プレス技術 連載「新人技術者のためのものづくり現場の基礎知識」
2026.09.15
さこん まさお:代表。1948 年福井県生まれ。大学卒業後、1973 年に中小
製造業に就職。経営コンサルタント会社に転職後は標準原価による指導を経験。その後、知人とともに設立したコンサル会社を経て、2016 年に㈱経営学校を設立。
2 つの工場があるとします。1 つの工場は下記の状態1 にあります。もう1 つは状態2 にあります。あなたはどちらの状態がよいと思いますか。ただし、下記以外の条件は同じであると仮定します。
状態1:
・今日の仕事は工程管理表で事前に指示される。
・フォークリフトは白線内の通路を走る。
状態2:
・あなたの仕事は、その日、上司から指示される。
・フォークリフトは材料・製品の間を縫って走る。
状態1 の工場において当日の仕事がすでに決まっているということは、その材料が入荷しており、金型が整頓されていることになります。営業、生産計画、物流の間に連携がとれていなければいけません。フォークリフトがいつも白線内を通るためには材料、製品、機械などの整理が行き届いていなければいけません。
状態1 の工場は規律がしっかり守られ、仕事がテキパキと進んでいるように思われます。
整理整頓とは
整理整頓とは仕事を速くするための手段です。すなわち、あなたが整理整頓に取り組むとあなたは速く仕事を進めることができます。
もう少し具体的に説明しましょう。職場を3 つの対象に分けます。図1 にそれぞれの目的および例示を添えました。
第1 の対象はものです。これらは目で見えます。この整理整頓は作業(運搬、プレス、梱包など)を速くします。
第2 の対象はシステムです。これは目に見えませんが、あなたの仕事の仕方を決めており、あなたの前工程から材料を受け取る方法、および後工程への製品の引渡しを決めるなど、工場全体の流れをスムーズにします。
第3 はひとです。あなた自身であり、上司、同僚です。正社員もいるでしょうし、パートタイマーもアルバイトもいるかもしれません。ひとが余裕をもって働くようにすることが目的です。例えば、生産管理の計画があることによってスムーズに仕事に着手できます。
整理整頓の言葉
整理、整頓という言葉はものにも使いますし、ひとにも使います。
次のように言います。
整理では
もの:工具箱を整理する。
ひと:残業の人員を整理する。
整頓では
もの:機械を整頓する。
ひと:英語で商談できるように整頓する。
ひとの整頓では、今日、教育する、訓練するという言葉も多く使われています。英語で商談できるように“訓練する”などです。
似ているが違う
事務所や工場をきれいにすることがあります。例えば、社長が「明日、お客さんがいらっしゃる。事務所のカウンターの花を取り替え、工場を徹底的にきれいにしてもらいたい」などです。この場合、社長は美化を指示したのです。整理整頓ではありません。カウンターの花を取り替え、壁面の汚れをふき取ることによって仕事が速くなるわけではありません。
なお、あなたの上司・先輩は、整理整頓に清掃を加えて、「整理整頓清掃〔3 つの単語は、それをローマ字で書くと整理(seiri)、整頓(seiton)、清掃(seisou)となり、S から始まるので3S とも言います〕」と言うかもしれないし、「整理整頓清掃清潔しつけ(同じ意味で5S とも言います)」と言うかもしれません。
さらに、安全(safety)などを加えて使うことがあります。いずれも、そこに根拠があると思われますが、わたしの経験では、整理整頓(2S)でやるべきことの80%くらいを占めます。3 つ以上のS の数を増やすことを否定するわけではありませんが、「まず、整理整頓(2S)をやってから取り組む」ことを勧めます。
何を目指すか
企業が利益を上げることによってあなたのボーナスが決まり、新しい事業にもチャレンジできます。仕事が速く進めば儲かるようになりますが、それにはひとの影響が大きいです。そこで、もの・システムはここでは割愛し、ひとに焦点を絞って説明します(図2)。
ここで言うひとの意味は、企業に規則があり、その規則をひとが守り、規則どおりに働くということではなく(規則を守ることは前提ですが)、社長の方針を理解し、仕事に対して智慧を発揮し改善するということです。
ひとは適性に応じ整理されます。例えば「Aさんは技術を希望して入社したが営業が向いている」と判断され、技術から営業に異動になったりします。適性のある仕事に就くことは、長期的に見るとそのひとの幸せにつながります。
ひとはマネジメント力によって整頓されます。マネジメント力とは、同僚と共同し、さらに同僚を活用して成果を上げる能力です。この能力が基準になって整頓されます。「B さんは3 人の同僚の中でリーダーシップを発揮する。係長候補だ」といった具合であり、「C さんは前工程の人たちに相談し、段取りの改善に取り組んだ。課長をやってもらおう」と整頓するわけです。
なお、一般に整理を適性と言い、整頓を人事評価基準と言いますが、本稿で整理・整頓の言葉を使うのは、会社が少数の原理原則で動いていることを理解してほしいからです。