インド最大級の金型製造技術展「Die & Mould India International Exhibition」が4月21日から25日まで、マハーラーシュトラ州ムンバイ市のボンベイ・エキシビション・センターで開かれた。過去最大規模となり、3ホールに金型関連工具や工作機械など400社近くが出展。「Make in India」の根幹となるインド金型市場の急速な高度化と未来を示す機会となり、3万5000人以上が来場した。また日本勢では、現地進出済みの日系工作機械メーカーなどのほか、「ジャパン・パビリオン」が初めて開設され、日本企業11社と日本金型工業会が参加。インドビジネスを模索する中で、大きな足がかりの場となった。(日刊工業新聞社 コンテンツ企画部 篠瀬祥子)
「品質もインドで作る」金型展示会で浮かぶ製造強国への挑戦
同展はインド金型協会(TAGMA INDIA、ムンバイ市)が主催し、2年に1度行われており、今回で14回目。会場はムンバイ・メトロのレッドラインに乗り、Goregaon(EAST)駅から迷わなければ、徒歩15分程度で到着する。
TAGMA INDIAのDevaraya M Sheregar会長は、「Die&Mouldは単なる展示会ではなく、金型に関連するエコシステム全体が集まり、能力を披露し、アイデアを交換し、業界の未来を形作るパートナーシップを築くプラットフォーム」と強調。また前回の展示会で「より多くの金型メーカーに出展してほしい」と呼びかけ、今回は出展者の25%以上を金型メーカーが占めたことに触れながら、「次回の第15回では50%程度まで高めたい」という考えを示した。
会場近くのGoregaon(EAST)駅から撮影。四輪、二輪、オートリキシャなどがひしめき、朝夕は渋滞する。
オープニングイベントでは、インド金型メーカーの成長の可能性とともに、スキル人材育成や先端技術導入などが主要テーマとして語られた。金型ユーザー業界側を代表して、自動車部品や航空機関連などを手がけるSansera Engineering の共同マネージングダイレクターで、インド航空宇宙協会の会長も務めるF.R. Singhvi氏が登壇。40年にわたり自動車産業で企業成長をけん引してきた立場から、「利益だけでなく、従業員をどう育て、共に成長するかが重要だ」と指摘し、人材の継続雇用とスキル開発への継続投資こそが品質や生産性、競争力の向上につながると訴えた。
同時にインドには豊富な人口と素晴らしい教育機関がある一方で、「欠けているのは規律」とも指摘し、グローバルな顧客に向けた納期順守や品質への厳格な姿勢の必要性を強調した。「インドが製造業で世界をリードしたいなら、まず金型技術でリードしなければならない。製品の形状や品質、生産性を左右する金型技術こそが、製造業の競争力を決める」-同氏はそう訴え、金型メーカーに奮闘を呼びかけた。
オープニングイベントに登壇したDevaraya M Sheregar会長(一番左)、アジア金型協会(FADMA)のHector Yu Villanueva Jr.会長(左から2番目)、Sansera Engineering の共同マネージングダイレクターのF.R. Singhvi氏(同3番目)、Tata Auto Comp Systemsのマネージングディレクター兼CEOであるManoj Kolhatkar氏(同5番目)
アジア金型協会(FADMA)会長のHector Yu Villanueva Jr.氏は、スマート製造や積層造形、自動化技術が業界を大きく変革していると指摘。「コラボレーションこそが進歩の礎」と述べ、アジア各国との連携強化に期待を示した。
また基調講演では、Tata Auto Comp Systemsのマネージングディレクター兼CEOであるManoj Kolhatkar氏が登壇。同社で徹底して進めてきた現地製造化策「ディープ・ローカライゼーション」を紹介し、1台の車を作るのに必要な金型の多くを輸入に頼っていた時代から、現在ではそのほとんどをインド国内で製造できていると明かした。また、デジタル技術やAIを用いた開発期間短縮について触れ、「かつて4年かかっていた車の開発期間は、2年に短縮することが求められている。先端技術を応用し、輸入ではなく自国で開発していかなければならない」とデジタル技術の積極応用に期待を寄せた。
同氏は最後に、マルチスズキの創設者である故鈴木修氏からかつて「単にインドで製造するだけでなく、品質もインドで作り上げるべき」と言われたことを披露しながら「とても重要なことを教えてくれた」と振り返った。「妥協のない、世界クラスの品質を追求することが、インドの誇りとなる」と出展者らに品質レベルアップの重要性を説いた。
ローカルメーカー台頭 インド金型産業支える周辺企業も活況
会場では、インド全土から集まったローカル工作機械メーカーが最新設備を披露。日を追うごとに商談の熱気も増していった。ACE DESIGNER、LMW、JYOTI CNC、Bharat Fritz Werner、Cosmos、放電加工機大手のElectronica Indiaなどが大型ブースを展開。デジタル技術を活用したシステム提案に加え、インド市場だけでなく、中東や欧州など海外市場向けの導入実績も前面に打ち出していた。現地メーカーの技術力は着実に底上げされ、提案方法も洗練されてきている印象を受けた。
ローカルで力をつける工作機械メーカーが大型ブースを展開(写真上はCOSMOS、下はLMW)
また会場では、金型産業を支える周辺産業を担う中堅企業の意欲的な姿も目立った。その一つ、金型アクセサリー系の商社であるVIJAY DEEP(ムンバイ市)のブースを訪ねた。自動車製造関連や金型メーカーなど3000以上のユーザーを持ち、インジェクションアクセサリーやダイ・スプリング、冷却部品など、1万点以上の部品を供給しているという。同社は近年、自社技術の確立に力を入れており、グジャラート州に新たに工場用地を確保した。HARSHIT SHAHダイレクターは、「工場を立ち上げるにあたり、特に日本の製造技術に関心を寄せている」とし、日本の中規模・中小企業との交流への期待を持っているという。
中編では、インド市場の開拓を狙う日本企業の取り組みを紹介する。
VIJAY DEEPのHARSHIT SHAHダイレクターは、日本企業との技術交流に意欲的