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機械設計

2026.01.26

産業機械の振動対策の基礎と防振機器の選定・活用ポイント

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エーエス 矢口 大輔、鈴木 洋一

防振対策の取組み

 本来は機械の設置場所が地上階(1階)で、周囲との床盤から縁を切った独立基礎で、直接地盤の硬質層に設置することが最良である。しかしながら、生産ラインの連続性や占有場所での都合で設置候補地が独立基礎ではない在来床上であったり、建物の中間階であったりすることで独立基礎にできないことは致し方ないことである。この場合、建物構造体の固有振動数が機械振動の周波数に近しい値を示すと、それ自体の振動までもが励起され周辺に伝達したり、下階には音響振動(固体伝搬音)として伝わり生活空間としては使用できなくなったりすることも事例として少なくない。

1.留意事項

(1)居住性
 人間へ与える不快感、健康被害。
(2)公害条例
 地域で定められる敷地外への騒音・振動伝搬の程度。
(3)近隣嫌振機器の生産性
 生産維持にかかる微振動環境への悪影響。

2.防振材の検討、選定

(1)機械振動
 回転体の種類、回転数S(rpm)を明らかにし、加振力Fを式(3)で求める。中型のプレスであると生産量に応じたストローク数やフライホイールの回転数、モータだと電源周波数の0.5 倍~整数倍を見積もる。
 ただし、m:回転体の全質量(kg)、e:偏心距離(m)、ω:角速度(rad/s、=2πfe)、fe:固有振動数=S/60(Hz)。

 軸周りの質量要素が複数ある場合は式(4)のように考えるとよい(図11)。
 mi:個々の質量(kg)、ri:回転軸から各質量中心までの距離(m)。
図11  回転体の加振力算定モデル

図11  回転体の加振力算定モデル

(2)防振指標、しきい値について
 居住性評価要領:「建築物の振動に関する居住性能評価基準(日本建築学会)」を参照する。 公害評価要領:各都道府県により敷地境界線での振動レベルの規制値が決められているので参照する(おおむね昼間60 dB、夜間55 dB など。地域HPで調べられる)。

 求めた機械振動が各種しきい値を満足するかの検討としては、設置予定場所や構造的に同様の場所で振動計測のうえ、固有周波数やイナータンスより応答予測計算を行うのが手順であるが、専門的な領域であるので専門業者に依頼することをお勧めする。

(3)防振材の選定目安
 機械振動周波数fe (Hz)に対し、防振材の各固有振動数をfn(Hz)とする場合、以下の選定となることが多い。

 ・建物の1階 fn<fe /2
 ・建物の中間階で構造体大梁上 fn<fe /3
 ・建物の中間階で構造体小梁上 fn<fe /5

 なお、fnについては図12に示す防振材におおむね該当する。機械振動などの定常振動に対しては、適用する防振材の固有振動数が低いほど振動伝達率が小さくなる。
図12 各種防振部材の共振周波数

図12 各種防振部材の共振周波数

(4)ダンパの要否
 コイルばねとは必ず併用すること。空気ばね選定の場合は、プレスなどの大きな加振力がある場合に必須となる。防振ゴム選定の場合は、材料内部の減衰性もあり、また応答振幅も小さいことからダンパを併用することはまれである。

3.忘れてはいけない地震対策

 図12でわかるように、すべての防振材の共振周波数は大体の地震の周波数帯に属し共振は逃れられない。実際は、図13のモデル図のように耐震ストッパを設置することで、強制的に変位抑制や転倒防止策とする設計が一般的である。注意が必要な点として、変位抑制はいわば“急ブレーキ”であり、大きな加速度と衝撃を伴うため、対象機械によっては機能が衝撃破壊することがある(図14)。事業継続性を問われる場合、その復旧の仕方についても設計段階に十分に考慮されるべきである。
図13 耐震ストッパの適用イメージ

図13 耐震ストッパの適用イメージ

図14 地震に共振破損した空調機用防振架台

図14 地震に共振破損した空調機用防振架台

 本稿冒頭の免震と制震を組み合わせたハイブリッド防振システムもこれからの産業機器のあり方である(図15)。
図15  大地震に備えた防振材と免・制震材との併用イメージ

図15  大地震に備えた防振材と免・制震材との併用イメージ

おわりに

 機械設計において、最初から振動が厄介化するとはなかなか気づきにくいものである。機械および振動特性に合わせた防振部材から最適選定を行わず、振動対策を講じないことで、自身のシステム、プラント内部での振動問題にとどまらず、ほかからのクレームが起きては、本来の機械性能の制限を余儀なくされるだけではなく、大きな社会問題になる場合もあるので注意されたい。

 特に、1995年の阪神淡路大震災以降は地震の活動期に入り、昨今政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震は30 年以内の発生確率が80%程度と公表している中、機械設計者各位におかれては、防振対策が地震に共振するものとしてその対策を初期の設計に取り組まれるよう切に願う。
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