*ふくざき まさひろ:代表。2005 年,千葉工業大学大学院金属工学専攻修了。同年電子機器向けの金属加工メーカーに入社。研究・生産技術部門で材料開発や引抜き加工技術開発に従事。2013 年に建設機械メーカーに転職。研究・生産技術部門で歯車などの機械部品の材料開発,材料分析評価に従事。2017 年に技術士(金属部門)取得。2019 年4 月に福﨑技術士事務所を開業。
URL:
https://www.fukuzaki-gijutsushi.com/
腐食とは,金属が水や塩化物イオンなどが存在する環境において溶出したり,腐食生成物などを生成したりすることと表現できる。例えば鉄の場合,屋外に放置すると表面がいわゆる赤錆で覆われる。この赤錆は一種の腐食生成物である。ほかに腐食による反応として,板厚が減少したり,部分的な溶出が起きたりすることがある。腐食は材料や環境などによって形態がさまざまに変化する。
腐食反応は金属原子や水分子,酸素分子などのイオンや電子が関係する電気化学的反応である。多くの金属原子は電子の軌道を考えた場合,最外殻に数個の電子がある(価電子)。これら価電子の数は1 から3 個程度のことが多い。電子軌道は最外殻の電子が8 個の状態が最も安定する。そのため,1 から3 個程度の電子であればそれを放出した方が電子軌道の観点からは安定する。これを式(1),(2)のように表現する1)。
ナトリウムの場合,電子を1 個放出する。このときは元素記号に「+」だけを表記し,1 は省略する。鉄は2 個の電子を放出するので元素記号の上側に「2+」と表記する。この数字が放出した電子の数を表す。そしてこの数字を酸化数や価数などと呼ぶ。
また,原子の中には価電子の数が多く,電子を取り入れた方がよい原子もある。それは式(3),(4)のように表現する1)。
塩素や酸素は電子を取り入れてマイナスイオンとなる。プラスイオンと同様に元素の上の数字は取り入れた電子の数を表す。
なお,金属イオンと酸素イオンはプラスとマイナスのため電気的に引き合い,結合する。これが金属酸化物であり,イオン結合である。同様に金属イオンと塩素イオンも結合して金属塩化物を生成する。
腐食反応では酸化還元反応を扱う。酸化還元反応は単に金属と酸素が反応するだけではなく,電子の授受によって金属がイオン化することも酸化還元反応と呼ぶ。電子を放出して,鉄イオンのようにプラスイオンになることは酸化反応である。そして電子を受け取り,酸素イオンのようにマイナスイオンになることは還元反応である。
腐食の分野において,酸化反応をアノード反応,還元反応をカソード反応と表現することが多い。実際の腐食反応でのカソード反応は金属の還元反応ではなく,金属表面で水や酸素が反応して水酸化物イオンを生成するような反応がメインになる。これらを式(5)~(7)のように表現する1)。式(7)のFe(OH)2 が腐食生成物となる。その様子を図1 に示す。腐食反応では,このように電子やイオンが反応するので電流が流れる。この腐食で発生する電流を腐食電流と呼ぶ。そしてこのときの電気回路を腐食電池と呼ぶ。