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工場管理 連載「キラリと光る技術をM&Aでつなぐ」

2026.02.03

第11回 具体的なM&Aの進め方② 基本合意~決済・成約式

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スピカコンサルティング 石川 大

いしかわ だい:製造業支援部 M&Aコンサルタント 神奈川県出身。父親が経営する会社がM&Aで譲渡された経験を持つ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、新卒で野村證券に入社。2023年スピカコンサルティングに参画。
https://spicon.co.jp/
 前月号から具体的なM&A の進め方について、「現状把握~トップ面談~基本合意契約締結~決済・成約式」を前後半に分けて解説しています。

 改めてになりますが、本質的な課題を解決する「成功のM&A」を実現するためには、M&A のプロセスを理解し、事前に注意点を把握しておくことが重要です。

 後半となる今回は、「基本合意~最終契約書の契約・決済・成約式」について、各ステップの順を追って解説していきます。
<具体的なM&A の進め方>

<具体的なM&A の進め方>

基本合意書の締結

 トップ面談が終わり、相手企業を選定すると、その企業と基本合意書を締結することになります。これは譲渡企業と譲受企業が初めて交わす契約です。

 基本合意書には基本的に次の要素を記載します。
  ・価格などの条件
  ・そのほかの付帯条件(オーナー経営者や取締役の処遇、従業員の処遇、そのほか資産買い取り条項など)
  ・スケジュール
  ・秘密保持・独占交渉権の付与

 基本合意書は、その後の最終契約書に盛り込む内容をできるだけ入れ込むことをお勧めします。「話し合いができていないからこの点は、基本合意後に決めましょう」などと先送りしてスケジュールを急いでしまうケースを見聞きしますが、後々のトラブルになりかねませんので、基本合意時にできる限りすべて明確にしておくことが大切です。

 このステップの後、デューデリジェンスとよばれる、企業の経営状況や財務状況を確認する買収監査を行いますが、基本的にはこの時点で公表している情報や取り決め事項について、理由なく条件変更することはルール違反となるので注意が必要です。

 必ず基本合意書に記載する条件でM&A を進めなければならないという法的拘束力はありませんが、契約書内に明記され、相互にとって一定の効力がある事象となります。しっかりと両社の意見を組み込み、つくっていかなければなりません。

デューデリジェンス/ 買収監査

 デューデリジェンスとは、最終契約を締結する前に、譲受企業がこれまで共有された情報に間違いがないかを最終確認する場です。M&A 成立後にスムーズな引継ぎを行うために、譲受企業が全容を把握しておくために設けられているものです。

 譲受企業によっては自社の財務担当や担当税理士、会計士の先生に委託するケースや、まったく別の機関に委託するケースなどさまざまです。基本的には数十項目の質問のやりとりと、その証明となる原本資料の確認、資産の現物確認がメインとなります。通常であれば1 ~ 2 日ほどかけてインタビューをします。

 製造業のデューデリジェンスで、よく論点となるのは「在庫の調整」です。おもには製品・原材料・仕掛品の棚卸状況や滞留状況の確認を行います。期末日時点の棚卸リストと現物を照合する実在性の確認や、平均的な製作期間と大きく乖離している仕掛品の有無を確認。想定と差異がある場合には理由を把握する必要があります。また表面処理業のような薬品を扱う工場においては「土壌汚染」も論点となる項目です。基準値以上の数値が出た場合には、原状回復コストを把握する必要があります。

 譲渡企業のオーナーの中には、時折、税務調査のように感じる方もいらっしゃるため、買収監査を行う監査人は相手に寄り添い、リスペクトを持ちながら臨む必要があります。

 デューデリジェンスで「新たな事項」が発覚した場合は、最終条件交渉に進みます。不要な価格交渉を避けるためには、案件化で論点になりそうな内容を事前に整理しておく必要があります。製造業特有の論点を押さえた概要書の作成が重要です。

最終契約書の締結・決済・成約式

 デューデリジェンスでしっかりと確認を済ませ、交渉条件を経て、ついに最終契約書の締結です。一般的には、最終契約書の締結と決済を同じ日に行うことが多いです。

 M&A 成約式を行い、社員や取引先には計画を立て慎重に開示していくことが求められます。特に、幹部社員や重要な取引先に関しては、不安を抱かせないために丁寧に説明していくことが今後のためにも大切です。スピカコンサルティングではその関係者すべてに対してどのように開示すべきかを提案します。それぞれの思いもあるため、全員に同じスタンスで開示するということは非常に危険です。デリケートな部分ですのでとても慎重に進める必要があります。
成約式の様子 NINJAPAN ×ODKソリューションズ

成約式の様子 NINJAPAN ×ODKソリューションズ

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 以上のように、事前相談から最終契約書の締結までには、さまざまなステップがあります。M&Aにはたくさんの人が関わります。そのため、小さな認識のずれがのちに大きなトラブルに発展しかねません。どの工程もおろそかにすることのないよう、1 つひとつの手順を守って、ご自身の大切な会社のM&A を成功させてほしいと思います。

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