icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

機械設計 連載「防水製品の開発・設計の基礎とポイント」

2024.11.11

第1回 防水設計を始める前に必要な、IP規格の理解と防水設計の目的

  • facebook
  • twitter
  • LINE

アイテックソリューション 北村 信之

きたむら のぶゆき:技術統括部課長。アイテックソリューションは技術者派遣、受託設計、試作部品作製などの事業を展開している。受託設計では「防水コンサルティング」を強みとする。大手企業からベンチャー企業までさまざまな企業を対象に、開発中の製品の3 次元データや試作機からの課題の抽出、防水・防塵の設計アドバイス、防水評価試験、入水経路の特定、不具合対策検討など、防水製品の開発支援を行っている。
https://aitec-solution.co.jp/

はじめに

 この連載では工業製品の防水設計についての話をさせていただく。防水設計と聞くと少しハードルが高いと感じる方も多いのではないかと思うが、防水設計は昔からあるもので、身近なものでは水筒のキャップ部やランチボックスの蓋、子供が遊ぶ水鉄砲の構造などに防水設計が施されている。意識してみるだけで身の回りに防水製品は多数存在しており、日常生活を通じて身近に目にしているのではないだろうか。工業製品の分野であれば、近年発売されているさまざまな製品には防水性能が付与されていることがスタンダードになりつつあり、「IPX5」、「IP56」、「IPX7」、「IPX8」など、防水性能について記載されている製品を多く見かけるようになった。

 また防水製品が増えてきたことに伴い、付与される防水性能も年々レベルの高いものになってきている。十数年前であれば携帯電話でも防水性能が付与されているものは少なく、防水性能のある携帯電話ということが特異性を持っていたが、今では多くのスマートフォンはIPX7 以上の機能を保証しており、もはや携帯電話を水に落として壊すことはまれになり、ガラケーと同じくほとんど過去の話になっていると感じる。また近年は、腕時計型やグラス型などさまざまなウェアラブル製品が開発・販売されているが、日常生活において常時使用し、身に着けていることにストレスを感じさせないことが求められるウェアラブル製品は、小さな筐体に高いレベルの防水性能を付与したものも多い。

 筆者は現在、生活家電やウェアラブル製品の筐体・機構の設計を生業にしているが、ここ数年で防水製品の設計に関する問合せが増加してきていることからも市場ニーズの高まりを感じている。そのような背景から、筆者の持ち得る知識程度でも、これから防水製品を開発するという方にとって少しでもお役に立つことがあればと思い本連載をお受けした。自身が設計する製品はほとんどが両の掌に収まる程度のサイズであることから、樹脂筐体でできているような小型な製品に対する防水設計の考え方になってしまうと思うが、あらかじめご了承いただきたい。また、防水設計は昔からさまざまな製品で活用されており、歴史も長いことから、業界や製品ジャンルによっても考え方の違いがあると思われるため、内容はあくまで一例であることもご承知おき願いたい。

防水規格・等級について

 防水設計は開発メーカーによってさまざまな手法・考え方があり、防水に関する規格も複数あることから、まずは防水規格についての理解を深めていただこうと思う。先述している「IPX5」、「IP56」などと表記されているものは「IP規格(International Protection)」というIEC(国際電気標準会議)によって定められた規格であり、JIS(日本産業規格)でも採用されている防水規格である。

 IP 規格(JIS C 0920/電気機械器具の外郭による保護等級)は“IP コード”と呼ばれる“IP”と“2桁の数字”で表記される。この表記は、1 桁目が“第一特性数字”として0~6の数字または“X”で示され“外固形物”に対する保護等級(防塵性)を表し、2 桁目は“第二特性数字”として0~8 の数字または“X”で示され“防水”に対する保護等級を表す。なお、“X”は適応外ということを示している。例えば「IPX5」という表記では防塵は“X”となり適応外、防水は“5”なので5等級を保護しており、「IP56」という表記であれば防塵は5等級、防水は6 等級を保護していることを示す。防水の各等級における保護の内容は表1 に記載する。なお、本連載は防水に関するものではあるが、IP規格を理解するために参考として防塵等級についても表2で確認していただきたい。
表1 第二特性数字で示される水に対する保護等級(JIS C 0920 から抜粋)

表1 第二特性数字で示される水に対する保護等級(JIS C 0920 から抜粋)

表2 第一特性数字で示される外来固形物に対する保護等級(JIS C 0920 から抜粋)

表2 第一特性数字で示される外来固形物に対する保護等級(JIS C 0920 から抜粋)

14 件
〈 1 / 2 〉