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工場管理 連載「リーダーに捧ぐZ世代の新人育成バイブル」

2025.06.05

第13回 教育は、やりっぱなしにしない~振り返りの重要性~

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ジェムコ日本経営 古谷賢一

ふるたに けんいち:本部長コンサルタント、MBA。経営管理、人材育成から、品質改善支援、ものづくり革新支援など幅広い分野に従事し、地に足がついた活動をモットーに現場に密着。きめ細かい実践指導は国内外の顧客から高い評価を得ている。“工場力強化の達人”とも呼ばれている。おもな著書は『まんがでわかるサプライチェーン 知っておくべき調達・生産・販売の流れ』(日刊工業新聞社)。
https://www.jemco.co.jp
 この連載12 回を通して、「Z 世代」の新入社員に対する教育はどうするべきか解説してきた。すでに読者諸氏においては、連載に沿って実践に活用している方も多いだろう。

 今回から、「Z 世代」の人材育成の総仕上げとして、新入社員への教育結果の振り返りについて解説をする。教育は「やりっぱなし」ではいけない。新入社員への教育がすみ、うまく作業に従事することができるようになれば「結果オーライ」で終わりにしてはいけないのだ。本稿では、新入社員への教育のやりっぱなしを防ぎ、教育の質を向上させるために、必ず実施してほしい「今年度の教育活動の振り返り」について解説をする。教育は常に試行錯誤が伴うものだ。改善すべき点は次年度に反映させ、良かった点は教育の仕組みへと落とし込み、現場での教育訓練をレベルアップさせることを狙いたい。

教育には認識のギャップが存在する

 「Z 世代」の新入社員に対する教育では、教える側の視点ではなく、教えてもらう側の視点に立つことが重要であると解説してきた。教育は「教える側は知っているが、教えてもらう側はまったく知らない」という条件で行われる。知っている人が、知らない人の立場に立って教えなくてはならないために、「教えたつもりが、(教えてもらう側は)まだ理解していなかった」といった認識のギャップが生じる可能性がある。このギャップの可能性を教える側が認識しなければ、「教えたつもり(自己満足)」になってしまう(図1)。
図1 教える側と教えてもらう側のギャップ

図1 教える側と教えてもらう側のギャップ

 かつては、この認識のギャップを埋める努力は、教えられる側に求められていた。ベテランの先輩社員から手取り足取り教えてもらわなくても、新入社員が自らの理解不足に気づき、疑問に思うことがあれば、自ら積極的に調べることが求められた。それができない新入社員は「やる気がない」と酷評された。

 このような考え方にも共感できる面はあるが、今の「Z 世代」の若者たちには通用しないと考えるべきだ。教育した内容が確実に伝わったのかを検証すること、新入社員の理解をより深めるために何を改善するべきかを考えなくてはならないのは、教える側なのだ。

教育のPDCA 推進は必須

 新入社員に対して教育活動を行ったならば、その1 年間の内容を振り返り、今後(次年度)の教育活動に何を反映させればよいのかを考える必要がある。つまり教育活動のPDCA 推進だ。

 教育活動におけるPDCA とは次のとおりだ。P(Plan)は新入社員に対して、どのような内容を、どのような計画で、教育するのかを考えること。D(Do)は教育に活用するための適切な作業標準書の作成、実際の教育の実施、そして教育内容の実践、つまり実際の作業に従事させること。そして次のC(Check)は、実際に教育を実施した結果、準備をした作業標準書の内容が不十分だった点や、教育のやり方に改善すべき点などがなかったかを検証して、次年度に実施する教育に対して、どのような形で改善を反映させるかを考えることだ。なおA(Action)は、改善内容の実施だ。

 作成をした作業標準書を、中身の是非を検証することなく、そのまま使い続けると、不適切な内容がそのまま放置されるだけでなく、新たに加わった作業上の注意点や作業の変更点が反映されず、実際の作業とは大きく乖離をしてしまう。このような作業標準書は誰も重要視しなくなる。

教育の結果を振り返る

 新入社員に対して活用をした作業標準書は、その内容が良かったのか悪かったのか、一定の期間を経て振り返り(内容の検証)をするべきだ。教える側のベテラン先輩社員たちで読み合わせをしてみるだけでなく、実際に作業標準書を使って教育を受けた新入社員の意見を聞くことも有効だ。ただし、新入社員が先輩社員のつくった作業標準書の欠点を「モノ申す」ことは躊躇しがちだ。

 意見を聞く場面では、なるべく堅苦しい雰囲気を避けて、たとえばある先輩社員が、“サクラ”(あらかじめ仕込まれた発言者)になって「〇〇の写真は、ちょっとわかりにくかった」といった意見を出して、新入社員に発言を促す呼び水を与えるといった工夫も考えるとよい。そういった場で、作業標準書の表現がわかりにくい個所、写真を別なものに変えた方がよい個所などを、洗い出すのだ。作業標準書が有効に活用されていれば、そういった意見はたくさん出るはずだ(図2)。
図2 教育の内容を必ず振り返る

図2 教育の内容を必ず振り返る

 また、適切な作業標準書を作成していたとしても、教え方に改善が必要な場合もある。たとえば、○○不良のサンプルがなくて困った、〇〇の事例を使うと理解が早まった、といったように、良かったこと改善すべきことを洗い出し、作業標準書や教育方法へ反映させるのだ。

 このように、教育を実践しながら、作業標準書の改善、教え方の改善を繰り返すことで、教育の質を高め、新入社員をより効率的に育成することを狙ってほしい。

次回までの振り返り

 教育訓練を「やりっぱなし」にしないために、新入社員への教育を実践した後、作業標準書に改善すべき点がなかったか、教え方に改善すべき点はなかったか振り返りを実施して欲しい。そして振り返りによって洗い出された、改善すべき点は適切に改善策を講じて作業標準書(教育手順などの仕組み化も含めて)に展開をすると同時に、良かった点も同様に関係者全員に対して展開を進めることに取り組もう。
今月の検討課題
・新入社員への教育が完了したならば、その教育内容が適切だったか否かを、必ず振り返る。
・改善すべき点、良かった点を明確にして、作業標準書や教育方法を適切に改善する。

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