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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2026.03.27

第25回 3次元ツールを活用した真のペーパーレス化

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。

はじめに

 デジタルモノづくりを進めるうえで、目標とすることの一つが「ペーパーレス化」である。ペーパーレスは、コスト削減や業務の効率化を実現するだけでなく、環境に配慮したサステナブルな取組みにもつながる。今回は、モノづくりにおける真のペーパーレス化について紹介する。

ペーパーレス化の必要性

 ペーパーレスとは、紙(ペーパー)をなくす・減らす(レス)ことである。紙ではなくデジタルデータとして保存し活用することが、ビジネス面だけでなく、サステナブルな観点からも重要になってきている。

 ビジネスにおいてのペーパーレス化は、紙の購入や印刷、郵送などにかかるコストを抑えることができ、情報管理では検索や共有が容易に行えることで業務効率を向上させ、コミュニケーションを活性化することができる。大量の紙を保管する場所も不要になる。また、テレワークや多様な働き方に対応するうえでも、ペーパーレス化は必要不可欠である。

 サステナブルな観点では、紙の使用量を削減することで、森林の伐採や廃棄物を減らし、印刷や郵送時、ゴミ焼却時のCO2 排出量の削減につながり、森林保護、資源節約などの環境への負荷の軽減に貢献できる。ペーパーレス化の実現は、ビジネス面だけではなく、サステナブルな面でも効果があり、また、働く人たちのより良い環境づくりにもつながる。

図面レスなモノづくり

 設計業務におけるペーパーレスの代表が「図面レス」、3次元モデルを「正」にしたモノづくりである。2 次元図面を紙ではなく、DXFやPDFなどの電子データで保存し、閲覧をPCやタブレットで行うことで、ペーパーレスにはなるが、真のペーパーレスなモノづくりではない。真のペーパーレスなモノづくりとは、2 次元図面をつくらないモノづくりである。

 2 次元図面を作成するのには多くの労力が必要である。3 次元CADには、3 次元モデルを設計した後に2 次元図面を作成する機能はあるが、投影図や断面図を配置し、寸法(サイズ)を付加するなどの情報を入力していくのは非常に手間である。

 3 次元データを閲覧できるViewer(ビューワ)を活用し、社内外で3 次元データを確認してデザインレビューを行ったり、さらには製造指示を行ったりするなど、紙を使わない3 次元データをフルに活用した効率の良いモノづくりが真のペーパーレスなモノづくりである。

 「3 次元図面」というものをご存じだろうか? 3次元モデルを正とした図面方式で、3次元モデルに直接、寸法(サイズ)や公差などを定義するものである。3次元図面とは、3次元CADで作成した3次元モデルに、2 次元図面に記載していたさまざまな製造情報を付加したものになる。

 3 次元モデルに直接付ける寸法や記号などの注記のことを「3Dアノテーション」と呼んでいる。また、製造情報のことを「PMI(ProductManufacturing Information)」と呼び、3 次元モデルに製造情報を定義することを「MBD(ModelBased Definition:モデルベース定義)」と呼んでいる(図1)。
図1 「SOLIDWORKS」でMBDを定義している画面例

図1 「SOLIDWORKS」でMBDを定義している画面例

 3 次元モデルを作成し終わってから寸法や記号などの3Dアノテーションを付加するとなると、2次元図面を作成するときの手間とあまり変わらないが、3 次元モデルを作成している中で付加した情報を表示させたり、必要な箇所だけに追加で情報を与えたりすることで、2 次元図面を作成していたときよりも作業時間を短縮できる。形状のすべての寸法を付加しようとせずに、外形寸法や製造する後工程の人たちが必要な箇所だけに3Dアノテーションを付加するなど、これまでの業務と進め方を変えていくことも必要である。

 3 次元CAD上で付加した3Dアノテーションは、無償のビューワや、「3D PDF」として書き出すことで、Adobe の無償ビューワソフト「AcrobatReader」で誰でも閲覧することができる。

 最近ではMicrosoft の「Word」や「Excel」などのドキュメント上に3 次元データを張り付けて、グリグリと動かしながら形状を確認できる(図2)。ビューワソフトによっては、Excel の部品表と連携させて、部品名のセルをクリックするとその部品を3 次元表示したり、組立てや分解の動きと連動して構造を確認できたりといった使い方ができる。
図2 左:「eDrawings」で3 次元図面を確認している例/右:「Excel」に3 次元モデルを挿入している例

図2 左:「eDrawings」で3 次元図面を確認している例/右:「Excel」に3 次元モデルを挿入している例

 3 次元データは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)での閲覧も可能である。ただ閲覧するだけではなく、距離の測定や物の移動の動きの確認なども可能であり、現実世界に近い体験の中で検証を行うことができる。

 検証や閲覧するだけでなく、3 次元CADで作成した3 次元モデルを活用し、CAMで加工プログラムを作成し切削加工を行ったり、組立検討や指示書を作成しタブレットで閲覧するようにしたり、検査などの生産現場の自動化につなげていくことが3次元データを活用することで可能となる。

 部品加工を外部に依頼する場合も、3 次元データで見積もり・発注ができるプラットフォームサービスがあり、見積依頼の図面や書類作成が不要でペーパーレスで行える。図面作成の工数削減、発注スピードの迅速化、製品開発期間の短縮へとつながる。

 自社で行っている2次元図面での業務を一度、3次元データを活用した真のペーパーレスなモノづくりに変えていくことができないか検討してみてほしい。

 3 次元データを社内全体で活用して、モノをつくってからの不具合発覚と、それに伴う手戻り作業を減らし、品質向上、納期短縮、コスト低減に取り組んでいこう。3 次元ツールを使用することで、2 次元図面では難しかったことができるようになり、競争力のある、より良いモノづくりの実現へとつながっていく。
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