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2026.09.01

高齢化が迫るタイ製造業 CGS ASIAが学生育成を強化

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 タイの製造業で現場を支えてきた技術者の不足への危機感が強まっている。ベテラン人材の高齢化や若手不足を背景に、現地に分厚く集積する日系企業では、技術や技能継承が大きな課題となっている。現地で自社製の金型専用CAD/CAMを販売するCGS ASIA(タイ・バンコク市)はこうした中で、現地大学との提携を進める。次世代への教育まで踏み込み、学生段階からの早期人材育成に乗り出している。(日刊工業新聞社 コンテンツ企画部 篠瀬祥子)

学生段階からCAM教育

 同社は2025年1月、泰日工業大学(TNI)と技術提携に関する覚書(MOU)を締結した。金型設計専用のCAD/CAMソフトウエア「CAM-TOOL」を同大学に提供。工学部の教育カリキュラムにも組み込まれており、3カ月のプログラムで同システムについての講習が行われ、学生は自由に使用できるようになった。大学教員が授業を担当する一方、実加工に関する部分でCGS ASIAのタイ人エンジニアがサポートし、設計から加工までを実践的に学べる環境を整えた。これまでに累計で44人の学生がこの実習を受けた。
CAM-TOOLを使った授業の様子

CAM-TOOLを使った授業の様子

 TNIは日本のモノづくりと日本語を理解して即戦力人材を輩出する大学として知られている。これまで、日系の工作機械メーカーなどとの提携は多く進められていたが、設計ソフトウエアの分野でのMOUははじめてのケースだ。同社はソフトウエア分野で教育支援を担うことで、将来的な人材育成基盤の構築を目指している。柏口篤志マネージング・ダイレクターは「タイの学生に早い段階から当社製品を使って従来以上に高精度領域の加工に触れてもらい、社会に出た時にすぐ使えるようになっているメリットは大きい」と教育の底上げを狙う取り組みへの手応えを語る。同社社員がサポートで行くことで、学生がハイエンドな実務レベルのソフトウエアに触れ、「こんなモノづくりをやってみたい」という高精度なモノづくりそのものへの興味喚起を引き出していくことも狙いだ。

採用や交流拡大にも効果

 連携は採用面でも成果が現れ始めている。大学側との交流を通じて卒業予定者の採用活動を進めており、今年、TNIから1名が営業技術担当として入社した。羽鳥由紀子取締役は「大学とのMOUをきっかけに、自社の認知向上と採用にもつなげていきたい」と語る。このほかにも、同社が日系企業などと一緒に開いたセミナーで、TNI関係者を招き、大学側の取り組みを発表してもらうなど、今回の提携を機に人脈づくりと、コミュニケーションが取れる関係ができた点は大きな一歩だ。
泰日工業大学の教授陣ら(左から1人目、4人目,5人目)とCGSスタッフ

泰日工業大学の教授陣ら(左から1人目、4人目,5人目)とCGSスタッフ

大学ロゴをCAM-TOOLソフトウェアで制作

大学ロゴをCAM-TOOLソフトウェアで制作

ASEAN全域で進む技術人材不足

 こうした取り組みの背景にあるのは、タイ製造業を取り巻く人材環境の変化がある。まだ日本国内ほど露骨ではないものの、少子高齢化は確実に進んでおり、顧客先の製造業において熟練技術者の高齢化課題は表面化している。日系企業で長年勤務してきた日本人技術者が定年を迎えるケースも増え、技術やノウハウの継承が難しくなりつつある。技術者が一人、本格的な引退を視野に入れるたびに、現場では「この技術を誰に引き継ぐのか」という問題が現実のものとなっているという。同社では、設計加工だけでなく、解析やシミュレーションソフトなどの活用にも可能性を探る。熟練技術者が持つ加工条件やノウハウを数値化し、データとして蓄積することで、経験に依存した技能の継承を補完できる可能性があるためだ。

 CGS ASIAは、C&Gシステムズの子会社として2002年に設立され、来年の25周年を目前に控える。顧客の約9割は日系企業が占めるが、近年はタイ産業界の基盤としてローカル企業の成長や中国系企業の進出加速なども進む中で、タイを拠点にフィリピン、ベトナムやインドなど周辺国への技術支援も担う。ASEAN各地域やインドなどの各エリアにさらなる根を張る取り組みが求められている。
柏口篤志マネージング・ダイレクター(左)と、羽鳥由紀子取締役

柏口篤志マネージング・ダイレクター(左)と、羽鳥由紀子取締役

 コロナ禍以降、タイ産業界では企業の淘汰が進み、生き残った企業では高付加価値化や自動化への投資が活発化している。工程集約や自動化による効率化へと移行する動きが広がるが、大手メーカーでは夜間運転やセミオート化などの導入も進んでおり、ソフトウエアやデジタル技術の役割は一段と大きくなっている。同社にとっても、製造業全体を俯瞰しながら最適な組み合わせを提案するソリューション型に力を入れていく方針だ。柏口マネージング・ダイレクターは、「タイだけでなく、フィリピンやベトナムなどでも同じ現象がいずれ大きな課題となる」と製造業の成熟化が進むASEAN全体での危機感も強める。

 知識共有の場づくりや企業が直接、人材を育てていく必要性は、従来以上に強まっていくとみられる。高度化が進む東南アジアにおいて、教育機関との連携を通じた次世代人材へのアプローチは、今後の競争力を左右する要素となりそうだ。

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