佐藤 太洋
Taiyo Sato
1998年7月29日生まれ(26歳)
静岡市駿河区 出身
仕上課
趣味は中学から続けるバレーボール。毎週水曜日に社会人のチームで汗を流す。前職で建設業界向けの解析ソフトウェア開発。自らの手でモノをつくるおもしろさに気がつき金型業界へ転職。
濵田 凱斗
Kaito Hamada
2000年8月13日生まれ(24歳)
静岡市駿河区 出身
設計統括課
趣味はドライブ。愛車はSUBARU・インプレッサ。最近行った場所は大黒パーキングエリア。ほかのドライバーの愛車を見るのも楽しみ。高校時代の部活は卓球部で今も当時の仲間と楽しむ。
大鐘 智実
Tomomi Ogane
1993年11月11日生まれ(31歳)
静岡市焼津市 出身
本社機械課
好きな音楽のジャンルはヘヴィメタル。電子工作でエフェクターを製作したことも思い出。また、特技の動画撮影や編集技術を活かし、社内の日常の様子や技術を紹介する動画を制作。採用活動用の資料として活用されている。
左から、佐藤 太洋さん、濵田 凱斗さん、大鐘 智実さん
自動車ボディのデザインを先進的に演出するために欠かせないキーコンポーネントであるヘッドランプやフォグランプなどの自動車照明機器。その各構成部品は複雑形状で外観品質として求められることは多岐にわたり、金型もまた多くのことを求められる。佐藤精工㈱は自動車照明機器を構成する部品の射出成形金型の専業として知見を蓄積してきた。魅力的なデザインで高機能化が進む自動車照明機器を支える高品質な金型づくりの中心には、自ら考えて行動し、リーダーシップを発揮している3 人の技術者・技能者がいる。
機能とデザインに関わる重要な要素
自動車照明機器の構成部品を生みだす射出成形金型メーカーとして50 年近く、製品知識や金型づくりに関する知見を蓄えてきた佐藤精工。生産性に優れ、高品質な金型を製造するために欠かせない正確な知識を保有する技術者と確かな技能を保有する技能者を育成し、世界的に評価が高い日本の自動車照明機器メーカーのモノづくりを支えている。高精度な金型製作に必要な高機能工作機械の導入に加え、それらの機能を活かす高付加価値な精密加工技術の確立に取り組んできた。また、技術者・技能者が金型製作の全体最適を志向できるように、適性を考慮しながら、金型設計・機械加工・仕上げ/ 組立てのさまざまな部門を経験する機会をつくる計画的な人材育成を実施する。常に先を見据えた技術開発と人づくりを続けてきた。そんな佐藤精工の金型製作現場で、若い技術者と技能者が責任感と目標をもって日々、研鑽している。
違う視点を学び取り入れる
金型ユーザーである自動車照明機器メーカーから支給された製品図をもとにデザインレビュー(DR)を行い、金型構造や部品形状を検討し、金型図面を作成する設計統括課で、著しい成長を見せている濵田凱斗さん。入社6 年目を迎え、これまでの経験が自身の中で結び付き始め、手応えを感じている。
幼少時から自動車に興味があった。金型の存在を知ったのはプラモデルづくりがきっかけ。「同じ品質の、同じ形状を大量につくる方法として、『金型』の存在があることを学びました」と濵田さんは振り返る。身近な体験からモノづくりについて興味をもち、その要素技術の意味に気がついた。
「初めて自分が設計に携わった金型で成形された照明機器を搭載した車を街中で見たときはうれしかったし、達成感を感じることができました。金型づくりに携わるということは量産される前の新機種に関わっていることなので、そのことも誇らしい」と濵田さんは金型づくりのやりがいを明かす。落ち着いた表情の中に、自分が好きな自動車を、金型設計という専門性で支えている自信と喜びをのぞかせる。
年々付加価値が高まる自動車照明機器の源泉である金型は、成形品の形状や寸法といった外観に関わることだけでなく、成形サイクルやメンテナンスといった生産性、歩留まり改善やエネルギー使用量の低減といった環境負荷低減に関することなど、要求事項が増えている。
「射出成形金型の生産性と関連する要素の一つは成形サイクルの短縮です。効果的に金型を冷却するためには、金型部品の分割や水管の形状、位置を最適にする必要があります。保有する設備の実力や仕上げ/ 組立工程のことを考えた金型設計の最適解を常に考えています」と濵田さんは説明する。
そのために意識的に取り組んでいるのは、ほかの設計者の意見を聞き、より最適な方法や改良につながる着眼点を取り入れること。
「ある程度のことは自分で完結できるようになったと感じ始めた頃、『こうすればもっと良くなったね』と指摘を受けたことがありました。自分とは違う視点を知ることができれば、もっと良い設計ができると前向きに捉えました。今は自分の中で方向性が見えて、自信があることでも、上司や先輩はどう見えているか意見を求めるようにしています」(濵田さん)。自分とは違う視点を学ぶことで、より多角的に検討し、最適な発案ができる金型設計者を目指す。
CAM の立上げ経験で加工に関する知見を深めて成長
大鐘智実さんは加工用データの作成と機械加工前の段取り・条件選定、マシニングセンタ作業を担当する。加工に関する一連の業務をこなす現場の中心としての役割を担う。知識と技能の両面で社内の信頼が厚い。自らの仕事を滞りなくこなし、周囲への助言やサポートも行う。
順調にキャリアを積んできた大鐘さん。機械加工に関する知見を深め、仕事をまとめきる能力を身につけるきっかけになったこととして、新規CAMの導入と運用の仕組みを構築する経験が役立ったことを振り返る。入社3 年目に携わったことである。佐藤精工では、若手に重要な仕事を任せて成長を促す企業風土がある。
「高機能CAM のため、さまざまな機能が搭載されているのですが、それをどのように活用すれば、当社の工作機械が効果的に機能し、高精度な加工結果が得られるか。試行錯誤することで、わかったことがいろいろありました」(大鐘さん)。
自動車照明機器を構成する部品の形状は、年々複雑になり、外観品質も従来以上の表面品質が求められる。「それらを成形する金型はもっと厳格な表面精度が必要になります。高機能なCAM が生成する工具軌跡だからといって、工作機械の加工精度を引き出せるとは限らない。当社の工作機械の能力を発揮できるようにするために、その能力や加工時の傾向などを理解したうえで、加工データを作成し、機械にとって最適な工具軌跡をつくらなければいけません。細かい各機能を組み合わせて、当社の工作機械が効果的に機能し、従来よりも良い表面品質の金型部品を製作できたり、加工時間を短縮する運用方法がわかってきました」と大鐘さんは振り返る。
また、このとき学んだ知見がさらに高難度の加工を担当したときにも役立った。
「リフレクタ形状を加工したときが印象に残っています。使用した工具はφ0.6。深く切り込めば折れてしまいます。浅い切込みでゆっくり削りすぎるとコストが合わない。工具が折れず、適切な時間で加工するための加工条件を選定するとき、導入したCAM の詳細な独自機能とその意味、効果的な使用方法を理解していたことが手がかりになりました」と大鐘さんは直面した技術的な課題に対して、これまでの経験で学んだことを活用して解決。さらに自信を深めることにつながった。こうした経験や知見を後進に伝えるために、文章など、記録を残すようにもしている。自分のことだけではなく、現場、会社全体が効率的で最適に機能するように自らができることを考え取り組んでいる。
作業目的や本質を理解する重要性を学ぶ
設計と機械加工の工程を経た金型部品を組み立て、適切に金型が稼働するように調整を行う部門である仕上課には、原理・原則の理解に努めながらじっくりと金型づくりに向き合う若手技能者がいる。佐藤太洋さんは自らの手でモノをつくりあげる仕事に興味と憧れをもち、異業種から金型業界で自らの能力を高めることを決めた。金型部品や電気系統のユニットを組み合わせて金型に仕上げる組立てと調整作業、機械加工で詰め切れなかった部分の形状を磨いて整え、仕上げるといった設計や機械加工とも違った知見が求められる工程で自らも磨く。
入社して1 年経っていないが、設計、加工と多くの仲間が携わってきた工程をまとめ上げることの重みを理解し、緊張感をもって金型を仕上げる。佐藤さんが大事にしていることは作業の目的や本質を理解して仕事をすること。
「金型の組立て作業をしていた際、塗るべきグリスの選択を間違えそうになりました。そのまま作業をしていたら、成形時にグリスが漏れ出し、トラブル対応に追われることになります。指摘があったので気がつき、事なきを得ましたが多くの人に迷惑をかけてしまうかもしれない出来事でした」(佐藤さん)。
「指示されていたことを何も考えずに行うただの作業者になってしまっていたため」と佐藤さんは原因を振り返り反省した。この出来事以降、作業や手順のもつ意味、安全や効率の良い作業のために原理・原則を意識して取り組むようになった。上司である渡辺範善取締役製造部部長は「まだ入社して1 年経っていないので、基本を大事にしながら仕事をしてほしいと思っています。課題や意識するべきところに自ら気がついてくれたことは頼もしい」と期待する。
佐藤精工の金型づくりをさらなる高みへ導く
これからの佐藤精工をけん引する人材の濵田さんと大鐘さん、佐藤さん。濵田さんは最近、仕上げ工程を考えた設計を強く意識している。金型には似た形状の構成部品が多くあり、組立て・仕上げ工程の作業者は誤って取り付けてしまうことがある。そこで、似た形状の部品は金型構造に問題ない部分を、機械加工担当者の負担をかけない範囲で形状に差異をもたせる工夫を施している。組立てと仕上げを担う佐藤さんは「自分が入社したときから金型部品の組付作業では大きな間違いがなく、作業がしやすい。その背景に濵田さんの思いやりや手間があるので、自分もその期待に応えられるようにしたい」と仲間へ感謝し、成長を誓う。
濵田さんの上司の平岡亮二取締役設計統括課課長は「落ち着いて仕事ができるようになり、周囲や他工程のことを考えるようになっていることにも成長を感じます」と評価する。濵田さんは「もっと仕事を任せてもらえるように力をつけたい」と目標を明かす。
大鐘さんの上司でもある渡辺部長は、大鐘さんに対して「知識や技能が備わって充実しているので、若手だけでなく、年長者とも臆せずコミュニケーションをとって、知識・技能・リーダーシップをもった技術・技能者になってほしい」と期待を込める。大鐘さんも「自分に求められている役割は認識しているので、意識してこれからの仕事に取り組みたい」と落ち着きながら次の成長への意欲を示す。
それぞれの立場で自発的に自分の課題や目標を見つけ、取り組む技術者と技能者が佐藤精工の金型づくりをさらなる高みへ導き、未来を明るく照らす。