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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2024.12.26

企業間の「競争」と「共創」を重んじ金型業界を稼げる・魅力ある業界へ

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㈱ヤマナカゴーキン 代表取締役社長/
日本金型工業会 会長
山中雅仁氏

Interviewer
埼玉大学 大学院 理工学研究科 教授
金子順一氏

 2024年6 月に日本金型工業会の会長交代が発表され、精密冷間鍛造金型などを得意とするヤマナカゴーキン(大阪府東大阪市)の山中雅仁社長が新たな会長に就任した。自動車のEV 化に代表される国内製造業の大きな変化や少子高齢化に伴う人材不足などさまざまな課題が待ち構える中、日本の金型産業を持続的に成長させていくために必要なことなどについて話を聞いた。

金子

山中社長は家業として会社のお仕事をされていると思うのですが入社の経緯についてお教えください。

山中

日本大学を卒業後に同社へ入社し、1989 年から米国のオハイオ州立大学内にある研究所へ5 年ほど通いました。鍛造など塑性加工の研究を行っている研究所で、客員研究員として行きました。そこで修士号をとり、帰国後の1994 年に当社へ戻りました。
当時の研究所には業界で非常に有名なタイラン・アルタン教授という方がいて、日本からも大学の先生が多く訪れていました。その関係でいろいろな方と知り合い、帰国後の人脈形成にもつながりました。日本塑性加工学会では今年まで副会長をやらせてもらっていましたが、それも当時からの人脈のおかげ。米国での4 年間は私自身のビジネスの原点ですね。

金子

入社後の約30 年間で一番印象に残った製品やプロジェクトとしては、どのようなものがありますか。

山中

現在当社ではCAE ソフトの「DEFORM」を展開しています。もともとは東京大学出身の小林史郎先生がFEM(有限要素法)を塑性加工に適用したのが前身で、その後の改良によって鍛造における金型の応力などを見られる「ALPID」というソフトが米国でつくられました。これを米国だけでなく世界に売っていこうと商品化したのがDEFORM で、その商品化を手がけたのがオハイオ州立大学の先輩です。大学では私もそのソフトを使っていたので、当社でこれを導入して日本でも展開することをやってきました。これが最初のチャレンジだったと思います。
実は当時、CAE ソフトを自作する計画もありました。でも結局、高価だけれどもDEFORM を使うことがベストだと考え直しました。というのも、指導教官のアルタン教授の言葉を思い出したからです。「米国の有名大学の学生ではないのだから(笑)、世の中にある最良のものを使って課題解決のためのサービスを提供することが君の仕事だ」と。米国時代にお世話になった韓国人の博士に入社してもらい、社内でそれなりに使えるようになり、縁があって当社が販売をするようになりました。
鍛造は経験と勘が重視される職人の世界。最初は社内で「こんなソフトを入れて使いものになるのか」という反発がありましたが、導入して結果が出始めると「これはいいね、使えるよね」と皆さんの気持ちがどんどん変わっていった。そこにたどり着くまでは結構大変だったのですが、「良いものであれば人は受け入れてくれる」という体験はおもしろかったです。

金子

DEFORM には私も興味があります。研究室で私が行っている切削では薄物も扱うのですが、削るとそってしまう。それが圧延の残留応力によるのか切削でそるのか、見極めをしなければ精度が上がらない。いくつかのCAE ソフトで挑戦したものの、あまりうまくいっていなかったのですが、DEFORM で切削の残留応力を解析できるという話を聞いて、大学で導入を検討したいと考えていたところでした。

山中

鍛造などの塑性加工がメインのCAE ではあるのですが、切削も含めていろいろできるソフトです。ただ、切削などの部分はあまりうまくアピールできていなくて、金子先生にそんなふうに気づいてもらえたのはありがたいです。
同社の精密鍛造金型には60 年以上の経験とノウハウが詰まっている(写真提供:ヤマナカゴーキン)

同社の精密鍛造金型には60 年以上の経験とノウハウが詰まっている(写真提供:ヤマナカゴーキン)

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