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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2025.06.24

CBN・ダイヤ工具のパイオニアとして難削材加工の需要にハイレベルで応える―住友電工ハードメタル

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住友電工ハードメタル㈱ 常務取締役
久木野 暁氏

Interviewer
上智大学 理工学部 教授
田中秀岳氏

金型・航空分野の高品位加工で注目

そうすると今後御社が注力したいところは、やはり高精度微細加工の分野となるのでしょうか。

おっしゃる通りです。金型などの微細加工に加えて、当社のバインダレスCBN 工具は、航空機部品に用いられるニッケル基合金や医療用CoCr 合金などの難削材の高能率、高精度ミーリング加工などにも適しています。その点で、従来主力としてきた自動車関連に加えて、新規の分野ということで航空関連のニーズもますます高まっています。
航空機もいろいろと部品が変わってきていて、新たな難削材加工ニーズが増加しています。例えばタービンブレードは、従来ディスクロータに溝加工を行って、別に加工したブレードをはめ込んで固定するという工法が主流だったのですが、現在はディスクとブレードを一体化した「ブリスク」という1 つの部品として1枚のインコネル鍛造材から削り出してつくる工法の取組みが盛んです。接合がないので薄く軽量化できて、信頼性も非常に高い。エンジンの高出力化に伴って、材料がチタンからインコネルのようなニッケル基合金にシフトしてきていますが、ニッケル基合金は重いので「軽くて信頼性も高い部品にしたい」ということで、欧米の企業がブリスクをどうやって加工するかということに一生懸命取り組んでいます。
これを切削で行う場合、従来は超硬合金のボールエンドミルしか工具の選択肢がありませんでした。ただ、超硬合金のボールエンドミルでインコネルを削ると50 m/min 前後が切削速度の上限で、加工に数日かかるうえに、70~80 翼あるタービンブレードを仕上げるには100 本以上の工具を消費するケースがありました。
それに対して刃型を工夫したバインダレスCBN 工具を仕上げ加工に適用すると、従来比10 倍の切削速度で5 倍以上の工具寿命も視界に入ってきます。また、熱伝導率や高温硬度に優れることから刃先がダレにくく、加工変異層も抑制されるという研究成果が海外航空機コンソーシアムなどから報告されており、ますます注目されています。

航空分野で高まっている需要をうまく取り込んで製品を展開されているのですね。

同じ航空分野で言えば、鉄系ではないCMC(セラミック基複合材料)やCFRP(炭素繊維複合材料)もありますし、半導体分野などでもセラミック系の難削材加工ニーズも数多くあります。そういうものに対しては、各種PCD 工具に加えて、バインダレスPCD 工具で新しい分野を開拓しようとしています。

では、最後に読者に向けてメッセージをいただければと思います。

CBN やPCD は古い工具材料で、バインダレスCBN・PCD 工具も開発されてから数十年の歴史を有しますが、その高硬度ゆえの難加工性から、なかなか量産製品として世に出てきませんでした。当社では超々高圧焼結技術や刃先加工などに関する量産プロセスの研究開発を継続し、バインダレスCBN を新しい工具材料として生まれ変わらせることができました。
そうして生まれた当社の工具はまさに金型や航空機用ニッケル基部品など難削材加工において、高精度、高品位、かつ高能率で高い信頼性を備えた、新工法開発に対するポテンシャルの高い工具だと確信しています。今回、小径エンドミルのラインナップ拡充を行いましたので、特に金型加工に携わる皆さまにはいち早く提供して金型加工のあり方を変えていきたいと思っています。

本日はありがとうございました。
久木野 暁(くきの さとる)
1994 年 東京工業大学 材料科学修士課程 修了
同 年 住友電気工業㈱ 入社
2009 年  住友電工ハードメタル㈱ ダイヤ技術開発部 超高圧材料
グループ長
2010 年  住友電気工業㈱ エレクトロニクス・材料研究所 アドバン
ストマテリアル研究部 アドバンストツーリンググループ長
2019 年 住友電工ハードメタル㈱ 取締役 ダイヤ・CBN 開発部長
2023 年 同社 常務取締役 ダイヤ・CBN 開発部長
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