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機械設計 連載「B to B向け機械設計のポイント」

2026.08.04

最終回 リーダーの役割 チーム運営で大切なこと

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技術力向上カウンセリングオフィス 布施 裕児

ふせ ゆうじ:代表 1989 年4 月、旭硝子(現・AGC)入社、パソコン用ハードディスク向けガラス基板の加工技術開発、営業などに従事した後、液晶用のガラスを扱う事業部に異動となり、液晶用ガラスの梱包容器/梱包材料の設計開発を17 年以上担当。途中、1 年半ほど知財部兼務となり、特許戦略構築、出願推進活動も経験。2023 年4 月、同社を早期退職。現在は中小企業の技術支援や組織改革支援、セミナー講師として活動中。(一社)製造業総合支援 副代表。資格:上級心理カウンセラー[(一社)日本能力開発推進協会]。

はじめに 

 リーダーに求められる重要な役割である「チーム運営」について、私見を交えながらまとめて最終回としたい。 

 チーム運営では、規則やルールといった「システム(組織構造)」が適切に整備されていることが前提となる。しかし、システムが機能するためには、マネジメントが機能し、そのためにはコミュニケーションが機能し、さらにその土台として信頼関係が構築されている必要がある。そのイメージを図1 に示す。つまり、信頼関係構築→コミュニケーション→マネジメント→システムというピラミッドが相互に連動して初めてチームはうまく機能する。また、システムを適切に機能させることで、マネジメントやコミュニケーションが取りやすくなり、信頼関係も構築しやすくなるといった面もある。つまり、すべてが複雑に連動しているのである。
図1 チーム運営のピラミッド

図1 チーム運営のピラミッド

メンバーの動機づけと自律性 

 メンバーの動機づけには、以下の職務特性が重要とされる1)。

 ①スキル多様性(多様なスキルや能力が必要か)
 ②タスク一体性(職務の全体像が明らかか)
 ③タスク重要性(職務がいかに重要か)
 ④自律性(どの程度の自由、独立性、権限があるか) 
 ⑤フィードバック(進􁸿に対して明確な事実や評価が得られるか) 

 批判はあるものの、特に重要なのは④自律性と⑤フィードバックであり、次式で示されるとされている1)。 
 [MPS(Motivation Potential Score)]1)
 MPS= (スキル多様性+タスク一体性+タスク重要性)/3×自律性×フィードバック 

 この式は、リーダーは進捗に対して的確にフィードバックすること、本人の自律性を尊重することが従業員の動機づけには非常に重要であることを示している1)

メンバーの責任と権限を明確にし、自律性を高める 

 心理的安全性で有名になったGoogleの「効果的なチームとは何か?」の調査結果2)によると、「チームの役割、計画、目標が明確になっていること」が3 番目に挙げられている。さらに付け加えれば、チームの役割は会社のミッション、経営理念とリンクしており、そこからメンバーの役割、求められる能力、計画、目標にまで落とし込むことが必要である。 

 その際、役職の有無にかかわらず、役割とそれを遂行するための能力に応じた責任と権限を確認することがシステムを構築するうえで大切な背骨となる。権限とは「任務(責任)を遂行するために与えられた業務上行うことができる範囲」と定義すれば、本来「権限のない人」はいない。しかし、リーダーが一方的に責任と権限を決めても機能しない。メンバーの仕事への思いや考えを受け止め、共有できる範囲を探ることが必要であり、そのためには「傾聴」が欠かせない。そのイメージを図2 に示す。
図2 システム構築(メンバーの責任と権限)

図2 システム構築(メンバーの責任と権限)

すべての土台である信頼関係構築に必要な「傾聴」 

 上述した責任と権限や自律性を有効に機能させるためにも、相手の思いや考えを理解しようとする聴き方「傾聴」が大切である。人間は誰でも所属欲求がある。安心できる居場所が欲しいのである。よくわからない人、自分のことを理解しようとしてくれない人は安心できない、信用できないとなる。そのイメージを図3に示す。
図3 傾聴による信頼関係の構築

図3 傾聴による信頼関係の構築

傾聴には、カール・ロジャーズが提唱した「受容」、「共感」、「自己一致」が重要とされる。多くの指南書や解説記事があるのでそちらを参照いただきたいが、筆者が常日頃感じていることを紹介する。

1.受容について

 受容は無条件の肯定的配慮と言われる。あるがままの相手を無条件に受け入れるということである。自分の価値観をいったん横に置いておいて、相手の話を聴くことが大切であるとも言われている。しかし、言うのは簡単だが、価値観は物ではないので、脇に置いておくと言われてもどうしてよいのかわからない。結局、「相手は他人、私がどうこう言う問題ではない」と思うことが大切である。会社の上司、部下の関係はしょせん、職場での関係である。相手は相手の考えがあって今まで生きてきたのである。「私が否定すべきことではない」。そう考えることで、受け入れることはできないが、受け止めることはできるようになると感じている。 

 実際の仕事においては無条件の肯定的配慮はあり得ない。議論は必要である。しかし、議論の前に、自分の考えと相手の考えの相違点を明確にするためにも傾聴は大切であり、受容、共感、自己一致は大切である(連載第7回参照)。

2.共感について 

 「相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の歩んできた過去を振り返って、相手の立場になって考えることが大切」とよく言われる。しかし、それでも共感できないことはたくさんある。共感できなかったら、どうしてそう思うのか素直に聴いていき、何とか共感できるところはないかと探りながら話を聴くことが大切になる。相手の考え、思いに関心を持ち、「理解しよう!」といった思いを持つことが大切であるということである。

3.自己一致について 

 「自分が思っている自分(自己概念)」と「実際、現実の自分」とを一致させるのが自己一致と言われる。傾聴にとって、わかりやすく言えば、自分が思っていること(自己概念)と、言っていること(現実の自分)が違ってはいけないということである。

4.受容、共感、自己一致は難しい 

 受容、共感、自己一致はそもそも心理カウンセラーのプロとしての必要な態度であり、素人であるわれわれができなくて当たり前なのである。 

 野球で言えば、「自分の価値観を置いといて」とは、「肩の開きが早い、球をよく見て」、あるいは「相手の立場に立って考えて」とは、「腰の回転で撃て」と言われているようなものだと筆者は思っている。コツはわかったとしてバッターボックスに立ったからといって打てるわけではない。肩の開きがとか、腰の回転で…と思いながら素振りをして、実際にいろいろなピッチャーと対戦しながらだんだんと打てるようになるのではないだろうか? 

 つまり、受容、共感、自己一致、と自分に言い聞かせ、相手の思い、考えを知りたいと思いながら人の話を聴く回数を増やしていくしかない。傾聴のテクニックがいろいろ紹介されているが、自分で実際にやってみるとうまくできないことがよくわかる。筆者ができないだけでテクニック自体を否定するものではないが、結局、回数を重ね、自分なりのコツをつかんでいくしかないと感じている。

マネジメントにおけるフィードバック 

 マネジメントにおけるフィードバックについて、筆者が考えるポイントを図4 に示す。フィードバックでもやはり傾聴が大切である。
図4 マネジメントにおけるフィードバックのポイント

図4 マネジメントにおけるフィードバックのポイント

1 .個人の役割、目標、計画がフィードバックの基本になる 

 基準があいまいであれば共通認識は得られない。役割、目標、計画は初めにしっかり合意しておき、フィードバックを通して修正していく。

2.十人十色 

 「褒めて伸ばせ」、「褒めるよりも勇気づけ」などとも言われるが、実際にはマイナスの指摘の方がやる気が出る人も一定数いる。促進焦点型3)は利益獲得を重視し、ポジティブな評価結果でモチベーションが上がるのに対し、防止焦点型3)は失敗を避ける、安全を重視するタイプであり、否定的なフィードバックの方が、モチベーションが上がるのである。 

 防衛的悲観主義3)と呼ばれる特徴を持つ人たちも存在する。物事を悪い方向に考えることで最悪の状態を想定し、それに対して準備を進めることで成功する人たちである。過去の自分のパフォーマンス、能力は非常に肯定的に捉えているのが特徴である。非常に自己肯定感の強い人で、悲観的な未来を想像することでモチべーションが上がり、高いパフォーマンスを発揮する。

3.初心者に対するフィードバック 

 人はできるようになるからやる気になる4)と言われており、小さな目標をたくさんつくって、良い点、成長している点をできるだけすぐにたくさんフィードバックするのが効果的と言われている4)。特に、初心者や、自分を肯定的に捉えられず自信が持てないで悩んでいるようなメンバーには上記の対応は必要だと感じる。

4 .淡々と事実をフィードバックすることの大切さ 

 しかし、ある程度仕事ができるようになると、そのようなフィードバックは特に自己肯定感の強いメンバーにはうっとうしく感じられることもあろう。また、経験上、「相手に合うフィードバックを」と考えると、どうしてよいかわからなくなる。フィードバックの際に「何かフォローしなければ」と考えると余計なことを言ってしまい、うまくいかない。フィードバックはマイナスの情報も含めて事実を淡々とできるだけ具体的に伝え、相互に事実確認を行えばよいと筆者は考えている。 

 事実確認の次はメンバーの振り返り(自己評価)である。この際は傾聴の態度で共感点を探しながら聴いていく。そのうえで、未来の解決策を話す。「どうして」、「なぜ」と原因を追及する前に、役割や目標に対してどのように解決していくのかと未来の話をしていけばよい。解決策を考えていく中で自然に原因を議論していくことになる。初めに「なぜ」を詰める必要はない。

まとめ

・ チーム運営では、システム、マネジメント、コミュニケーション、信頼関係構築のピラミッドを有効に機能させることが大切になる。
・ そのために土台となるのは「傾聴」、メンバーの思いを受け止めることである。
・ チームの役割、目標、計画を立てる際に、メンバーの責任と権限も明確にし、自律性を尊重する。
・ 傾聴には「受容、共感、自己一致が大切である」と意識しながら、傾聴する機会を増やし、経験を増やすことで身につけていく。
・ 人は十人十色で必ずしもプラスのフィードバックばかりでなく、マイナスのフィードバックの方がやる気が出る人もいる。
・ しかし、自分を肯定的に捉えられず、自信が持てないで悩んでいるようなメンバーには、積極的に肯定的なフィードバックを多くすることが必要である。
・ 一方、仕事がある程度できるようになれば、事実を淡々とフィードバックし、傾聴を通して解決に向けたコミュニケーションを行うことが大切になる。
参考文献
1 )大阪工業会議所編集:メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト Ⅰ種 マスターコース 第5版、中央経済社(2021)、pp.369-370
2 )Google re:Work-ガイド「効果的なチームとは何か?」を知るhttps://rework.withgoogle.com/intl/jp/guides/understandingteam-effectiveness/#help-teams-determine-their-needs(参照2026-03-28)
3 )外山美樹:「実力発揮メソッド、パフォーマンスの心理学」、講談社(2020)、pp.138-152
4 )岩崎一郎:科学的に幸せになれる脳磨き、サンマーク出版(2020)、pp.140-143

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