型技術 連載「田岡塾の集中講座」
2026.08.07
第1回 金型との関わりが私の「生業/最も楽しい趣味」に!
㈱タンガロイ、㈱狭山金型製作所、エリコンジャパン㈱ アドバイザー
田岡秀樹
たおか ひでき:元ホンダエンジニアリング㈱車体領域・執行役員。自動車用の大型プレス金型と生産技術開発、世界最速プレスラインの開発などを担当。「デザイン1:1」コンセプトによるデザイナーの意思通りの車づくりを推進し、新機種の開発から導入までを推進。欧州OEMとの会議体「Forming in Car Body Engineering」のボードメンバーに就任。元(一社)型技術協会の15代会長で、現在は名誉会員。
これまでやってきたこと!
読者の皆さま、こんにちは。元ホンダエンジニアリング㈱車体領域・執行責任者の田岡秀樹と申します。この度『型技術』誌で連載することとなり大変うれしく思っています。1990 年に元ホンダエンジニアリングに中途入社して以来、自動車ボディ用の大型プレス金型や生産技術、そして世界最速プレスラインの開発などを担当してきました。さらに「デザイン1:1」というコンセプトのもと、デザイナーの意思通りの車づくりを目指すフロントローディングとサイマルテニアスエンジニアリング型のマネジメントシステムを構築し、新機種開発と量産化にも携わってきました。
社外活動としては(一社)型技術協会の理事に2006 年から、その後、副会長そして2014 年からの2年間は15代目の会長役を務めました。その際には、『型技術』誌の巻頭企画で自動車や金型関連企業のみならずさまざまな著名な方々とのインタビューを通じて、それぞれの企業や経営者のもつ「モノづくりに対する熱い想いや戦略的な考え方」などをお伝えしてきました。その経験は私自身に対する強いエールにもなりました。
また一方で欧州OEM、研究開発機関や大学などが集まり毎年9 月中旬にドイツのバドナウハイムで開催される国際会議「Forming in car Body Engineering」のボードメンバーとしても2014 年から2022 年まで活動してきました。その間、毎年ただ参加するだけではなく私自身も基調講演を行ったり、ホンダエンジニアリングで開発した金型や塑型生産技術に関するテーマを若いメンバーが英語でプレゼンする機会を与えられる絶好の場だと認識し、資料作成の準備から当日のフォローまで推進してきました。
その結果、現在でも欧州OEM の技術者とも交流があり、情報交換を引き続き行っています。そして2022 年10 月に本田技研工業を退社したあと、2023年1 月から外資系企業を含め3 社でアドバイザーとしてお世話になっています(図1)。
「金型」+「デザイン」+「人との出会い」
さて、皆さんご存知のとおり、われわれが日々の生活で使うすべての“ モノ(製品)”、例えばペットボトルや食器そして電気製品、自動車やバイクに至るまで、すなわち「量産品」は金型で生産されています。つまり金型がないと、いくら良いアイデアや考えがあってもそれを世の中に出すこと、「具現化」できないのです。
自分自身の想いを実現するという意味では私は中学生の頃から「他の人たちと違うことをやって自分自身を表現していこう」という考えをもっていました。同級生たちが部活や生徒会活動に夢中になっていた頃、ギターを弾いたり音楽やファッションやデザインにすごく興味をもちました。
そして“Paul Smith” の大ファンでPaul Smithさんとも個人的に交流があるくらいファッションというモノづくりにも興味があります。もちろんPaul Smith の遊び心のあるトラディショナルなデザイン性も良いのですが「とにかく他人と異なることをやりましょう! そして他人との違いをお互いに認め合っていきましょう」というフィロソフィーにもすごく共感を得ているのです(図2)。
さて、「デザイン」という定義の一つは「モノの形に興味をもつ」ことではないかと思います。そして、このデザインへの興味が金型への強い興味につながり、その設計から製造に関する技術の開発や、金型から生産される自動車のデザインからボディ構造の開発までに私を導き、「私の人生の生業や最も楽しい趣味」になってきたことに気づいたのでした。
そしてさらに私を金型に夢中にさせたのは人との出会いがあります。自分と同じように金型に関わっている人たちには共通の価値観があると思います。それは企業規模や業種、マネジメントのし方、人材育成の仕方など、個々の要素ではなくそれを超えた「仕事に対するプロ意識とチャレンジ精神や誇りと尊敬」です。そんな人たちに出会い、意見を交換しているうちに「日本のモノづくり」はまだまだ大丈夫であり、明るい未来が築けていける! と確信できるようになってきました。
連載を通じて伝えたいこと~田岡塾とは
しかし一方で、金型は常に裏方に徹していると言えるのではないのでしょうか? 決して表に出ることはなくアイデアを具現化し商品化するための道具としか一般の人たちには見られておらず、金型が何なのかさえ知られていないのかもしれません。
しかし、私がこれまで金型を通じて学んできたことや経験してきたことはわれわれの明るい未来をつくったり、世界をその方向に向かわせることができると強く感じています。したがって、この連載記事を通して私は読者の皆さんにその考え方やアプローチの仕方を紹介していきたいと思います。これまでホンダ社内や、また中小企業の皆さまにも「田岡塾」という呼び方で私の経験や学んだことをお伝えする機会をつくってきました。それを全体的に3 つのセクションに分かれた16 のストーリーで構成した記事にして、直接の説明ではなく誌面での表現での難しさはありますが、順を追って記載できればと思っています。
セクション-1.視野を広げてデータに基づく仮説を立て未来を予測する!
リーダーは常にデータに基づいた仮説を立て未来を予想し続けることが極めて重要になります。そして一度描いた「未来予想図」のとおりにならなかった場合には、さらにその次の未来を予測し「未来予想図」を描くことが求められます。そんな想いもこめてこの連載記事のタイトルを「次世代リーダーの未来予想図-Ⅱ」としています。
セクション-2.限られた時間に言いたいことをきちんと伝えるプレゼン能力こそが最大のカギ!
簡潔明瞭で言いたいことがきちんと伝わるプレゼンのし方やグループディスカッションを通じてチームビルディングを行うことをお伝えします。
セクション-3.戦略的な事業計画をトップマネジメントに自ら行う!
最終的に準備しなくてはならないことは提案内容とトップに求める決裁事項の決定になります。が、まずその前にストーリーづくりこそ最も重要なプロセスなのです。そのストーリーやシナリオの立てるやり方をデータに基づく仮説を立てたうえで、その仮説の証明をしながらトップに提案できる計画書に仕立てていくような方法を説明します。
これから約1 年半の連載となる訳ですが、われわれを取り巻く環境はあまりにも速いスピードで大きく複雑に変化しています。そして誰も予想できなかったことが突然起こり始めてしまいます。
従いまして私の連載中にもそんな大きな変化が起きる可能性があると思いますが、そんな場合にも対応できる“ 待ち伏せ作戦” のし方までお伝えできればよいと思います。それでは、どうぞよろしくお願いします。