金属3D プリンタによる造形技術を武器に受託造形事業などを展開しているティーケーエンジニアリング(TKE)では、インドからの人材をコンスタントに採用することで、技術力の底上げを図っている。インドの理工系大学の卒業生を正社員として採用し、3D プリンタで必須の3 次元データを作成する3 次元CAD をはじめとしたIT ツールを駆使できる社員を短期間で養成し、短期間で戦力化に結びつけている。「大学からの人材を継続的に採用することに加え、今後は日本の高専に相当するインドのGovernment Tool Room &Training Centre(GTTC)*の卒業生の採用にも取り組んでいく」と下村豊社長は意気込む。
モノづくりの革新を牽引する3D プリンタによる受託造形
本題に入る前に、TKE がインド人材の採用に踏み切った背景を紹介しよう。
TKE は、自動車や機械の部品加工や高周波焼入れの受託事業を手がける高雄工業(愛知県弥富市)の関連会社として2021 年8 月に設立された。材料・備品などの購買や機械の保守・メンテナンスを担う部門に加え、グループの技術開発の拠点としても位置付けられる。
TKE がモノづくりの革新に向けて注力しているのが金属3D プリンタによる受託造形である。銅の高周波焼入れ用誘導加熱コイルづくりにAM(付加製造)が適しているのではないかという見立てから導入を進め、試行錯誤を経て加熱コイルの一体成形に成功した。
20 年に独SLM Solutions 社製の金属3D プリンタ「SLM280PS」とJSOL 社の電磁界解析+ 熱解析CAE ソフト「JMAG」を導入し、受託造形事業を立ち上げた。
加熱コイルの一体造形が可能になったことで、設計上の自由度が向上し、コイルの平均寿命が延びるなど品質の向上にもつながった。
モノづくりの流れに沿ったインドの大学の工学教育3D
3Dプリンタを活用するには、設計段階で3 次元CAD やCAE といったIT ツールを駆使し、3次元データを作成するIT スキルが欠かせない。ところが、日本の大学の理工系では、こうしたIT ツールを扱える人材の育成に取り組んでいるところが少ないためか、TKE のニーズに適した人材はなかなか採用できないのが実状だという。
そこで下村社長が目を付けたのがインド人材だった。インドの大学の理工系学部では3 次元CAD をはじめとしたIT ツールを扱えるようなポテンシャルをもった学生が多いことを知ったことがきっかけだ。
伝手を頼ってある企業から紹介されたのが、インド南部のカルナータカ州マンガルールにあるニッテ(NITTE)大学のハリクリシュナ・バート教授だった。バート教授は日本企業で40 年近くの勤務経験をもち日本を熟知している。下村社長が採用に向けた意思を伝えると、大学や学生との橋渡し役として協力してくれることになった。
23 年、TKE はインド人材の受け入れを決める。下村社長ら同社幹部はインドを訪問、学生にモノづくりについての講演を行うなどして交流を活発化した。ニッテ大からも教授らが3D プリンタ事業の視察にTKE を訪問するなど、交流を深めてきた。
そして、24 年にニッテ大学の卒業生3 名を採用したのを皮切りに今年も8 月に5 人を採用し、10月に2 名、26 年8 月に7 名の採用が決定している。今後もコンスタントに採用を進めていくという。
入社前研修でスキル習得をサポート
採用が決まった学生には入社前研修として、オンラインを活用しながら3 次元CAD やAM などの技術を身につけてもらうとともに一定レベルの日本語の習得を課している。
「もともとニッテ大学では、当社の求める能力を身につけるのに合った教育が行われており、技術の習得は早い」(下村社長)と卒業生の質の高さに満足しているようだ(図1)。
日本に赴任してからは、CAE や3D プリンタに関連する技術もスピーディに習得できているとのことである。今後は技術分野を設備やロボットや材料などにも広げていく予定だ。
ダイバーシティ経営を推進、イノベーション創出へ
現場では日本人社員とのコミュニケーションも推進している。日本人社員は日本語に加え英語も使ってインド人社員との相互理解を深めている(図2)。オフには観光に出かけ親睦を深めることもある。
一方、課題もある。ニッテ大学ではどちらかというと理論的な内容を重視する傾向にあるため、インド人社員は設計のような上流の工程には強いが、生産現場の設備に関してなじみが薄いという。
そこで期待しているのが、GTTC の人材である。GTTC は機械、電気、制御などの実習設備が充実しており、技術に対する学生の意欲も高いという。特に魅力的なのは、3 次元CAD で設計し、CAM でツールパスを作成後に加工シミュレーションを行い、NC 旋盤で加工するといった一連の工程の中で技術を学んでいることだという。それぞれの技術がモノづくりのプロセス全体の中でどのように位置づけられているかを理解できているのが魅力である。
26 年はGTTC からのインターンシップを受け入れる予定だ。GTTC の卒業生は高雄工業での採用も検討しているようである。
このようにTKE では、ダイバーシティ経営の推進を目指し、高いレベルの人材獲得に余念がない。技術力という観点からはインド人材が中核を担っていくようだ。