e」シリーズを紹介

 そのFCSグループなどの射出成形機用に自動取り出しアームロボットを開発しているのが、台中市を本拠地とする金爪機械工業(TENSO MACHINERY)。同社の取り出しロボットは、パナソニックのサーボシステムに加え、減速機はニデックと日本メーカーのものを使用。さらに「独自のラックアンドピニオンシステム機構で、安全で精度が高く、メンテナンスで機械を止めずに使用できる耐久力を兼ね備える」(陳柏均キーアカウントマネージャー)。ユニークなのが、台湾国内に12台あるというメンテナンス車を展示していたことだ(写真2)。交換頻度の高い部品などを常備しており、最終ユーザーに向け、きめ細かなアフターサービス体制を持つことをアピールしていた。
写真2 メンテナンス車がいち早くかけつけて迅速なサポートを行うという

写真2 メンテナンス車がいち早くかけつけて迅速なサポートを行うという

産学官をつなぐ政府系機関 技術支援をリード

 会場内では台湾政府系の研究機関の展示も目立った。財団法人プラスチック産業技術開発センター(PIDC)は、台湾経済省と民間企業との半官半民で台中市にて設立された研究機関。プラスチック関連の品質改善のための研究、リサイクル関連技術の開発、分析評価やサステナビリティマネジメント、関連の人材育成などを手がけている。台湾のプラスチック産業は9割以上が中小企業であるため、研究開発や分析、人材関連など技術面でのサポートする組織として中心的な役割を担っている。

 PIDC技術研究発展部の張修誠経理(写真3)は、「継続的にサステナブルな生産を推進していくためのサポートを増やしていきたい。日本とも産学官とパートナーシップを深めていきたい」と強調する。2017年に、金沢工業大学の革新複合材料研究開発センターと連携協定を締結。日本側のシミュレーション技術と台湾での製造ノウハウを組み合わせた展開などを行っているという。
写真3 PIDCの張修誠経理は、台湾プラスチック産業のグリーン化をサポート

写真3 PIDCの張修誠経理は、台湾プラスチック産業のグリーン化をサポート

 またこのほかにも、リサイクル炭素繊維部品を組み合わせた無人飛行機(ドローン)などを展示していた財団法人紡績産業総合研究所(TTRI、写真4)や、複合材でつくられた風力発電用タービンを樹脂と繊維に分解する技術とその再生利用技術を展示していた財団法人工業技術研究院(ITRI、写真5)など、政府系研究機関の最新の技術展示が目を引いていた。
写真4 TTRIはリサイクル炭素繊維などを開発

写真4 TTRIはリサイクル炭素繊維などを開発

写真5 ITRIは複合材の分解技術を展示

写真5 ITRIは複合材の分解技術を展示

デジタル統合システムで導く スマート製造

 コンパクトな展示会場の中でも、小さなブースながらスタートアップ系企業が集まるゾーンが展開されていた。特に台湾の強みであるIT関連の意欲的な挑戦が感じられた。

 その中の一つ、普克科技(新北市)は、製造業向けのデジタルマネジメントシステム「SKYRIMインテリジェントマネジメントプラットフォーム」を紹介。APIを使用して、統合業務パッケージ(ERP)や製造実行システム(MES)などに接続し、生産計画、金型試作、資材管理、消費電力の傾向分析などさまざまな動態監視での利用を見込む。AI(人工知能)が搭載されており、機械のメンテナンス時期などをあらかじめ教えてくれるなど最適生産をサポートする(写真6)。半導体関連の工場などで採用実績があり、プラスチック関連にも広げていきたいという。担当のScott Chao氏は「台湾の製造業にも2代目の経営者が増えてきている。新しい考え方を取り入れたいという経営者達に広く発信していきたい」と力を込める。
写真6 AIで最適生産をサポート

写真6 AIで最適生産をサポート

 2021年に設立されたという立特(ZIG)は、デジタルツイン、エネルギー管理システム、ESGのための炭素会計システムなどの見える化を早期に実現するシステムを提案(写真7)。どの設備やシステムが対象であっても、見える化の部分を個別にプログラミングするのではなく、すでにモジュール化されたパッケージで提供している。このため、「数週間でかつリーズナブルに、デジタルで統合されたスマート製造システムが構築できる」(担当のFRANK CHANG氏)。表示されるデータパネルはユーザーがドラッグ&ドロップする直感的な操作で、変更することができるという扱いやすさが特徴だ。
 
 台湾では自転車製造やエレクトロニクス系などで実績を積んできたが、今後は日本を含む海外市場の開拓を見据えている。
写真7 ZIGはNVIDIAがAIのエコシステムを拡大させるための取組みの一環としてスタートアップを支援するNVIDIA INCEPTIONプログラムにも選ばれているという

写真7 ZIGはNVIDIAがAIのエコシステムを拡大させるための取組みの一環としてスタートアップを支援するNVIDIA INCEPTIONプログラムにも選ばれているという

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