工場管理 連載「工場はプロフィットセンター 儲けを生み出す工場を実現しましょう!」
2025.04.01
第1回 TOPから「スマート化、DXを進めろ!」といわれたけど、どうすればいいの?
スマート工場研究所 渡邉 寛
今月から連載を行うことになりました。筆者はこれまで20 年以上に渡ってコンサルタントを生業として多くの製造業のお客様と一緒に仕事をする機会を得、多くの知見をいただきました。それらが少しでも皆様の役に立てば幸いです。また、皆さまからのご意見やご感想をこのうえもない奇貨と考えますのでぜひお寄せください。第1 回目はDX に取り組むお客様の“お悩み”がテーマです。
昨今、まさにタイトルどおりの相談を受けます。「TOP よりDX を進めよという指示が出て、現在、各部門でどのような課題に取り組むか検討中である」とか、「DX といわれたので、AI やIoT を使ってできる改善を考えている」という話をよくお伺いします。聞くたびに残念に思います。そもそも、スマート化やDX とは「デジタル技術を活用して、企業全体、工場全体を抜本的に見直し、生産性を劇的に高める、あるいは顧客やステイクホルダーに対する新たな価値をつくり出す」ということと考えます。なのに、「『部門で考えろ!』って、経営の意思や問題意識はどこに行った?『AI で何ができる?』って、優先すべき経営課題や業務課題から手を付けずに良いの?」とつい叫んでしまいます。
日本の製造業では、工場全体で現場の改善活動に取り組み、その積み重ねでモノづくりが進化してきた歴史があります。これは良い文化であり日本企業の強みの1 つであると思いますが、これまで現場主体の個別最適を進めてきた組織にスマート化やDX( つまり全体最適)を求められてもすぐに考えや行動が変えられるわけもなく、思考停止に陥ります。全体最適が得意な海外企業との競争が激しくなる中、強い危機感を覚えます(図1)。そこで、工場のスマート化やDX に当たって、ぜひ、考えて欲しいポイントについてご紹介したいと思います。
図1 従来型の改善活動と工場DX における取組み姿勢
工場のスマート化で考えるべき5つのポイント
1.最初に、目標やコンセプトを定義しよう!
まずスマート化やDX で達成したい目標やコンセプトを定義すべきです。どの工場も将来に期待するのは省人化、さらには無人化でしょう。それに加えて、将来の市場や企業環境の変化に対して各企業が求められる姿を目標やコンセプトとして掲げるべきと考えます。「高齢化と地域の雇用を支えるべく、70 歳になっても働くことができる安全な工場を実現しよう!」や、「顧客からの絶対的な信頼を得るべく、品質情報を顧客が何時でもWEBで見られるようにしよう!」などです。いずれも私が経営者から聞いた言葉です。
2.10~20年先の理想的な工場の姿を描こう!
目標やコンセプトを実現する工場の具体的な姿を描きます。現状をリセット、一から工場をつくる気分で、理想の工程や設備、建屋やレイアウト、倉庫や物流について、具体的な仕組みを描いてみます。今の工場の制約は忘れましょう。そうでないと、今の工場の限界が皆さんの理想の工場になってしまいます。変革や飛躍を生み出すためには、足元の課題や固定観念から脱却して、将来の理想的な工場を考え抜くことが大切です。
3. 世の中にあるさまざまな情報を収集しましょう!
既存ベンダーに拘らず、皆さんの求める技術や情報を持つ新しいベンダー(設備屋、ラインビルダーなど)や研究機関と出会いましょう。今はネットやリモート会議という情報収集&ディスカッションには最適な環境があります。これらを最大限活用し、多くの情報に触れ、やわらかい頭とポジティブ思考で、それらの情報の可能性を追求し、解を見つけ出すのです。専門家の知識も必要ですが、多様な考え方やアイデアから最適解が生まれることも多いです。いわゆる“ワイガヤ”が有効です。また、皆さん以上に皆さんの工場の変革を考える人はいません。よって、ベンダーに丸投せず、自ら取り組みましょう。
4.設備と設備をつなぐ仕組が大切です!
無人化においては、各作業を自動化する設備だけでなく、設備と設備をつなぐ自動化の技術が求められます。作業完了後にワークを設備から受け取り、次の設備まで運び、次の設備に装填する、これらの一連の動きの自動化です。この領域は設備屋と設備屋の狭間になり、皆さんの推進力が求められます。皆さんのアイデアで解決しましょう。
5.段階的に取り組む道筋を描く!
スマート化やDX は1 度きりのイベントではありません。理想・目標を描き、それを実現するためにStep by Step で継続的に取り組んでいく活動です(図2)。その積み重ねにより大きな理想や目標に到達します。目標とする理想的な工場を描いた後で、その実現の道筋、5 年以内の実現目標、10年以内の実現目標、それ以上先の実現目標に整理して実行計画をつくります。次のような視点で考えます。
⑴各アイデアのコストや効果(人員削減や生産能力強化など)を試算して松竹梅プランを定義、重要性・緊急性・発展性・投資可能コストの点から評価して採用案と時期を決定
⑵現工場の制約で実現できないもの、つまり、新たな工場の建設が前提となる設備や技術の明確化、それに挑戦する時期の経営判断
⑶設計変更や技術開発が必要なこと、それらを達成する目標時期
⑷今の世の中の技術ではできないこと、技術革新を監視していくべき課題
DX化を楽しもう!!
皆さんは日常において、さまざまな課題に直面し多くの制約の中で問題解決していくことに迫られます。「 本来、こうなっていれば…」、「もし、これをして良いなら…」と思うことも多くストレスを感じるでしょう。スマート化やDX を構想することは、現状から解放され、”本来”や”もし”を追求する機会であり本来とても楽しい仕事です。このような機会を活かして、ぜひ、皆さんで夢の工場に向かって一歩踏み出して欲しいと切に望みます。