せんごく けいいち:同研究所 代表社員 日産自動車にて物流IEとして新工場・新ラインの物流設計業務、その他輸送や構内物流、荷姿の効率化に携わる。
物流工程で発生しているコストとは
皆さんは物流コストという言葉から真っ先に何を連想するだろう。輸送トラックの運賃、外部倉庫費、構内物流の請負業者に対する費用などが頭に浮かぶのではないだろうか。ではそれらのコストが一体いくら発生しているのかを即答できるだろうか。この物流コストだが、会社として今現在いくら発生しているのかを把握することは簡単ではない。なぜなら物流コストを把握すべき財務会計上の費目がほとんど存在しないからだ。せいぜい支払運賃くらいだったらわかるかもしれない。外部倉庫に対する支払いや構内請負の費用などは経費の中に含まれているため、支払先で抽出する必要があるかもしれない。
前回も書かせていただいたとおり、日本ロジスティクスシステム協会が毎年会員企業を対象に物流コスト調査を行い、その結果を「売上高物流コスト比率」というかたちで公開している(図1)。この比率はおおよそ5%である。業種別のデータもあり、製造業は製造品種別に示されている。ただしこのデータにはいくつかの課題がある。1 つは回答企業によって対象としている物流コストの範囲が異なること。もう1 つは網羅性が高くないということだ。
残念ながら日本企業では物流に対する関心が低く、担当者も豊富に揃っているわけではない。したがって今のデータは「把握できる範囲で集計したデータ」といわざるを得ない。その範囲が比較的把握がしやすい外部支払領域といえる。
他費目に隠れている物流コストとは
図2 でお示ししたように、物流コストは多岐にわたるとともにさまざまな費目の中に隠れてしまっていると考えられる。典型的なもので考えてみよう。
1.調達物流コスト
日本では売り側がトラックを仕立てて顧客まで届けることが一般的なため、皆さんが部品などを調達する際の物流コストを認識していない可能性がある。このコストには輸送費や荷姿費、サプライヤーの物流スタッフ人件費など複数の要素が含まれている。これを抽出するためには購買部署に明確化してもらうことが一番だが、部品原価構成の中でブラックボックスになっているかもしれない。その場合は輸送距離や現行荷姿から推計するしかないだろう。
2.物流作業員人件費
皆さんの工場における人件費の中に物流作業員人件費が含まれている。これを抽出するには個人名で実施することが考えられる。社会保険料などの法定福利費も含め、やる気になれば正確な数字は出すことが可能だ。月次単位でも可能だろう。
3.燃料費・光熱費
工場内の物流業務に絡む燃料費や光熱費がある。燃料費は主として物流動力車に関わるものであるため抽出は可能だ。軽油やプロパンなどの発生費を愚直に積み上げてカウントしていくことだ。一方で光熱費は工場全体で把握していると思われるため、物流エリアの面積比率で配賦するとよいかもしれない。
この中で1. は重要だ。なぜならそのコストの大きさに驚くはずだから。今までサプライヤー任せにしてきた調達物流について、何かしらの改善を施す必要に気づくことだろう。
物流コスト管理の考え方
これら他費目に含まれる物流コストの切り出しは何かしらの仕組み化をすることが望ましい。たとえば、経理部署から指定項目の金額を毎月物流管理部署に報告してもらうなど一定のルールを定めることだ。理想はこれを情報システム化することであることはいうまでもない。これらを含め物流管理部署は工場で発生している物流コストを毎月集約し、その水準を評価していくべきだ。物流コストの絶対値のみならず売上高に対する比率にすることや、製品1 台あたりのコストとして評価していくことが望ましい。
この結果については物流マンスリーレポートとしてまとめ、工場経営層に提示していきたい。その理由の1 つが経営層の物流に対する関心度を高めることだ。日本の経営者は残念ながら物流に対する関心は低い。というか勉強不足だ。しかし経営層が最も気になることは会社の数字だ。「物流コスト」という数字が毎月報告されたとしたら、余程のことがない限りそれに反応するはずだ。なぜなら多分物流コストは会社の営業利益金額より大きいと想定されるから。
今回のまとめ
①物流コストは財務会計では把握できない。各費目の中に埋もれている物流コスト
を抽出する作業が必要だ
②物流コストを見える化するとともに、常時把握できる仕組みを構築しよう。それ
がないと手間がかかるため、途中で把握することをやめてしまう可能性がある
③物流コストを常に意識し、これを適正値に保つ活動を実行していこう。会社の物
流マンスリーレポートを作成し、その中で物流コストの現状が見えるようにしてい
くことが望ましい