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工場管理 連載「キラリと光る技術をM&Aでつなぐ」

2026.01.07

第10回 具体的なM&Aの進め方① 現状把握~トップ面談

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藤川 祐喜 スピカコンサルティング

ふじかわ ゆうき:執行役員 製造業界支援部。大阪府出身。大阪府立大学大学院工学研究科修了後、2010年に新卒でキーエンスに入社。その後、日本M&Aセンターへ入社し、業界再編部において製造業専門チームを立上げ。2023年スピカコンサルティングに参画
https://spicon.co.jp/
 私たちには、日々多くの経営者からM&A に関する相談が寄せられます。その中には、譲渡を決断していない方や、将来の選択肢の1 つとしてM&A を検討している段階の方もいらっしゃいます。

 今でこそ、M&A という言葉も少しずつ浸透してきました。それでも、具体的なM&A の進め方については、一般的に認識されているとはいえません。そこで、具体的なM&A の進め方について、「現状把握~トップ面談~基本合意契約締結~決済・成約式」というプロセスを、2 回に分けて解説します。今回は「現状把握~トップ面談」の流れについて、ポイントを押さえながら説明します。

M&A の第一歩は「現状把握」から

 M&A を進めるに当たり、まずは譲渡を検討している企業の現状を把握することから始めます。オーナー経営者がなぜ起業したのか、どのような思いで経営してきたのか、創業から現在に至るまでの課題や成功体験、そして現在抱えている課題を詳しくヒアリングします。加えて、経営者の将来のビジョンやその実現可能性についても話し合い、M&A が本当に必要かどうかを見極めます。

 あくまでM&A は事業承継の選択肢の1 つに過ぎません。そのため、改めて今後のビジョンを考えることが大切です。これは会社だけでなく、そこで働く社員にどうなってもらいたいか、さらには経営者個人のライフプランにも関わる重要なテーマです。

 また、自社の株式価値を知りたいという経営者も多いため、簡易的な株価評価を行うこともあります。大事なことは、その企業の決算書に表れない価値にしっかりとフォーカスした株価評価を行うことです。単に公式に数字を当てはめただけの株価を計算するM&A 支援企業も少なくありませんが、製造業においては数字に表れない資産がとても重要になります。製品/ 技術の特徴、保有設備の状況、取引先との関係性なども鑑みて多面的に企業価値を評価することが求められます。

アドバイザリー契約の締結

 オーナー経営者とディスカッションを重ね、M&A を進めると決断した場合、次のステップとしてアドバイザリー契約を締結します。業界的には専任契約が一般的ですが、委任先の選定には注意が必要です。製造業にノウハウのないM&A 支援企業に委任してしまうと、いつまで経っても良い企業と巡り合えず、ただ時間が経過してしまっているというケースも見聞きします。このあたりは、実績やノウハウなどを確認し、きちんと委任先を決める必要があるでしょう。

企業概要書・企業評価書の作成

 アドバイザリー契約を締結後、まずは譲渡企業の魅力を伝える企業概要書を作成します。これは譲受企業に対し、自社の強みや成長の可能性を正しく伝えるための重要な資料です。決算書の数字だけでなく、事業の特徴や市場での立ち位置など幅広い情報を含めます。

 同時に、M&A を進めた場合のリスクを洗い出します。M&A のゴールは成約ではなく、成約後の安定した成長です。そのため、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家と連携し、あらゆる論点に対して、リスクの見落としがないように進めることが求められます。

 次に、M&A の基準となる株価を算出する企業評価書を作成します。評価手法は業界によって異なりますが、M&A 評価額は相続税評価額とは異なることに注意が必要です。相続税評価は過去の財務データをもとに計算されるのに対し、M&A評価額は将来の収益性を加味したものとなります。一般的には相続税評価額よりもM&A 評価額のほうが高い株価になる傾向があります。収益力や事業環境考慮して正確に評価することが求められます。

候補先の選定とトップ面談

 企業概要書と企業評価書が完成したら、次は譲渡企業に適した候補先の選定を行います。候補先の数は案件によって異なり、数社から数十社に及ぶこともあります。オーナーとは、どの候補先であれば、M&A 後に相乗効果を発揮できるかも入念にディスカッションします。

 候補先企業には、秘密保持契約の締結後、まずは「ノンネーム」と呼ばれる企業名を伏せた状態で情報を提供します。興味を示した企業に対してのみ、詳細な企業概要書を開示します。その後、質疑応答を経て条件提示を行います。

 前向きに進められる企業が決まればトップ面談に進みます。トップ面談は、譲渡企業と譲受企業の経営者同士が初めて顔を合わせる重要な場です。この時点で基本的な条件は固まっており、面談では企業の文化や理念の相性を確認します。特に製造業の場合、工場見学を同時に実施するケースも多いため事前準備は欠かせません。トップ面談を踏まえて、両者の思いが一致すれば、基本合意書の締結に至ります。
具体的なM&A の進め方

具体的なM&A の進め方

            ☆                     ☆

 M&A は単なる売却ではなく、企業の未来を決める重要な選択肢の1 つです。成約までの各ステップを慎重に進めることで、最適な譲渡先を見つけることができます。

 M&A を成功させるためには、
 ●企業の本当の価値を把握すること
 ●未来のビジョンを明確にすること
 ●信頼できるアドバイザーと連携すること
 ●候補先との相乗効果を明確にすること
 ●文化や理念の相性を重視すること
 が重要となります。
 次回は、トップ面談後の「基本合意契約締結~決済・成約式」のプロセスについて詳しく解説します。

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