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機械設計

2025.09.08

「ものづくりのための、ひとづくり」を支援する総合教育プログラム「CAE ユニバーシティ」―サイバネットシステム

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 サイバネットシステムは1985 年、日本で初めてシミュレーションソフトを取り扱う代理店として設立以来、Ansys のさまざまな解析ソフトウェア製品群を中心に、CAEおよび関連サービスを提供してきた。2007 年には、「ものづくりのための、ひとづくり」をキーワードに、シミュレーションを有効活用できる真のCAE 技術者の育成を目標とした総合CAE 教育プログラム「CAE ユニバーシティ」を開始。特定のCAE ツールに依存せず、多彩な講座で体系的に学べることが大きな特徴だ。毎年1,000~1,500 名が受講し、2024 年までの研修受講者は24,319 名にのぼる。近年はAI・機械学習講座など、最新の知見を含めた講座の充実化を進めている。

CAE 教育の課題を解決する教育メニューを提供

 1990 年代以降、自動車・自動車部品や電機、精密機械などの設計開発の現場でCAE の導入が広まり、同社もCAE ツールが備える機能の説明や操作トレーニングを実施して、現場での活用が円滑に進むようサポートをしてきた。一方で、ユーザーからは、「ツールの操作はできるようになったが、解析結果をどう解釈して、意味づけを行えばよいか」、さらには「想定外の結果にどう対処すべきか」、「大学で学んだ知識は解析に応用できるのか」といった声が多く聞かれるようになってきた。

 このような状況を踏まえ、CAE ツールのオペレーション教育とは別に、個々の技術者が解析に関する理論面から学ぶことで応用力を養い業務に活かせるよう、基礎から発展までレベル分けされた講座を自身の習熟度に合わせて受講できるようにした教育プログラムがCAE ユニバーシティである。CAE ユニバーシティは、同社製品のユーザーに限定したり、製品の導入を促したりするようなものではなく、受講料を払えば誰でも参加できることが大きな特徴だ。

「CAE を活用した設計開発業務を推進したくても、教育の仕方や体制の構築が課題となっている企業は多い」と語るのは、デジタルエンジニアリング事業本部エンジニアリング統括部技術支援部の李明篤副部長(写真1)だ。大企業であればCAE 推進部門があって社内教育を担っている例もあるが、特に中小・中規模企業では専任の推進担当者を置くことができず、「どのようなCAE 教育を実施すればよいのかわからない」、「教育を実施したものの、効果があがらない」、「教育の準備やフォローアップが大変」といった課題をかかえている場合が多いという。
写真1 李明篤副部長

写真1 李明篤副部長

 同社では、CAE ユニバーシティによる定期開催の講座のほかにも、企業の要望に合わせて講座を組み合わせて実施する「オーダーメイド研修」や「管理者向け研修」、分析ツールを用いて設計現場におけるCAE 環境や設計基礎力を客観的に評価し課題抽出などを行う「CAE 環境分析」、オンライン専用講座の「e ラーニング」といった教育メニューを提供しており、社内のCAE 教育プログラムにそれらのメニューを組み入れている企業もある。

実験/実習で解析の基礎を学ぶ定期講座

 CAE ユニバーシティの定期講座は、「構造」、「振動」、「流体」、「伝熱」、「電磁気」、「公差」、「機械学習/物理数学」の7 分野と全分野共通の知識が得られる「共通」が設けられている。それぞれ「基礎」、「実用」、「発展」の3 つのレベルに分かれており、全部で30 以上の講座がある(図1)。
図1 CAEユニバーシティの講座一覧

図1 CAEユニバーシティの講座一覧

 各講座は各分野を専門とする大学の先生や、熟練の技術者が講師を担当し、1~2日間で学ぶ内容となっている。CAEユニバーシティ事務局の岩岸久美子課長(デジタルエンジニアリング事業本部エンジニアリング統括部技術支援部技術6 課)(写真2)は、「どの分野の講座でも実験/実習を通して理論を学ぶことに重きをおいている」と話す。
写真2 岩岸久美子課長

写真2 岩岸久美子課長

 岩岸課長が1 番にお勧めしているのが、「共通」の分野の「実用」レベルの講座である「CAE 実験室-構造力学編」だ。CAE を有効活用するためには、解析結果を評価・検証することが重要だが、CAEを使い始めたばかりの技術者は、解析結果と実現象の一致を期待しがちで、誤差が生じることで「やはりCAEは使えない」と決めつけてしまうケースも少なくない。そこで、この講座では、実験結果と解析結果が「一致しない」ことを前提に、これらの差をどのように捉えて、どのような議論を展開すればよいのかを実践する。V&V(Verification & Validation)の考え方に基づいて、解析の「正しさ」と「妥当性」を明確に区別し、それぞれを確認するための手続きを解説する内容となっている。

 この講座では、3~4名程度のグループに分かれて、簡単な実験機材を使った「はりの曲げ実験」を行う(写真3)。はりの支持条件などを変更しながら実験を進め、ここで得られた測定値と手計算した解析値を比較しながら、誤差が生じる要因について考察する。分野に関係なく、解析のベースとなる考え方を学べる講座として受講者からの評価が高いという。この講座は企業での勤務経験や企業との共同研究の実績がある設計開発実務に精通した大学の先生が講師を務め、半期に3~4 回、同社で定期開催しているほか、企業での出張開催にも対応している。
写真2 岩岸久美子課長
写真3 「CAE実験室-構造力学編」受講の様子

写真3 「CAE実験室-構造力学編」受講の様子

 また、この講座に関連した「CAE 実験室-構造力学実践編」では、解析とは何かを理解した後に解析を実務にどう活かすかを学ぶ。ここではCAEツールを使って前述の実験を再現することによって数値解析サイドから見直しつつ、さらに実務への応用を理解する内容となっている。このような「CAE 実験室」は、「振動」、「流体」「伝熱」、「電磁気」の分野にも用意されており、それぞれ実験/実習ベースで学ぶことができる。

 近年ニーズが高まっているのが「管理者(評価者)向けCAE 講座」だという。個別の企業向けの講座で、「CAE 実験室-構造力学編」をベースに、評価者側の視点を解説する。実験または実験報告書をもとに、考察と議論を行い、個別CAE依頼時や評価時のポイント、CAEの品質管理などを学ぶことができる。また、機械設計者を対象とした「設計者のためのCAE 最短入門講座」も提供している。設計者CAEに必要な考え方から、解析テクニック・陥りやすい間違いまで、実務にすぐに使える内容を半日で学習できる。

 近年充実化を進めているのが「機械学習」の分野。基礎レベルの「はじめてのCAE代替モデル構築~CAE によるデータ生成から機械学習まで~」では、これから機械学習を始める人向けに、データセットの作成方法や精度向上の考え方を中心に、機械学習の基礎的な活用方法を解説する。実用レベルの「機械学習代替モデル構築~物理サロゲートモデルのはじめ方~」では、機械学習をどのように有効利用すればよいのかPython による演習と解説を通じて学ぶことができる。用意するデータの精度と結果の関係性や、目的とする精度を期待するためのデータ量について解説する。2025年後半には、CAE エンジニアのためのAI データサイエンス実践講座も開始する予定だ。
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