工場管理 連載「リーダーに捧ぐZ世代の新人育成バイブル」
2026.08.19
第6回 問題解決のスキル育成① 原因不明の問題を解決するスキルを高める
ジェムコ日本経営 古谷 賢一
ふるたに けんいち:本部長コンサルタント、MBA。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、地に足がついた活動をモットーに現場に密着。きめ細かい実践指導は国内外の顧客から高い評価を得ている。“工場力強化の達人”とも呼ばれている。おもな著書は『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)。
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「問題解決のスキル育成」の1 回目は、入社をして数年目といった若手社員に対して、どのようにして問題解決のスキルを教育すればよいのかを、「原因不明の問題を解決する」ことをテーマにして解説をする。生産現場では、問題なく生産ができるように日々努力をしていても、設備故障、品質問題、そして労働災害など、さまざまな問題が発生してしまう。
これらの問題が発生するたびに、なぜそれが発生したのか原因を追求して、問題の再発を防ぐための適切な対策を実施する、といった活動が行われる。しかし、容易に原因がわかることばかりではない。何が原因で発生したのか、よくわからないといった問題も少なからず発生する。このような「原因がよくわからない問題」を解決するためには、もちろん技術的な追求が必要だが、本稿では、個別の技術論ではなく、工場で働く若手社員がぜひとも身につけておきたい視点について解説をする。
知識の付与① 三現主義を徹底する
製造業のみならず、どの産業においても、問題解決の基本用語として知っておきたい言葉がある。それは「三現主義(さんげんしゅぎ)」だ。三現主義とは、現場、現物、そして、現実を重視して、問題解決や業務を遂行する趣旨で使われる言葉だ。
問題解決において、この三現主義は、実際に問題が起きた場所や関連する場所(すなわち現場)、実際に問題となった設備や仕掛品などのモノ(すなわち現物)、そして、実際に発生した問題を示すデータや物的証拠などの客観的な事実(すなわち現実)に基づいて考えることで、問題の本質を正確に理解し、効果的な対策を立案するための重要な視点になる。生産現場における問題解決は、根拠のない推測、思い込み、机上の空論にならないよう、具体的な事実に基づいた議論をすることが重要だからだ。
生産現場で何らかの問題が発生したとき、まず問題が発生した現場に行き、そして問題が発生した設備や原材料、仕掛品や製品などを徹底して観察し、そこから得られた事実をもとに、なぜ問題が発生したのか、どのような対策をするべきかを考えることが鉄則になる(図1)。
「原因がよくわからない問題」になってしまう背景には、現場に行って状況を正しく把握していない、実際の現物をつぶさに観察していない、あるいは、現場や現物から得られたデータや客観的な事実を冷静に直視していないことが挙げられる。まず、若手社員には、問題が発生したらすぐに現場に行き、徹底して現場の状況そして現物を確認し、データや事実に基づいた検討をせよと教えることが重要だ。
知識の付与② 論理的な思考を徹底する
論理的な思考とは、事実や根拠をもとにして筋道を立てて考えることだ。たとえば、「設備の内部に仕掛品が詰まった」ので、「設備内の搬送系の滑りをよくする」ように改善をする、といったことは、一見すると論理的に見える。モノが詰まるのだから、詰まらないようにモノの滑りをよくすることに違和感はない。しかし、これは論理的とは言いがたい。設備に仕掛品が詰まることと、搬送系の滑りが悪いことが、因果関係にあるかどうかはわからないからだ。そもそも、なぜ詰まったのかといった事実がわからなければ、適切な対策を論理的に考えることはできない。
「原因がよくわからない問題」になってしまう背景には、論理的に、事実や根拠をもとにして考えていないことが挙げられる。先の事例であれば、設備の構造や、設備の中での仕掛品の挙動など、事実や根拠を積み上げた結果、滑りが悪いことが詰まりの原因とわかれば、そこから導き出される対策は論理的に妥当なものとなるだろう。このように「根拠のない思考」ではなく、「論理的につながった思考」をする習慣をつけることが、原因がよくわからない問題に対する解決の糸口となる(図2)。
経験の付与を考える
生産現場には、「原因が比較的容易にわかる問題」もあれば、「原因がよくわからない問題」もある。いずれにしても、生産現場で発生するさまざまな問題に対して、「三現主義」と「論理的思考」ができるように、若手社員に経験を積ませることを考えるべきだ。
生産現場で問題が発生したならば、若手社員には三現主義を実践させてみることだ。まずは、ただちに現場に行かせて、現場の状態を確認させてみよう。生産現場の状態(明るさや音・におい、設備や人の状態など)を調べて気づきの力を高めるのだ。そして次は、問題となった設備や仕掛品、あるいは製品をつぶさに調査をさせる。ここでは、図面や仕様で定められた正しい状態と、問題のあるモノの状態の違いを徹底して調べ上げることがポイントとなる。問題のないモノと、問題のあるモノの違いを調べ上げることも有効だ。物理的には、寸分違わぬ生産設備、寸分違わぬモノ(原材料)、寸分違わぬ作業、寸分違わぬ条件で加工すれば、理論的には「まったく同じモノ」ができあがる。つまり、問題が発生するということは、何か通常とは異なる「変化点」が存在していることを意味している。
そして、現場・現物を徹底して調べ上げてわかったデータや客観的事実を明確にしつつ、論理的に問題の原因を考えていく。この訓練を繰り返すことで、若手社員の問題解決のスキルを高めることができる。
次回までの振り返り
本稿で紹介した「三現主義」と「論理的な思考」を、若手社員に対して実際に教育してみよう。まずは、生産現場で発生しているさまざまな問題に対して、三現主義に基づいて、どのような現場の状態で、どのような問題が発生しているのか、客観的にとらえる練習をさせて欲しい。これは原因がよくわからない問題に限った考え方ではない。日々発生している通常の問題に対しても、三現主義にのっとって考えるトレーニングは有効だ。そして得られた客観的事実をもとにして、原因がよくわからない問題に対して論理的な思考で切り込んでいけばよいだろう。
今月の検討課題
・知識の付与を行う
三現主義(現場・現物・現実)と論理的な思考を理解する
・経験の付与を行う
実際の問題で三現主義と論理的な思考の実践を行う