機械設計 連載「防水製品の開発・設計の基礎とポイント」
2024.12.02
第2回 等級に応じた防水設計と防水設計における注意点
アイテックソリューション 北村 信之
防水設計時の注意点
ここまでは、対応する防水等級によって設計手法が変わるという内容についての説明をしてきたが、ここからは防水製品の設計をしていく際に見落としがちな内容について少し説明したい。防水製品の設計経験がある方には不要な内容になるが、これから初めて防水製品の設計に挑戦される方には覚えておいていただければ少しはお役に立てるのではないかと思う。
1.内圧調整用孔の必要性
近年発売されているウェアラブル製品やスマートフォンなど小型の製品には、LTEや4Kカメラなど、発熱量が高いデバイスを搭載している製品が多く、基板やデバイスなどの内蔵部品がかなり高温になるものがある。IPX7 やIPX8 のように水没試験に耐えることができるように、製品の内部を完全に密閉する防水設計を施した製品であり、かつ押込み方式の操作ボタンを有する場合には特に注意が必要となる。
本件は小型の製品に限る話ではあるが、完全に密閉された製品内部の部品が発熱し高温になることで、製品内の空気温度が上昇し、温度上昇に伴い内圧が高くなる。非防水製品のように製品の内外が遮断されていなければ、内部空気の温度が高くなったとしても空気は製品外部に逃げることができるため、内圧が上がることはなく問題がないが、内外を遮断した場合、押込方式の操作ボタンはユーザーがボタンを押し込もうとしても、内圧によってボタンが押し戻されるためボタン操作が効かないという現象が発生する。
そのため、完全密閉の防水設計をする場合には内圧を調整するための孔を設け、孔には「気体は通るが液体は通さないシート材」を用いて封止するという設計にする(図6)。孔のサイズはφ1.0 mm程度でも十分効果がある。また、手のひらよりも大きな製品であれば内容積が大きいため、ボタンが押し込めないほど内圧が上がることはないが、商品の空輸や赤道付近を通る船による海運時の環境変化によって筐体が変形し防水性能を担保できなくなる可能性があるため、完全防水している製品には内圧調整穴を設ける必要がある。
2.外観部品のひけ対策
樹脂筐体の防水製品を設計する際、頭を悩ませることの一つに外観に生じるひけがある。防水製品では、パッキンやシーリング材を収めるための囲い形状や、ボタンなどの防水構造として、厚みのあるリブなどをケースに配置することが多いが、筐体が樹脂ケースの場合、厚いリブを立てると当然外観部にひけが発生することが想定される。
それなりに内部に空間があるような製品であれば、厚肉部は傾斜ピンなどを用いて肉盗みを追加することもできるが、小型製品などの場合、内部はかなり高密度になっており、機能上必要な構造物が多く、傾斜ピンでは可動域が取れずに肉盗みができないことが多々発生する。そのような場合に配慮し、外観面に高品質を求められるような製品では、筐体を3ピース構造にすることを推奨している。
図7 のように防水するためのケース(Part-A/Part-B)のほかに、外観用部品(Cover)を追加することで、肉厚によって発生するひけを配慮する部品は図のPart-Aだけでよくなり、Part-Bは製品となった際にはCover に覆われることになるため、キャビ側の形状を心配することなく肉盗みなどを施せることから樹脂ケースの均肉化を図れる。この手法は配慮すべき部品が減ることで設計の自由度が大幅に上がるが、当然部品点数が増えることによるコストアップは否めないので、品位をとるかコストをとるかのトレードオフが必要となる。
ここまでの連載では規格と設計手法について記述してきたが、最終回となる次回は防水性能の評価方法や量産時の注意などについて触れていきたいと考えている。ぜひ引き続き購読いただき、防水設計への理解を深めていただきたい。