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プレス技術 連載「EV化を再検証する」

2026.07.23

最終回 EV化の総括とプレス部品メーカーへの提言

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裾野産業アドバイザー 前川 佳徳

2026年からの自動車の動向予測

 BEV が2026 年以降どうなるかを次に示す。これからの自動車開発の取組みとしては、図3 に示すように、「BEV を推し進める」、「合成燃料車や水素エンジン車にチャレンジする」、「エコICEV やHEV に回帰する」などの選択肢がある。国や地域によってニーズは異なり、自動車メーカーはどの国・地域に、どの動力源を適用するのかを選択し、開発に取り組まなければならない。

図3 2026 年以降の自動車開発の選択肢

図3 2026 年以降の自動車開発の選択肢

 トヨタ自動車といえども「マルチパスウェイ(脱炭素のために多様な動力源の車を提供する戦略)」のどれかは止めるか、グループで棲み分けして共同開発することになると考えている。そのような選択の結果、世界の新車販売予測(筆者の個人的見解)を示したのが表2 である。本連載第3 回(2025 年12 月号) から提示しており、表2 の2050 年の予測は極端としても、2035 年の予測は妥当だと思っている。
表2  2035 年、2050 年の世界の新車販売予測(筆者の個人的見解による)

表2  2035 年、2050 年の世界の新車販売予測(筆者の個人的見解による)

自動車は贅沢品か、実用品か、不用品か?

 本連載第3 回では、T 型フォード(ガソリンエンジン車)は、自動車を「富裕層の玩具」から「庶民の道具」に変え、電気自動車を駆逐したと紹介した。三品和広著『通史で読み解く自動車の未来 大局を見渡し、戦略を導く』(東洋経済新報社、2025 年8 月13 日発売)によると、大衆車の売れ筋価格は歴史的に150 万円だった。それがいまや普通車は350 万円、軽自動車でも150 万円となり、若い人は買いたくても買えない。自動車は「富裕層の玩具」に逆戻りしていると指摘する。極論として、車は「電動化」より「不用化」すべきと述べるが、さすがに不用品にはできないと筆者は思う。

 また三品氏は、現行EV も含め自動車が65kg程度の人間を運ぶのにその25 倍以上も重い自動車を動かしているのは狂気の沙汰であり、劇的な軽量化を図るべきと指摘する。この見解には筆者も同意し、これからの自動車に求められているのは「軽量化」、「小型化」であり、無駄な機能が付かない「低価格化」で脱炭素に貢献すべきと考える。

 筆者が日本の自動車メーカーに期待するのは以下に列挙することである。
 ① 富裕層への車は欧米に任せ、日本は小型実用車で世界のニーズに応えてほしい
 ② プレミアムEV は中国に任せ、日本は小型あるいは軽四タイプのBEV でシェアを取り、水素エンジン車や合成燃料車のエンジンの開発で次世代自動車のシェアを狙っていく戦略を進めてほしい
 ③ 次世代自動車は、図3 右端のSDV に向かうと予測している。SDV はBEV に親和性があると言われるが、水素エンジン車でも合成燃料車でも可能である。自動車用ソフトやAI 開発には日本人が向いていることも確認しておきたい

プレス部品メーカーへの提言

 これからの車部品製造に要求されるのは軽量化・小型化と設計から量産までの短期化である。変化が激しい時代には「速さ」が最も重要となる。

 部品の軽量化の決め手は、アルミ化と小型化である。アルミ化で注目されたのは、テスラのギガキャストである。メリットとして量産での工程短縮ができ、擦り合わせなどの熟練技術が不要となる。一方、ギガキャストは初期投資が莫大で、成形品の冷却に時間がかかり、設計の自由度が限られるなどの問題がある。テスラは、モデルY でアルミと鋼板を組み合わせた構造(後部はギガキャスト、前部は鋼板プレス加工)を導入し、鋼板のプレス部品への切り替え(前部)を実施した。衝突時のエネルギー吸収性や修理のしやすさなどの点でギガキャストには問題があった。今、ギガキャストから「鋼板とアルミの最適解」を探る方向へ転換しており、ハイテンなどの成形技術に強いプレス部品メーカーの頑張りどころである。

 また、アルミシートのプレス部品、アルミ鍛造部品のニーズも軽量化対策で増えてくる。また、鋼材の中空軸の冷間鍛造にもニーズがある。これらの分野でのシェア拡大に頑張ってもらいたい。

 モータは日本に向いている開発で、この分野には力を入れたい。モータの需要はBEV に限らずある。モータコア製造の電磁鋼板積層で、接着積層や分割打抜き交互転積など、いずれも金型内での工夫がなされている。金属プレスとは競合になるが、圧粉磁心によるモータコア製造も出てきた。いずれも金型での技術開発が重要であり、シミュレーション活用も重要である。

 素材のランクを下げ、同等の部品性能にする開発、熱処理での改善、部品のリサイクル開発も重要である。日本人が得意なのは、「擦り合わせ」と「カイゼン」である。加えて、「安心・安全」開発も売りにしたい。


 将来予測は当たらない。筆者の「EV 衰退予測」も当たるかどうかわからない。わからないから様子見をしているのではなく、なんらかのことを始めなければならない。始めて、間違っていたと思えばすぐ方針転換する。節操のなさと変わり身の早さが生き残る道である。
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