インド最大級の金型製造技術展「Die & Mould India International Exhibition」では今回、はじめて、「ジャパン・パビリオン」が開設され、日本企業11社と日本金型工業会会員企業が参加するなど、中堅・中小企業の積極的な姿勢が見られた。また、日刊工業新聞社も同展に合わせて初めて、日本の高精度な製造ノウハウを現地向けに英語で紹介する冊子「The Japanese Manufacturing Playbook」を発行。インドの産業界が日本の潜在的なパートナーを知る上で役立つ情報を発信すべく、取り組んだ。(日刊工業新聞社 コンテンツ企画部 篠瀬祥子)
インド市場への足掛かり築く 日本金型工業会、現地の熱意を体感
ジャパン・パビリオンの11社のうち、日本金型工業会からは今回、6社が参加した。帰国後のアンケートでは、当初の出展目的を「達成した」と「非常に達成した」が8割を超え、インド市場の手応えをつかんだ参加者が多い。
「展示会内外で、発展していく国のパワーをヒシヒシと感じた」「ブース訪問者は本気度が高く、日本の20年前のJIMTOFの空気感を感じた」「インドでの市場調査は初めてだったがまずまずの成果を挙げた。活気ある成長市場にどのように入り込めるかのヒントを得た」「インド人の方々の熱意が非常に高く、技術に対してリスペクトを感じた。我々も遅れることなくコンタクトを取り続ける、アクションをかけ続けることが必要」など、インド製造業関係者とのやりとりに、刺激を受けた声が多かった。
一方で、「インド英語が理解できないと厳しい」「良きパートナー、信頼できるパートナーの発掘が鍵」「現地サポート拠点の必要性とともに社内リソースの不足を感じた」「現地の低価格化市場に対応できるかわからない」など、具体的な課題も浮き上がった。
「イチ企業が立ち向かうには厳しい感じもするので、インドと日本の両金型工業会が密に連絡取って関係を築いてほしい」「インド政府からのBIS規制の最新情報がほしい」「パビリオン全体で共通通訳を雇うなど考えてみたい」「韓国勢が統一ブランドで押し出していたが、日本ももう少しまとまった演出がほしい」など、次の展開や次回の出展へ向けた具体的な声があがっている。
初出展した平岡工業(広島市安佐南区)の平岡良介社長は手探りで、会場の中で手書きの説明を作るところをそのままデモンストレーションするなどして、訪ねてくるインド企業とのやりとりに挑んだ。「日本の高レベルな金型技術が求められていることと、大きなマーケットがあることは見極められた。2年後ではなく、今、出展できたことが良かった」と振り返りつつ、「今後はより具体的な商談に踏み込んでいく」と確かな手応えを感じたようだ。
ジャパン・パビリオンで出展されていた主な出展製品(順不同)
現地の動画メディアから取材を受ける日本金型工業会の山中雅仁会長(ヤマナカゴーキン社長)
日刊工業新聞社 現地製造業向け冊子を発行
日刊工業新聞社は初めて、インド向けの英語冊子(フリーペーパー)の制作と会場配布に挑戦した。当社の出版局が中心となり、雑誌「工場管理」などで数々取り上げてきた日本のモノづくりノウハウと日本企業の技術を発信している。これまで、中国やタイ、インドネシアで制作・配布してきたノウハウを元に制作した。
今回の紹介コンテンツは、
・日本の金型技術は世界で一番
・現場リーダーのスキル向上
・安全を確保するための服装
・工場マネジメントノウハウを学ぶ
といった、どちらかというとベーシックな「ハウツー」ものが盛り込まれた。
当社メンバーで開幕前日、搬入手伝いのため会場へ向かった。すでに前日午後だというのに、まだほとんどのブースがおぼろげな輪郭しか見えておらず、会場内は土埃が舞う中、遅れていた冊子の到着を待った。今回、印刷はデリーで行っており、ムンバイの会場に運んでもらうことになっていた。
ようやく到着したのが夕方。配送を担っていたインドの方々が必死に運んでくれて、協力を頼んでいたブースに設置でき、ホッとした。その時点ではまだ、周辺はブースが完成していないところがほとんどという状況だった。翌朝にはしっかり展示会の雰囲気を漂わせてギリギリで間に合わせていたのは、日本ではなかなか考えられないが、インドの展示会はこのようなことも多いという。
会場で無料配布された「The Japanese Manufacturing Playbook」
記者は取材をしながら、冊子の紹介をし、空き時間にはなるべくブースに立って、冊子の紹介をしがてら来場者に配布した。
来場者がピークを迎えた3日目には慣れてきて、いろいろなコミュニケーションをしながら、少しはうまく配れるようになってきた。来場者には、現地に本拠地を持つ、マヒンドラ、タタなど自動車関連の関係者やその下請け関係者がとにかく多いこともわかってきた。
若いエンジニア、老練な管理職など、熱心にいろいろと質問をしてくれる人もいる。「今のインド製造業には日本のような優れたパートナーが必要だ」「日本のKAIZENを取り入れたいが、どうしたら良いのか」「日本企業と取引したいので、当社のブースを取材してほしい」と伝えてくる人など、熱心なコメントを多く頂いた。
日本金型工業会メンバーの皆さんもおっしゃっていたが、「インドの方々はジャパン・クオリティーを認識し、精密な技術を持つ日本そのものに興味を持っている人が多い」というのが、率直な実感だ。
「YASDAのマシンを見にきた」「FANUCのブースの場所を教えてほしい」といった具体的な企業名を出しながら質問をしてくる人も多く、すでに日系のビジネスが浸透していることもブースに立っていると実感してきた。
なお、同冊子の内容はオンラインでも公開している。
https://in.asia-manufactures.com/
日刊工業新聞社としても、インド市場へのリーチは課題としており、試行錯誤をしているが、今後年間を通じて、同サイトではインド関連の記事をアップしていく計画だ。会場で交わした一つひとつの会話からは、日本の製造業に対する期待の大きさが伝わってきた。インド市場との接点づくりは、まさにこれからが本格化していく段階にあると言える。