プラスチック・ゴム材料と加工技術の展示会「台湾国際プラスチック・ゴム原料と複合材料応用展(PMT)」が6月初旬、台湾・台南市で初開催された。アジア太平洋のプラスチックに関する最新の産業交流を目的に、台湾で最も多くのプラスチック加工関連企業が集まる台南で実施。出展企業は7カ国・地域から110社とコンパクトな規模ながら、材料、機械メーカー、関連システムや台湾政府系研究機関などバラエティー豊かにそろった。サステナブルな未来のため、スマート製造をはじめとした最新技術が発信され、台湾プラスチック産業の新たな息吹となった。(日刊工業新聞社 篠瀬祥子)
新材料とその製造技術にフォーカス
台湾の製造業で半導体、エレクトロニクスに次ぐ規模を持つのがプラスチック産業だ。PMTを主催したのは、台湾の展示会会社であるVenturap Conference&Exhibiton。開会式では、台南市政府を代表して趙卿惠副市長が挨拶し、プラスチック産業の国際的な連携の必要性などを強調した(写真1)。
写真1 台南市の趙卿惠副市長(左から8番目)らが参加したオープニングセレモニー
台湾は2024年のプラスチックおよびゴム機械の輸出額ランキングで世界第6位に位置する輸出国であり、東南アジア、欧州、北米や南米などを主要マーケットとしている。
PMTの関連団体である台湾プラスチック製品工業同業公会の黄英文副理事長(写真2)によると、台湾には材料や機械、加工メーカーなど7,750社があり、15万5,000人をこの産業で雇用しているという。同団体には、このうち大手企業を中心に700社が加盟。世界の中でも環境対応のため、先駆けてプラスチック使用規制を行う台湾政府の意向と、台湾プラスチック産業界との間に立つ重要な団体だ。産業界との橋渡し役として、スマート製造化の後押しや安全教育、海外市場開拓のサポートなどを行っている。
写真2 台湾プラスチック製品工業同業公会のメンバー。中央が黄英文副理事長
今回のPMTの会場となったICC TAINANは2022年にオープンした真新しい会場だ。台北から台湾高鐵(台湾版新幹線)で90~120分程度で到着する(写真3)。
黄副理事長は「材料から製造までの一連のサプライチェーンが台南で集まり、情報交換できるのは良い機会」とPMT開催の価値を語る。同団体の加盟企業の40%は台南エリアの加工企業などが占めているという。
台湾では射出成形機メーカーを主体に台北で開かれる大規模な展示会「TAIPEI PLAS」が有名だ。一方でPMTは材料関連や新素材とその製造技術にフォーカスして立ち上がった。
写真3 会場となったICC TAINANは台湾高鐵の台南駅からすぐの場所に立地
台湾のプラスチック産業を世界へ
台湾のプラスチック産業は、民生品からスタートし、電子部品などで成長し、近年は医療、航空宇宙関連など領域が広がっている。その一翼を担ってきたのが台南に多くある加工メーカーなどだ。台南市は1970年代以降、台湾政府の南部開発政策により、工業団地やサイエンスパークが整備され、化学・石油化学産業の集積地となってきた。
現在、化学品やプラスチック、食品など多数の事業を手がける台湾を代表するコングロマリット企業として有名な奇美(Chi-Mei)グループも、台南でのプラスチック加工で成功を収めたことが発展の礎になったという(写真4)。奇美が国際的に大きくなるにつれ、台南を中心に多くの関連加工業者や金型産業などの成長にもつながった。また、台湾のゴム関連では自転車や靴製造関連、電子機器部品などで台南や彰化、台中などに製造基盤が集積している。
写真4 台南市郊外にある巨大な「奇美博物館」の場所も元はプラスチック工場だったという
だが現在、プラスチックやゴムのみならず台湾の製造業全体で、ネットゼロ化に向かう海外マーケットにアピールできる強みを磨く必要に迫られている。追い上げる中国勢などとの競争激化が激しく、日本や米国などと並び最先端領域をいっそう追求するためのイノベーションの推進が急がれている。
伝統的なプラスチック加工の現場である台南で、こうした情報交流の場をつくることで、現地の産業に刺激を与えていくことを狙いとしている。
(後編に続く)