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型技術 連載「巻頭インタビュー」

2024.11.25

企業間の「競争」と「共創」を重んじ金型業界を稼げる・魅力ある業界へ

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㈱ヤマナカゴーキン 代表取締役社長/
日本金型工業会 会長
山中雅仁氏

Interviewer
埼玉大学 大学院 理工学研究科 教授
金子順一氏

日本金型工業会の新会長に就任

金子

今年6 月に6 年ぶりに日本金型工業会の会長交代が発表され、山中社長が新会長に就任されました。新会長としての抱負や意気込みをお聞かせください。

山中

これまで日本金型工業会では副会長などを務めてきて、長い期間にわたって工業会のさまざまな活動に関わってきました。ただ、会長としては新任なので会員企業の皆さんと相談しながらやっていかなければならないと考えています。
金型業界は7 割ほどの企業が自動車業界と関係性が深いというデータがあって、今後EV 化が進んで既存のエンジン車の仕事が減ってくるということになると金型業界は大きな影響を受ける。だから、今の時代は逆風が吹いていると感じています。金型を手がけている企業は小規模なところが多くて、後を継ぐ方もなかなかいないという中で、金型業界の企業数が減ってきているという現実もあります。
そうした状況の中で、「日本の金型産業を持続的に成長させていく」というのが、私に求められている最も大きなミッションです。金型業界を「稼げる業界、ワクワク楽しそうな魅力が感じられる業界」というものにしていきたいと思っています。

金子

「金型産業の持続的な成長」というお話に関連して、日本金型工業会では2020 年の「金型産業ビジョン」で、今後の日本の金型産業各社が生き残っていくにはどんな価値を高めることが必要かについて取りまとめをしています。非常に参考になるのですが、EV 化の行方や原油高、中国の景気の低迷、円安などで当時と環境も大きく変わってきています。その中で、日本の金型産業ではどういった技術などに注視していくのが重要だとお考えになりますか。

山中

さまざまな変化の中で日本の金型産業が生き残っていくうえで一つのカギとなるのが、すり合わせの技術。特に取引先と一緒になってモノをつくり上げていくことをもっとやっていかなければいけない。そこが日本のモノづくりの真髄だからです。良いモノをつくっていく中では発注元の顧客と金型メーカーとが協調できるところがあって、そこの価値や思想を一緒につくり上げていくことが改めて大事だと思います。今はどちらかと言うと価格競争になっていて、「あちらよりこちらが安いから発注しよう」という現状もありますが、決してそういうものではないはずです。
後はデータの活用ですね。業界全体として金型の製作に関するさまざまなデータを集積させたビッグデータをつくり上げて、それらをAI などを使って分析してモノづくりに活かしていくということも考えていかなければなりません。そのためには金型業界内での協調も必要になります。もちろん互いに競い合う「競争」も間違いなくあって、業界の発展のためにもそれはそれで大事なことではありますが、一方でともにつくり出す「共創」も不可欠だと考えています。

日本独自のビッグデータをもち、モノづくりに活かす

金子

データ活用のお話で言うと、型技術者会議の発表を見ていると、御社を始めとする先進的な企業がIoT やデータの「見える化」などをどのように金型産業に取り入れていくかという部分で、いろいろなチャレンジをされていますね。

山中

当社は圧電式荷重センサや計測システムをやっていて、それらを活用したモニタリングソリューションも提供しています。冷間鍛造では特に芯合わせが大事で、偏荷重で芯がずれているかどうかなどがこのモニタリングソリューションで見えるので、金型の寿命が相当に延びたりします。また昨今の人材不足という社会的な課題の解決のために、無人化して不良品を出さない生産システムを開発するということもやっています。
こうしたシステムはやはりデータが重要で、1社だけでとれるデータの量はたかが知れているので、今まで競争していたところと一緒になって共創して、日本独自のビッグデータをしっかりもって、それをモノづくりに活かしていくというふうにすると、日本のモノづくりの立ち位置が変わってくると思います。
一方で、こうした取組みは日本金型工業会だけでできるわけではないと考えています。型技術協会や大学・産総研などの研究機関とも一緒になって、協調できる部分を探していければと思っています。ただ、大学や産総研といったところはわれわれ金型メーカーからすると、やはりなかなか気軽に相談できない。企業と大学で互いの時間軸が異なるところもあって、こうしたところにいかに折り合いをつけて、今後一緒にモノづくりをしていくのかというところがチャレンジングなところかもしれないですね。

金子

大学は1 年単位で設定したテーマをまとめていくというリズムですが、企業では来月までにひと通りめどを付けたいといった感じですよね。企業の場合は解決したい課題が明確ですが、大学は研究の中で進んでいく方向を調べていく形になる。そうした時間軸の違いがうまくまとまれば私も良いなと思います。
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