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機械設計 連載「教えてテルえもん!3次元ツール習得への道」

2025.05.20

第12回 設計者CAEを活用した構造解析はじめの一歩

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いわてデジタルエンジニア育成センター 小原 照記

おばら てるき:いわてデジタルエンジニア育成センター長。自動車内装部品の設計会社を退職後、岩手県北上市を活動の拠点に10年以上、3次元デジタル技術関連の人材育成、企業支援に努め、学生から求職者、企業まで幅広く指導し、3次元から始めるDX推進活動を続けている。同センター長のほか、3次元設計能力検定協会の理事も務める。

はじめに

 機械設計を行ううえで、顧客が欲しいものをつくる、組み立てやすいものにするなどのほかに、使用していて壊れないもの、安全なものをつくる必要がある。そこでCAEが役に立つ。CAEとは、Computer Aided Engineeringの頭文字をとったもので、直訳すると、コンピュータによる工学支援のことである。CADなどを用いて仮想的にモデリングしたデジタルデータに製品仕様条件などを加えて、コンピュータ上での数値計算により仮想実験を行うシミュレーション技術である。モノをつくる前に、コンピュータ上でCAEを行うことで、モノをつくってからの失敗による手直しを減らすことができる。安全なものを製品として提供するために、CAEは重要なプロセスである。

 従来、CAEは高度な専門知識と多くの労力が必要であったが、現在は、パソコンの性能も上がり、使い勝手もよく、専任者ではなく設計者がCADと連携して使用できるCAEソフトも多くある。設計者が形状や寸法を決めていく中で、その根拠となるものは、過去の設計の実績、経験からの勘、試作品での実験、公式による手計算であった。CAEを活用することで、さまざまな設計パターンを比較検討しながら設計を行える。早期に設計品質を上げ、コストも安く、市場に早く製品を出すことができる。

 CAEの種類は、構造解析、機構解析、熱伝導解析、流体解析、磁場解析、音響解析、光学解析、樹脂流動解析、プレス解析などさまざまである。今回は、機械設計において重要度が高く、CAEの最も基本となる構造解析について説明する。

構造解析の分類について

 図1 の構造解析とは、構造物に荷重を与え、変形や応力を調べる解析である。構造解析は線形解析と非線形解析に大別される。線形解析は、材料特性が応力とひずみの関係(図2)で線形(比例関係)にある弾性域内で近似でき、かつ変形が微小である場合に用いる解析である。大きく塑性変形してしまうようなものや、線形に近似しにくい材料を用いる場合(材料非線形)や弾性域内でも長尺物などのように変形が大きなもの(幾何学的非線形)のような場合などは、非線形解析を実施する。
図1 構造解析の分類

図1 構造解析の分類

図2 応力―ひずみ線図

図2 応力―ひずみ線図

 さらに構造解析では、与える荷重が静的荷重と動的荷重とに分類される。静的荷重は、荷重が時間の経過によって変化しないことである。荷重が一定を保つことを想定して行う解析を静解析という。逆に動解析は、荷重が時間で変化する場合に実施するもので、代表的なものとして、固有値解析や周波数応答解析などがある。CAEソフトで解析を行う場合には、これらを選択し実行する。

 今回は構造解析を始めるうえで基本となる「線形解析」と「静解析」を組み合わせた「線形静解析」を例として詳しく説明する。また、解析専任者が使用するハイエンドなCAEソフトではなく、3次元CADに組み込まれている設計者CAEを例とする。
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