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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2024.11.25

企業間の「競争」と「共創」を重んじ金型業界を稼げる・魅力ある業界へ

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㈱ヤマナカゴーキン 代表取締役社長/
日本金型工業会 会長
山中雅仁氏

Interviewer
埼玉大学 大学院 理工学研究科 教授
金子順一氏

次世代が金型づくりのおもしろさに触れる機会を

金子

日本の金型業界では人材不足が大きな問題になっていて、中でも業界で数が少なくなっている若い人を呼び込むことが非常に重要になっています。こうした人材獲得についての日本金型工業会の取組みなどについてお聞かせください。

山中

工業会では毎年「学生金型グランプリ」を主催しています。大学などで金型製作を学ぶ学生たちが与えられた共通のテーマに基づいて自分たちで金型をつくり、その出来映えなどを競うイベントです。今年で16 回目の開催となりました。若い方々が実際に金型の設計や製作を経験して金型づくりのおもしろさに触れられるほか、場合によっては企業と一緒に取り組むこともあって、そうした機会や接点を提供できる催しになっていると考えています。
また、2023 年の暮れに大阪科学技術館(大阪市西区)の中に、主に小学生向けに金型をアピールするためのブースを設置しました。板チョコの模型とそれを成形する様子を示した金型を展示して実際に触れるようにしたり、工業会が作成した金型に親しんでもらうためのオリジナルアニメを流したりするようなブースです。当然ながら小学生は今すぐ金型業界に入ってくるわけではないですが、施設には毎年何万人も小学生が訪れるそうで、結構立派なブースをつくって未来に向けてアピールしています。
大阪科学技術館の子供向け金型展示ブース(写真提供:ヤマナカゴーキン)

大阪科学技術館の子供向け金型展示ブース(写真提供:ヤマナカゴーキン)

金子

私は学部生向けに2 つ授業をもっていまして、1 つは切削の機械加工。もう1 つは量産技術の話で、こちらの授業のほとんどで金型を使います。プレス加工も射出成形も鍛造も鋳造も基本的に数量をつくるものは金型の形を押し付ける。それなのに、授業の最初に「金型を知っているか?」と学生に聞くと「知らない」と言われます。
それで、授業では「金型がないと現代の安い製品の大量生産はできない。皆さんも金型のおかげで豊かな生活ができていることを感じてください」と学生に話しています。工学部の機械科の学生でさえそんな状況で、彼らに金型の重要性を切々と説いているというのがここ5 年ぐらいの私の仕事です。

山中

そうした授業の中で金型の魅力が学生の皆さんの一部の方にでも伝わって、「自分がチャレンジしてみよう」と考えてくれる人が出てきてくれればとてもうれしいですね。

金型業界に若い人が少ないという話の一方で、これからは女性へのアピールもしていくべきかとも思います。昔は、機械加工は危険で重労働だから男性にしかやらせられないという考えもありましたが、今はNC 化やシミュレーションがあって男女関係なく働けるようになったと思います。日本金型工業会では女性に対するアプローチはされているのでしょうか。

山中

工業会の分科会の一つとして「かながた小町」というグループをつくりました。メンバーは全員金型メーカーで働く女性で、会長も女性の経営者です。金型業界で働く女性の活躍をアピールすることで業界の外にいる女性の皆さんに向けて仕事の魅力を発信するとともに、すでに業界で働いている女性がもっと働きやすくなるための環境改善などを推進することを目的とした分科会です。
女性に焦点を当てた勉強会や工場見学などを実施していて、皆さん元気に活動しています。男性とは異なる感覚があるところが興味深くて、違う視点で物事を見ているなというのがわれわれも勉強になります。金型業界はやはりまだまだ女性の少ない業界ではありますが、金型に興味をもってチャレンジしたいという女性が活躍できるよう、働きやすい環境を整えて支えていきたいと思います。
かながた小町の活動の様子(写真提供:ヤマナカゴーキン)

かながた小町の活動の様子(写真提供:ヤマナカゴーキン)

日本のモノづくりの素晴らしさ

金子

最後に、現在中国や韓国で金型の勢いが増している状況があると思いますが、日本の金型メーカーが外国と競争していくうえでカギとなる、重要視すべきことがありましたらお聞かせください。

山中

日本の金型メーカーはていねいにつくり込みができて、図面に描かれている部分は当然ながら、そこに描かれていないところまで工夫やノウハウを注ぎ込んでつくり込んでいくことができる。そこが日本のモノづくりの素晴らしさだと思います。そうした強みを活かしながら、繰り返しになりますが業界を横断したデータ活用など、競争一辺倒だけではないともにつくり上げる共創を行っていくことで、世界から一歩も二歩もリードした金型メーカーとして成長していけると思います。
当社ではこの1 年ほどでインドからの受注が増えてきたのですが、彼らはロングタームでモノづくりを考えているところがあるのです。そうすると、金型でも価格ではなく寿命を良くする、つまり良いモノをつくり上げていくという想いを共有して製作に取り組んでいくことができます。日本もこっちが安いからこっちへ行くというのではなくて、ロングタームで一緒になってつくり込んでいこうということが大事なのではと思っています。

金子

金型自体のパフォーマンスで見たときに最終的に顧客のメリットになるものをつくっていくのは重要なことですよね。本日はありがとうございました。
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